印刷業になぜブランディングが必要なのか?

掲載日:2014年10月28日

情報伝達手段を支援する印刷業にとってブランディングは非常に重要な要素であり、ブランディングを企画提案できる人材育成が必要になるだろう。

■ 製品・サービス力だけでは差別化が困難

近年、長引くデフレ経済に加え、価格競争力のある新興国の台頭により業種を問わず、価格競争が激化している。また、製品・サービスの多様化により消費者に対しても飽和状態が続き、製品・サービス力だけでなく、それをどう訴求していくかが、差別化を打ち出すポイントとなっている。
また、さまざまなメディアを活用しつつ、自社の製品・サービスを選定したターゲットに対して、いかに効果的に訴求していくかが大きな課題となっている。

■ 印刷業がクライアントをブランディング

こうした課題に対して、印刷業は印刷メディアにとどまらないコミュニケーション支援を行うことが求められている。そのソリューションの1つとして「ブランディング」がある。

ブランディングとは、企業が顧客にとって価値のあるブランドを構築するための活動である。ではブランドとは何であろうか。アメリカ・マーケティング協会の定義によれば、ブランドとは「ある売り手あるいは売り手の集団の製品およびサービスを識別し、競合他社の製品およびサービスと差別化することを意図とした名称、言葉、サイン、シンボル、あるいはその組み合わせ」とある。

つまり、企業の製品・サービスが他社のものより優れているポイント、あるいは訴求していきたいポイントを、消費者に対して”感じて欲しいイメージ”を的確に情報伝達する。そして製品・サービスが飽和状態の市場の中で、消費者がニーズ喚起を生じた時に、いかに自社の製品・サービスを想起してもらえるかがブランドの役割である。

立派なブランド戦略を構築しても、それを印刷メディア等で表現することができなければ効果は限定される。ブランド×デザインの歯車がうまくかみ合うことで、販促物の効果を最大化するだけでなく、クライアントの製品・サービスの価値の向上にも寄与できる。

クライアントの製品・サービスのブランドコンセプト(どのターゲットに、どう思われたいか等)を確立する。それを表現するための、ロゴ・キャッチコピー・キャラクター・デザイン・配色・フォント・紙質等を検討し、紙あるいは電子メディア等を提案する、というのが手順の一例である。

このようなソリューションサービスの提供が印刷業にとって大きな強みになるのは間違いなく、クライアントのブランディングを企画提案できる人材育成が重要となる。

■ブランディング支援にどう収益を得る?
 
情報メディアの制作に強みがある印刷業は、ブランド・アイデンティティの策定から、ブランド要素の考案、情報メディアのデザイン・制作までをワンストップで提案できれば、大きなキャッシュポイントを見出すことができるだろう。
旅館のブランディングを実施したある企業では、旅館のブランド・アイデンティティを策定した上で、それを訴求するためにブランド要素を設計し、訴求ツールとしてショッピングバッグ、パンフレット、館内案内、観光案内、ホームページ、雑誌広告等の多数の印刷物の創注に成功している。

(JAGAT 日本印刷技術協会 CS部 塚本直樹)

■関連研修
ブランド価値をつくり表現するデザイン習得講座 2014年11月19日(水)-20日(木)