銀行券には、偽造防止のための特殊な印刷技術と高い安全性が求められます。KOMORIは世界に2社しかない銀行券印刷機メーカーの一つとして、最高技術の粋を集めた機械の開発・製造に取り組み、国内外で高い信頼を得てきました。
当社取締役会長 小森善治  
証券印刷事業の始まり 1958年に国立印刷局との共同開発をさせていただいたことがKOMORIの証券印刷事業の始まりでした。日本銀行券を印刷するのは国産の機械が必要だという話を受けて、開発に取り組みました。
左:初めて国立印刷局に納入した銀行券印刷機は足立工場で製造 
海外市場への挑戦 私は1962年にKOMORIに入社し、証券印刷事業を海外に拡大し、成長させることが夢となりました。
左:1987年の印刷実演会で刷られたハウスノート第1作  
右:インドに納入された凹版印刷機Currency I322  
 
東南アジアでの成長と欧州での成功 東南アジアへの進出にも力を入れ、インド、インドネシア、タイ、フィリピンなど、私も担当者と世界中を回りました。しかし、すでに使用している機械を切り替えるということは困難で、契約に至らないことも多々ありました。オフセット印刷機の実績や新技術、そしてアフターセールスサービスまで力を入れていること、これらを商談では伝え続けました。そうして、ようやくフィリピンに1ライン納入いただけたことをよく覚えています。
近年はベトナムで、新工場計画が進み、10年以上の商談を経て、2024年にオフセット、凹版、番号機の2ラインの商談が成立しました。私は昨年新工場を見学させていただきましたが、大変広くて大きな素晴らしい工場でした。ここに当社の機械が並ぶと思うと感無量です。
欧州では、2000年代に入り、2011年には世界最大の民間銀行券印刷会社である英国のデ・ラ・ルー社に1ラインの印刷機を受注しました。同社は、各国の紙幣を印刷しており、KOMORIがヨーロッパ市場へ踏み出す大きな一歩となりました。デ・ラ・ルー社とは特別なパートナーシップ契約を結び、新しい技術情報や印刷技術の提案、当社からの保守サービスを包括的に行っています。
このパートナーシップが軸となり、その後の欧州での商談が発展しました。英国では、2014年にイングランド銀行より2ラインを受注し、現在英国のポンド紙幣は100%KOMORIの機械で印刷されています。2019年にはフランス銀行より複数台を受注し、ユーロ紙幣の印刷に当社の機械が使われています。その後、アラブ首長国連邦、ブルガリア、マルタ、イタリア、トルコなどへの納入が進みました。さらには、納入が難しいとされてきたアフリカのコンゴにも1ラインを受注することができました。
左:KOMORIの印刷機で刷られたポンド紙幣  
右:2018年に国際通貨協会(IACA)最優秀技術賞を受賞した、番号印刷機Currency NV32  
 
夢にみたドル紙幣の印刷 KOMORIの印刷機でアメリカ・ドル紙幣を印刷することは、私の長年の夢でした。今回米国ドル紙幣印刷局より受注をいただくまで、15年以上同社を訪問し、商談を重ねてきました。ワシントンやテキサスの工場を訪れ、当社つくばプラントでのテストを行ってきましたが、お客様の要求は高く、なかなか期待に応えられない期間もありました。
これが、私が経験した証券印刷事業の歩みです。ここまで苦労することも多々ありました。何よりも機械を変更する、ということは、特にオペレーターにとって不安なことです。慣れない機械や最新の技術が搭載された機械を使いこなせるか、という心配がいつもあります。私は、この不安を取り除くことがKOMORIとしてできることだと考えています。良い機械を作り、納入後のサポートまでしっかりと行う。一度機械を使っていただくと、その良さに気づいていただけます。
今後の展望 証券印刷事業は当社の大きな柱のひとつであり、市場は今後も大きく伸びると考えています。アジアの人口が増加している地域や、まだ当社の機械が少ない中南米やアフリカでも、今後商談が増えると思います。
また、当社はデジタル印刷機の開発も行っていますが、今後銀行券への活用が見込まれています。デジタル印刷は、1枚ごとに異なる絵柄を印刷できる特長があるため、オフセット、凹版、番号印刷と組み合わせることで、より高度なセキュリティー印刷を施すことができます。
さらに、証券印刷事業で培った技術は、他分野でも応用されています。当社のプリンテッド・エレクトロニクス(PE)事業では、紙幣に使われているマイクロ文字の細線印刷技術を応用し、グラビアオフセット印刷機の基板製造において活用されています。セキュリティー印刷は高度な技術の宝庫なので、様々な分野で活用の可能性があると考えています。
デジタル印刷をはじめとしたさまざまな最先端プリントテクノロジーが盛り込まれた当社100周年記念ハウスノート 
セキュリティー印刷のデモンストレーション、トレーニング、  
世界に感動をもたらす企業 私は社長になった時、「顧客満足」という言葉を「顧客感動」という言葉に変更しました。お客様に感動していただけるような、期待を超えるような会社にならないといけない。この思いが社員に浸透し、お客様に感動していただけると、次の機械もまたKOMORIを選んでいただける。この良い循環が事業を成長させると考えています。
■株式会社小森コーポレーションとは 株式会社小森コーポレーションは、「プリントテクノロジーで社会を支え感動をもたらす」をパーパスに事業を展開する印刷機械システムメーカーです。1923年の創業以来、品質と信頼を至上とするものづくりの原点にこだわり、100年培ったプリントテクノロジーで情報・経済・文化を支えてきました。オフセット事業や証券印刷事業をはじめ、デジタル印刷やプリンテッド・エレクトロニクス事業を通して、社会の課題を解決するソリューションを提供し、人々の期待を一歩超える価値「感動」を創造してまいります。
■株式会社小森コーポレーションについて 名称   : 株式会社小森コーポレーションhttps://www.komori.com/ja/jp/