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コロナで変わる印刷営業とその体制

コロナ禍は営業を変えた。需要水準は切り下がり、発注者の価値観は変わり、訪問営業しづらくなり、オンライン会議システムとオンライン校正は急速に普及した。JAGAT調べでは印刷会社の約3/4は外勤営業しかいない。これからの営業はどうすれば良いか。

 

長引くコロナ禍の影響

コロナ禍以降、初回の緊急事態宣言の発出を経て急減した印刷需要は、20年5月に未曾有の落ち込みを記録した。以降は感染の縮小と拡大に合わせて一進一退となっている。全体には持ち直しつつあるが、コロナ前の水準には戻らないだろう。さらにオミクロン株によって不透明感が増すなど、悪材料が出るたび観光業界などへの打撃を通して商業印刷に影響する繰り返しだ。

コロナ禍は施策の差が業績差に現れやすい

市場縮小とは裏腹に、売上高の落ち込みが軽微、むしろ増えた企業もある。現在のように売上高が大きく変動する局面は、施策の差が業績の差として表れやすい。そこでこうした企業の戦略を分析して、ニューノーマルに向けた手がかりをひとつでも多く得ようと試みている。市場は企業にとっての戦場なので、現状や方向感を掴むことはまず何より基礎である。

対策は売上高構築に求める必要

次に施策をどうするかである。コストダウンでは追い付かないほどの変化である以上、対応の中心を営業・売上高対策に置かざるを得ない。一般に印刷会社の損益分岐点比率は95%程度なので、売上高が5%落ちればほとんどの企業は赤字化してしまう。とはいえ従来型の訪問営業を活発化させるわけにはいかない。売上高構築には新たなアプローチが必要である。

営業担当者を経由しない仕事が増えている

コロナ禍以降の印刷会社を見ると、営業のあり方が大きく変わっている。インサイドセールスと呼ぶべき内勤営業がウェブサイトやメルマガ、SFA/CRM/MAなどのデジタル施策を駆使する例がある。顧客要請もあって制作がオンライン校正を活用し始めた例もある。webを充実しておいたおかげでコロナ禍以降は新規引き合いが増えた印刷会社も少なくない。こうして、従来はすべての業務が営業部門を経由したが、各部門が顧客と直接につながり始めた。

変わる顧客との接点、営業からマーケティングへ

したがって印刷会社と顧客の接点は、営業担当者と印刷発注者のクローズドで線的なもの、ではなくなった。多様な接点のそれぞれが顧客とつながる面的なものに移行した。そしてそれは、見込み客の創出において、もっと顕著になっている。地域社会あるいは自社の得意な業界と複数の接点を持つ必要性の有効性が高まった。コロナ禍でも堅調な企業は、将来の見込み客が持続的に生まれるフィールドの育成に長けている。営業の役割はどのように変わるのか。

受注・顧客創造企業へ、工場見学など自社拠点を活用

JAGATは中小印刷業を対象に「顧客・地域接点実態調査」を行い、顧客創造の仕組みの解明に取り組み、分析は『JAGAT info』2021年11・12月号に掲載した。企業経営は短期的な受注獲得を重視せざるを得ないが、持続成長のためには、各方面から相談や受注が流れ込む関係性の構築が欠かせない。たとえば「工場見学」の実施有無は最も大きな業績差の要因だった。

受注・顧客創造企業へ、研究所・ラボの展開

下記セミナーに登壇する1社は「訪問営業すれば価格競争になってしまう、来てもらう仕組みが大事」と語る。次に大きな業績差は「研究所・ラボ」の有無だった。下記セミナーに登壇する2社がノウハウを持つ。ほとんどの印刷会社は営業企画機能や研究開発機能がないので参考になる。一見して非財務の様々な活動が、実は背景的に長期の財務を形づくる。

訪問から発信へ、営業からマーケティングへ、線から面へ

堅調な企業の分析から、営業の潮流は、訪問から発信へ、営業からマーケティングへ、線から面へのシフトが確認される。デジタルチャネルの開設も重要だが、デジタル施策はアナログ施策と両輪になって初めて機能する。単体ベースで比べるなら、デジタル施策よりはインサイドセールスや研究所・ラボ運営のような人的施策の方が優位で、さらには工場見学や地域活性化のような背景的施策の方がもっと有意なことも明らかになった。

ニューノーマル時代の営業を議論する

これら変化の一要因は、印刷業が基本的にBtoB業態であることによる。コモディティ化した製品を除けば、産業材の取引は基本的に長期固定的であり、新規開拓は容易ではない。たとえば最後の刈り取りは営業の属人的スキルに頼るところが大きいが、持続的な成長性は先述のフィールドにどれだけ有形無形の投資をしたかによる。研究会とpageカンファレンスは、こうした印刷業ならではの特性と調査結果を踏まえた営業とBtoBマーケティングによる造注、創注に焦点を当てる。
(研究調査部 藤井建人)

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BtoBマーケティングの必要性

BtoBビジネスではマーケティングは不要と考えられてきた。それは、業種、顧客、製品ごとに市場が大きく異なり、その特性を理解することに明け暮れてしまいがちだからである。BtoBはBtoCと異なって選好的、感情的に選ばれることが少なく、AIDMAのようなファネル型モデルを適用しにくい。顧客は法人だから、購入の関与者が多く、意思決定は分岐が多く行ったり来たりの経過をたどる。だからマーケティングが不要なのではなく、だからこそ必要なのである。ちなみにBtoBマーケティングを考える際はBtoCモデルを基礎に考える形で良いと思うが、違いが相当にあるのでその点はまたの機会に触れたい。

BtoCとBtoB

長期継続的な取引が中心となるBtoBビジネスでは、信頼とブランド、サービスが大切になる。多少の安さよりは供給や品質の安定性、面倒見の良さが重視される。スイッチングコストを高めておくことが肝要だ。取引の長期化によって製品がコモディティ化すれば価格は必然的に落ちていく。製品周辺のサービスも合わせて包括的に提供するサービスマーケティングの流れになることは多くの業種の事例が物語る。卑近な例でいえば、コピー機を販売するのでなく、コピーの利便性のみを売って所有権は移転せず、メンテナンスは売り手が担うモデルである。

サービスマーケティング化

ところで経営でいう場合のサービスはもちろん無償奉仕を意味しない。そして顧客のバリューチェーンの一部を肩代わりするようなサービスを想定するようにしたい。「印刷産業経営動向調査2021」が初めて調べた需要調査(製品26種・生産方式8種・付帯サービス10種)を読むと、とりわけ印刷製品とサービスの相性は良いことが理解できる。BPO(Business Process Outsourcing)と言っても良いが、本業の印刷周辺に何か手伝えることはないかと、顧客を研究して自社の強みとの整合を検討することの有効性が高い。顧客業務へのカスタマイズが一つの価値になる。

イノベーションと組合せて

前述のコピー機の例でいえば、これは販売方法のイノベーションを伴った。ドラッカーはマーケティングとイノベーションこそが企業の2大機能と述べた。コロナ禍でも堅調な中小企業を見ると何気ない小さなイノベーションによる事業を複数持っていることに気づく。顧客の声をあまり聞き過ぎても、ありふれたサービスになって市場をさらに飽和させてしまうという、BtoBの難しさはこのバランスにある。まずは小さくても顧客の潜在需要を探り当ててサービス設計する視点が望ましい。11/14放映NHKスペシャルでのホンダのスタンスは、変化が速いのでもはや変化対応型では後手を踏むというものだ。自ら変化を起こす側からの提案が価値を持つ時代になった。以下の研究会とセミナーでは、本稿での視点から発表と議論を展開する。  (研究調査部 藤井建人)


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ウェブマガジン「GetNavi」に連載中で印刷業界ネタ満載のマンガ『今日も下版はできません!』の書籍版、シリーズ第3 弾の『印刷ボーイズに花束を』が発売された。

印刷トラブル!と人間模様

専門性の高い職業を舞台にしたお仕事マンガは、以前から人気の高いジャンルの一つである。

印刷ボーイズに花束を(表紙)

『印刷ボーイズ』シリーズは、数少ない印刷業界を描いたマンガの一つである。中堅印刷会社の「ナビ印刷」の営業部に所属する刷本正(すりもと・ただし)を中心に、営業部・製版部・工場のスタッフたちが奮闘し、連日のように襲いかかる難題や客先からの無理な注文に対処していくストーリーが魅力的である。

毎回さまざまなトラブルに見舞われては何とか対処していく姿に、思わず笑いがこぼれてしまう。また、一話ごとに印刷に関する知識がストーリー中で解説されているため、一般の読者にも自然に理解できるようになっている。

今回のストーリー中では、「DTPエキスパート試験」「広色域印刷・シズル感」「活版印刷」など、興味深い内容が盛り込まれている。

新人の営業マンが本格的に印刷知識を習得しようとDTP エキスパート試験を目指し、製版部の女性スタッフと勉強会を行っている。それを知った先輩社員(この女性に気がある)は、最初は「試験なんて」と反発していたが、結局は一緒に勉強し、そろって合格する。

また、RGB にこだわるデザイナーの要請から広色域インキで対応することとなり、さらに得意先担当者が「シズル感」に執着したことから、高精細印刷にまで発展したという話も収録されている。その結果、シズル感あふれる立派な料理本が完成し、発売後は大評判になる。

活版印刷の達人が手掛けた名刺が、各界の大物たちに評判の「幸運の名刺」として有名になるというストーリーもある。

トラブルやクレームだけでなく、印刷を通じた夢のある内容も盛り込まれている。

印刷の実体験をベースに

本誌2020年2月号では、作者である奈良裕己氏へのインタビューを掲載している。奈良氏は大手印刷会社の営業マン出身である。愛すべき印刷会社の日常や個性豊かなキャラクターを描きたい、世の中に印刷の楽しさや奥深さを知ってもらいたいという思いで作品を描いていると、熱く語っていた。

また、作品のキャラクター設定は、少し怖いけれど頼りになるような現場の方たち、印刷が大好きで仕事に一生懸命な営業スタッフなど、実在する人をヒントに設定されているそうだ。印刷会社時代にはDTPエキスパートも取得されており、スキルアップの大切さを実感したそうである。

『印刷ボーイズ』シリーズには、印刷会社の日常や楽しさが存分に描かれており、印刷人必読といえるだろう。未読の方がおられたら、電子版ではなく紙版の書籍を購入して読んでもらいたい。
紙版の良いところは、周囲の人と読書体験を共有できることである。ぜひ『印刷ボーイズ』の楽しさを共有してもらいたい。

(資格制度事務局 千葉 弘幸)

※(JAGAT Info 2021.10月号より抜粋)

印刷ボーイズに花束を 業界あるある「トラブル祭り」3
株式会社ワン・パブリッシング