UV厚盛印刷にみるデジタル印刷とシルクスクリーン印刷の境界線

掲載日:2018年8月28日

※プリンティングコーディネータが考えるデジタルとアナログ

デジタル印刷技術の開発が進む中、デジタル印刷とアナログ印刷の使い分けが課題になることがある。従来のオフセット印刷領域分野に限らず、グラビアやスクリーン印刷の版式でも同じことである。ポイントは、デジタルかアナログかということよりも「版有り」か「版無し」とうことがポイントのひとつとして上げられる。
UV厚盛印刷の分野では、アナログでのスクリーン印刷とデジタルでのUV硬化型インキジェットプリンターが同様の位置づけで存在している。UV硬化型インキジェットプリンターと開発によって容易に被印刷体を選ばず、厚盛印刷が可能となった。
シルクスクリーン印刷(シルク印刷)は、シルク(絹)の幕を枠に張って印刷する方法だ。現在、シルクは使用せずナイロン・テトロンなどの素材が使われている。繊維によるメッシュで弾性があり、被印刷体を選ばないという長所を持っている。紙・プラスチック・ガラス・金属など被印刷体は多岐に渡る。表現効果としても厚盛の特性を活かして、「視覚」「味覚」「嗅覚」「触覚」など多くの感覚に訴えかける表現技術で、金銀・蛍光・偏光パールを刷る・香料印刷・リオトーン・発泡蓄光印刷・テクスチャー印刷など色々で、幅広い表現技術でクリエイターでも話題になることがある

<主なスクリーン印刷の用途>

工業製品印刷
… 計器類、CD・DVD、電機部品、液晶ディスプレイ、成型物、プリント回路など
生活商材印刷
… 玩具、文房具、Tシャツ、各種パッケージ、容器、木工品、ガラス、陶磁器など
商業印刷
… ポスター、看板、POP、ディスプレイ、ステッカー、標識など

一方、UV硬化型インクジェットプリンターは、プリントヘッド部分にUV-LEDランプ搭載し、吐出後のインクをすぐに硬化させ、用紙へインクを瞬時に定着させるものだ。瞬時に硬化させるのでインクの厚盛ができる。非接触なのでこちらも被印刷体は多岐に渡る。例えば、シルクスクリーン印刷分野で特別な工夫が必要とされてきたことが可能だ。出力素材の幅広さや繊細なグラフィック表現などのメリットがたくさんあるようだ。
特別な技能習得の必要がないことは大きなメリットだ。人材確保、採用難の今日では注目すべき点である。

<両者のメリット、デメリット>
デジタルで変わったことは、版の制作が不用となり1枚からでも印刷加工可能になったことだ。シルクスクリーン印刷は版を作る必要があり技能が必要だ。しかし、その製作過程の中で品質管理や改善、商品開発が行われてきたことも事実だ。
【シルク印刷の特徴】
シルク版必要。位置合わせ等で刷り出しでのロスが有る。熟練の技能が必要
→基本価格が高い、多ロット生産に適する。大ロットでの単価は下がる。
【インクジェットプリンターの特徴】
版不要。自動位置合わせ。刷り出しロス無し。熟練の技能不要。
→基本価格は安価。小ロット生産に適する。大ロットでの単価は高い。
→後加工などフルデジタルワークフローへの対応ができる

UVインクジェットプリンターは、高い専門知識が必要ではなく、むしろ、高い表現効果を活かした新しい発想が必要だ。マーケティング視点を持って、デザインや表現効果考え、後加工も含めてコーディネートする力が必要だ。これは、デジタルやアナログに限らず、重要な課題だ。

プリンティングコーディネータの役割

コミュニケーション効果上げることは、技術者とクリエイターが上手く連携してクライアントの意図とオーディエンスの欲求を満たすことだ。マーケティング感覚を持ち、技術者とクリエイターを結び付ける人材が必要とされる。結婚で言えば、仲人のような位置づけである。両方をよく理解して結びつけるのだ。この結び付け方が上手くいけばいくほどシナジー効果は高い。結びつける人材、コーディネータが鍵を握る。
プリンティングコーディネータ養成講座第21期(JAGAT主催)は、様々な印刷技法、素材、作品、人との出会いの場。今年もブラシュアップして10月3日から開催する。

( CS部 古谷 芸文)

<関連講座>
【プリンティングコーディネータ養成講座第21期】