【マスター郡司のキーワード解説2019】カラーコレクション機能(特定色域の選択)

掲載日:2019年5月30日

JAGATの最新刊『みんなの印刷入門』の中で、カラースキャナーのことを説明していて、今回はカラースキャナーの機能(カラーコレクション)について触れてみたい。

JAGAT 専務理事 郡司 秀明

カラーコレクション機能(特定色域の選択)

デジカメ以前のフィルム時代は、カラースキャナーという高価な色分解装置を使用していた。カラースキャナー(写真1)の普及で、日本のカラー印刷が急速に広まり、女性誌『an・an』や『non-no』を生んだとも言える。白黒では、スキャナートやスキャニカという白黒平面スキャナーがフォーカスやフライデーといった写真週刊誌を生んだ。

写真1 SG-701という4色同時分解出来る生産性の高いカラースキャナ。SGはスキャナグラフのこと

写真1だが、向かって右がインプットユニット、左がアウトプットユニットになる。中央のユニットがコントロールユニットだが、色の調整をするマスキング機能等が内蔵されており、好ましい色に調整できるようになっている。現在でも通用する技術として「カラーコレクション」という色をコントロールする機能がある。

写真2 コントロールユニット。飛行機のコックピットと同じで、この時代はツマミのオバケ

写真2がスキャナーのコントロール部で、本体(上のボックスは付属品)二段の上側(下側左にはオシロスコープ)の右端にカラーコレクションツマミが固まっている。上から縦にYMCKの4列、右側にY、M、C、Red、Blue、Green、Brownのコントロール色が並んでいる。YMCK4列×7色なので計28のツマミが並んでいるが、これが大変便利なのだ。

最新版のPhotoshopにも全く同じ機能が付いている。同じどころか、カラースキャナーはオペアンプといって、電子回路でデータをコントロールする。それもCMYKデータ(非理想的データ)なので過度な調整は「引っ張り」や「反転」という悪い現象を起こして調子を破綻してしまい、大胆なコントロールができなかったのだ。ところがPhotoshopでは内部の演算が全てRGBベース(LAB)で、かつ数値演算処理だけなので理想的な色演算が可能で、大胆にエフェクトをかけられる。

オペレーションを説明する。縦YMCKはインキ量のコントロールができるツマミだが、横に並んだY、M、C、R(二次色)、B(二次色)、G(二次色)、Br(三次色)がコントロール色を示している。例えばCツマミ列の中でコントロール色のRを見てほしい。レッド系の色の中に入るシアンの量(シアンinレッド)をコントロールできるのだ。レッド系は肌色なので、C in Rを抜いてやると健康的な肌色が簡単に得られる。空のブルーはY in Bを抜いてやるとキレイな青空になるし、M in Gを抜くとキュウリの鮮度が上がるが、抜きすぎると生っぽい人工的な蝋細工のようになってしまうので注意が必要だ。海のエメラルドグリーンはY in Cが入っていないと出ない色だ。従って水平線をハッキリ出すにはY in Bを抜いて、Y in Cを入れると空と海の差がハッキリする。このように便利に使えるカラーコレクションだが、Photoshopでは「特定色域の選択」(図3)が、カラースキャナーのカラーコレクションとまったく同じ機能・オペレーションになっており、非常に便利なツールになっている。オペレーションはCMYKライク(減算混合の方が人間の感性に近い)で内部演算はRGBなので、昔取った杵柄の方も「天使のように大胆に?!」特定色域の選択機能を使えるはずだ。

図3 「特定色域の選択」のオペレーション画面。大胆に調整できる
図4_必要色・不必要色
図5 レタッチ前後は毎度おなじみTGツールを使うとよく分かる。肉に注目して、C in Rを抜いたものと比較。https://www.jagat.or.jp/cat6/tgtool
図6 色差をビジュアル(3D的に)に表現してみると分かり易い

(JAGAT専務理事 郡司 秀明)
(会報誌『JAGAT info』 2019年3月号より抜粋)