電子書籍ストア事情と中古市場

掲載日:2014年9月22日

一般読者の立場で言うと、書籍を購入しようとする際に新刊本と中古本と電子書籍の中から選択するケースは少なくない。そういう選択肢が提供されること自体、ネットショッピングの利点である。

■ブックオフで音楽CDを処分してきた

個人的なことで恐縮だが、この数週間で過去に購入した音楽CDとDVDのほとんどをブックオフで買い取りしてもらった。全部で500枚ほどであった。
以前、まとまった量の書籍をブックオフで引き取ってもらったことがあったが、音楽CDやDVDの買い取りは初めてであった。

筆者の場合、7~8年前から音楽CDはすべてMACのiTunesに取り込み、iPhoneやiPodで聴くようになった。
自宅のオーディオや車でもiPhoneを接続して聴いている。つまり、日常生活で音楽CDから音楽を聴くことは、ほぼなくなっていた。そのため、音楽CDを保有し続ける意味もない、と気付いたのである。

自宅近くのブックオフは比較的大規模な店舗で、書籍、コミック、CD、DVDのフロアとブランド品、衣料品の2フロア構成である。買い取りの待ち時間にブラブラしてみると、老若男女、中高生から若者、高齢者まであらゆる世代の方々でたいへん賑わっている。

最近、駅前の老舗書店(個人経営ではなく、支店が数店舗ある比較的大規模な書店)が、いつも閑散としているので、少し気になっていた。出版不況やアマゾンなどの影響か、それとも近くにジュンク堂が出来たためかとも思っていた。
もしかしたら、一番の影響はブックオフだったのかもしれない。ブックオフは、コミックや文庫本の品揃えの面では大型書店と遜色ないと言えるもので、リーズナブルな古本屋に人気が集まるのは当然とも言えるだろう。

著者や出版社の立場から見ると、中古市場は固有の権利を侵害するアンダーグラウンドなものに見えるかもしれない。しかし、言うまでもなく日本人は古書が大好きである。今どきの古書店は、ネット活用でたいへんな隆盛であると言う。読者の立場から言うと、古書や古書市場は日本固有の文化とも言える。

なお、ブックオフは2004年に東証へ上場している。2009年には大日本印刷や講談社、小学館、集英社が資本参加したとして話題になった。現在の店舗数は1000店弱となっている。
この2014年4月にはヤフーとの資本提携が発表され、新たにヤフーが筆頭株主となった。リユース商品販売におけるネット販売と実店舗の提携を目指しているようである。

■快適な新刊・中古本と電子書籍のストア

先般、インプレス社から2013年の国内の電子書籍市場(電子雑誌を含む)が1,000億円を超えたと言う発表があった。
電子書籍ストアは、2012年から2013年にかけて、サービスが本格化したところが多い。売り上げ等に関する公式な発表はほとんどないが、アマゾンの電子書籍ストアが際立っていると推測されている。

誰もが認めるようにアマゾンの書籍ストアの完成度は高い。高度な検索機能、信頼性の高いユーザーレヴュー機能、購買意欲をそそられるレコメンド機能などがあり、誰もが直感的に使用できる操作性もある。
また、アマゾンの書籍ストアで特徴的なこととして、新刊本、中古本、電子書籍の有無と価格が明示されており、比較・選択できることだろう。
ついでに言うと音楽CDやDVDも、新品と中古品が併記されている。

筆者の周囲にも、本を読むのは紙の書籍派、電子書籍派、ブックオフ派もいる。個人の嗜好であり、各々にこだわりや理由があるかと思うので、それについてのコメントはない。

筆者自身はアマゾンで書籍を購入することが多いが、価格につられて中古本を選択することも少なくないし、電子本を購入することもある。あまり、こだわりのない混合派である。
むしろ、新刊・中古・電子書籍を簡単に選択できる利便性のために、ますますアマゾンから離れ難くなったのかもしれない。電子書籍だけのストアや新刊本だけのストアには、今さら戻れないと感じている。

(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸)