利益を生み出す印刷工場の姿とは

掲載日:2016年8月23日

JAGATは、今年度「工場マネージャー養成講座」を開講した。印刷工場の運営に携わるリーダーの方々が、自社工場の改善のための研修に参加している。

開講の背景

2015年に特定の企業向けに「工場マネージャー講座」を開催したところ、たいへん好評であった。他社の工場見学、5Sや改善活動の推進方法、リーダーシップ研修、原価管理・生産管理などの研修、および自社工場の改善案を相互に発表し、意見交換するという内容であった。

受講者のレポートによると、「5Sや改善活動の手法だけでなく、浸透させるために何をすべきか」、「他社工場の状況を見て、初めて自社工場のレベルや課題を認識することができた」など、高い評価を受けた。

そこで、2016年度はさらにブラッシュアップを図り、オープンな研修講座として「工場マネージャー養成講座」を開講したのである。

ゴールは自社工場の改善活動の実践

「工場マネージャー養成講座」は、講義と他社の工場見学の他、グループワークによる問題分析や課題抽出、改善策の発表などをおこなうカリキュラムが構成されている。今年度は7月から11月にかけて1ヶ月に1日(工場見学以外は土曜日に)開催し、9社18名の方が受講されている。

実際には、「現場力を高める改善活動の進め方」、数字に強くなるための「決算書の読み方」「印刷会社の収益構造と原価管理」「作業時間の管理と改善」、「機械保全」、「自発的な行動を促すコミュニケーション」、「労働安全衛生」「問題分析手法」「各社の課題抽出と改善策」などの研修がおこなわれる。

本講座の主任講師であるサンエー印刷 常務執行役員の吉川昭二氏は、
「この講座の最大のポイントは、現場の担当者や工場の管理職を外に引き出すこと、他社の担当者と互いの工場の問題点について率直に議論することである」と述べている。

つまり、経営者であれば印刷工業組合主催の工場見学や、メーカー主催の新設備・新工場の見学会に参加することもあるかもしれない。しかし、現場の担当者や工場の管理職にとって、他社の工場を見学する機会はめったになく、他社の担当者と自社の改善策について意見交換する機会もほとんどないだろう、ということだ。

長期の研修講座となるため、懇親会も開催している。打ち解けてくると、各社の悩みなど率直な意見交換もおこなわれていたようである。

また、ゴール設定として、自社工場の改善策を実践することを想定している。そのため、今回の講座は2名参加を必須条件とした。

たとえば、工場長であっても、5S活動のような改善を1人で進めることは困難である。一方的に命令するだけでは長続きもしないし、実践もされない。結局は掛け声倒れになることも多い。

立案者、推進メンバーが2名であれば、改善活動の目的やメリットを浸透させること、継続させること、PDCAのサイクルを回すことが、より円滑におこなえる。
2名で研修することで、自社工場ならではの事情や状況を相談しながら、より実現性の高い改善活動を実施することができるのだ。

今後

今年度の研修講座(途中段階)の受講アンケートを見ると、大多数の受講者から「大いにモチベーションが上がった」「自社工場を客観視することができた」「どうやって改善活動の浸透させるかを理解できた」という意見が寄せられている。

自社工場を客観視し、地道な改善活動を実現すること、生産管理や原価管理、機械保全を緻密に実施することなどの工場のレベルアップが実現できれば、将来的に大きな利益を生み出すことは想像に難くない。今後の受講生の方々の活躍が期待されるところである。

現在は、印刷業にとって決してブルーオーシャンと言える時代ではない。しかし、厳しい時代だからこそ、やるべきことも多いのだ。工場マネージャーの資質によって、印刷工場にはまだまだ成長する可能性が残されていることは疑いない。

(JAGAT CS部 千葉 弘幸)

2016年度 工場マネージャー養成講座