テレワーク時代の印刷営業スタイル

掲載日:2020年10月1日

新型コロナウイルス感染拡大に伴った緊急事態宣言が発出されてことによって、テレワークという働き方が注目された。印刷会社でも、特に首都圏や大阪、名古屋という3大都市圏の会社では否応なくテレワークに取り組まざるを得なかったというところも少なくないだろう。

当然、印刷の製造現場ではテレワークを行うことは、ほぼ不可能なので、JAGATの調査では導入した印刷会社でも営業や事務部門が中心になったようだ(JAGAT発行『テレワーク時代の印刷ビジネスモデル読本』より)。

また、本来ならDTP制作部門などもテレワークにマッチする部門だが、会社と同様に仕事ができる制作環境を実際に自宅で整えることは時間的にもコスト的にも難しく、働き方改革等で従来取り組んでいた会社や準備していた会社以外は対応できなかったというのが現実なのだろう。

印刷営業がテレワークを取り組む上で、ノートパソコンやタブレット端末などの支給、データ等取り扱うルール(セキュリティー対策)から出退勤の管理等まで、さまざまなことを取り決めてルール化する必要が出てくる。

先日、実際にテレワークを行っていた営業担当者と話す機会があった。ここで、細かい仕事の仕方について触れないが、受注活動での課題というか、悩みを紹介する。

顧客もコロナ禍での仕事なので、訪問回数は減るし、訪問できたとしても必要最低限の接触になる。また、Zoom等のオンラインでのやり取りも行っているが、雑談などする雰囲気ではなく、これも要件のみを済まして終わりである。

コロナ禍ですでに受注、予定されている案件自体が仕様変更(ページ減や部数減等)や中止・延期になることもあったが、何より新規案件の情報が取れない、アプローチできないという状況だった。

理由として、これまでの営業スタイルは担当者との雑談を含めた会話から情報を得えて案件創出につなげる、あるいは他部署の案件等を紹介されるケースがあったが、訪問の制限やオンラインでのやりとりでは、それがほぼできなかった。

結果、従来の「案件の発注待ち」を中心にする営業では、受注するための情報が圧倒的に不足して新規受注が停滞してしまうということだ。

問題は印刷会社がテレワークから従来の働き方に戻ったときに、顧客も従来の仕事のやり方に戻るかどうかである。おそらく戻るところと戻らないところが出てくるだろう。いずれにしても、afterコロナ/withコロナ時代が従来とまったく同じやり方で問題ないとは考えないほうがよいだろう。

従って、自分たちがこれまで実践してきた営業の方法やあり方が、これからも通用するのか、その方向性は正しいのかを、新しい印刷営業モデルのあり方を考えてみる。さらに営業の一部でその考えを実践してみることが求められるだろう。

例えば、ある印刷会社はコロナ禍以前から、営業情報に関する情報をデータ化して顧客接触、案件創出、企画提案のデマンドセンター的な部署を作り、そこから営業の実戦部隊に渡していくということを始めている。従来の営業担当者個人のスキルや情報網、人脈に頼る属人的な営業スタイルから脱却しようということである。

このようなスタイルには、見込み顧客獲得、見込み顧客育成、見込み顧客選別といった活動が必要で、つまり、マーケティング知識が必須なる。マーケティングオートメーションの活用やデータ解析などIT知識とスキルも不可欠で、それに対応できる人材が必要になる。それらの人材を社内で育成するにしても、外部から採用するにしても、社員教育はますます重要になる。

会員誌『JAGAT info 』10月号では、JAGAT印刷産業動向調査より、設備動向を紹介するが、コロナ禍以前の調査になるが明らかにハードから人材を含めたソフト重視への投資傾向が見られる。そういう意味で、新しいビジネスモデル、営業スタイルへ転換する時機に差し掛かっているといえよう。(JAGAT info編集部)

JAGAT info9月号の目次はこちら