JAGAT info」カテゴリーアーカイブ

印刷業定点調査 各地の声(2019年4月度)

4月の売上高は+1.9%。昨年4月は+0.1%と前年同月が高かったにも関わらずプラスとなったことは、体感的には数字以上の繁忙さだったと思われる。用紙調達難による需要減もあったが、大型連休前の駆け込み需要が上回った。用紙価格の転嫁、印刷の価格修正も一定程度ながら受け入れられ、表面的な売上高を押し上げた面もある。 続きを読む

アニメと地域活性に関する研究会を開催

6月11日、研究会セミナー「アニメを活かした地域活性化と事業展開」を開催し、好評を博した。また、セミナーの最後に発表された富山県南砺市の事例は現地での取材を含め『JAGAT info』9月号に掲載予定である。

コンテンツツーリズムの有力な一手段として

アニメの舞台となった場所を訪れる「聖地巡礼」。元々作品の舞台を訪れる行為は映画や文学などで昔から見られたが、アニメの舞台モデルを訪れる行為が近年注目され、政府の進めるインバウンド戦略の有力な一つとしても期待されている。

2018年2月に内閣府より発表された海外の日本通に対する調査では、欧州の75%、アジアの57%、北米の23%の人が、日本に興味を持ったきっかけとしてアニメ・マンガ・ゲームを上げている。また、日本アニメの海外市場は2014年から2017年にかけて約3倍へと急成長した。

アニメを題材とした地域の観光資源化は今後、成長分野の一つとなりうる可能性を秘めている。しかし、大きな期待とは裏腹に聖地巡礼をどのようにビジネスとして成立させ、地域の持続的な発展に役立てるかというノウハウの蓄積は進んでいない。そこで本研究会では、印刷会社や研究者、アニメの制作会社といった分野の専門家を招き、様々な視点から聖地巡礼ビジネスを考える研究会を企画した。

地域活性化に貢献するアニメの力

まず最初にJAGATの主幹研究員藤井建人から、印刷会社による地域活性化の動向について発表を行った。印刷会社では地域活性事業に取り組む企業が増えている。JAGATの調査では61.9%が既に取り組んでおり、残り39.1%の中でも必要性を感じないと答えた企業は15.3%に留まった。地域に根ざした印刷会社では周辺地域の活力を上げていくことが結果的に自社の利益に繋がると捉えることが多く、地域活性事業で関係性を深め、地域に新たな価値を創造する構図も生まれている。コンテンツツーリズムは関連グッズや観光MAP、ポスターなど印刷物に限らず地域に派生的な経済を多くもたらすと見られ、印刷会社の持続的な仕事になる部分もあるだろうと注目している。

アニメ関連産業に印刷会社が新規参入した事例について、近年アニメコラボカフェの事業を始めたサイバーネット社の会長、高原一博氏と村上直樹氏が講演した。コラボカフェとはアニメやゲームをテーマとした料理やサービス、内装などを提供し、数か月ごとにテーマ作品を切り替えていくコアファン向けのビジネスモデルである。サイバーネットでは、ザイコンのデジタル印刷機を保有しており、内装やグッズの制作コストを他のコラボカフェ事業者より安く、機動的に用意できる。こういった部分を強みとし、海外からもファンが訪れる一種の聖地を作りだした。

成長するアニメコンテンツにどう関わるか

デジタルハリウッド大学の荻野健一氏は地域から聖地を生み出す聖地創生という考え方を提唱している。日本のアニメ会社はほとんどが東京に集中しており、舞台に選ばれた地域が後から作品を知って作品のファンを受け入れるという流れが多い。聖地巡礼の成功には地域の協力が不可欠であるため、熱意のある地域と作品との高い偶然性が必要とされる。荻野氏は、今後は作品を待つだけではなく、地域の物語を発掘し、それを利用しやすい形でアニメ制作会社に提示することが必要だと考えている。地域が主体的に作品に関わることで、作品と一緒に地域の魅力も知ってもらう仕組みを作り、聖地巡礼を地方創生に結びつける方法を提示した。

ピーエーワークスは富山県に本社を置き、地域と関係の深いアニメ会社としては第一人者的な企業である。そんなピーエーワークスの役員が立ち上げ、現在のピーエーワークスの地域活性事業を担っているのが、一般社団法人地域発新力研究支援センター(PARUS)である。現代表は前職が印刷会社勤務だった佐古田宗幸氏であり、PARUSがアニメのコンテンツ力を地域の活力に繋げるために、どのような活動を行ってきたか講演を行った。聖地巡礼を地域振興に活用した最も先進的な例の一つと言える。詳しくは『JAGAT info』9月号で4ページに渡って掲載する。

おわりに

研究会当日は、コンテンツ事業に力を入れている大企業から地域活性に興味を持つ全国の中小印刷会社など、業界内外から40人以上が参加し盛会となった。アニメ・マンガ・ゲームといったコンテンツ産業は成長を続けており、波及効果も大きい。今後もクールジャパンやコンテンツツーリズムといった領域には引き続き注目し、研究会等でも取り上げていく予定である。

(JAGAT研究調査部 松永寛和)

■関連イベント

アニメを活かした地域活性化と事業展開 ~聖地巡礼によるツーリズムと印刷会社の役割を事例に~

『JAGAT info』2019年8月号

JAGAT info 2019年8月号 表紙

■特集 「2018年度印刷産業経営動向調査」戦略分析
転換期を乗り越える次世代戦略を求めて
強まるマーケティング志向と働き方改革の影響

■特別寄稿
日本とオーストラリアの印刷ビジネスにおけるイノベーション
業界の一大変革期を乗り切るアントレプレナー達
ガレス・トマス/山田 仁一郎

■私の若手社員時代
同業の先輩経営者、仲間の支えで経営者人生をスタート
―目標は高く、目の前の試練から逃げない生き方を―
池田印刷株式会社 代表取締役社長 池田 幸寛氏

■マーケティング情報
地方創生戦略は何が変わるのか
「まち・ひと・しごと創生基本方針2019」を読み解く

■デジ印奏論
電子写真方式デジタル印刷と紙の関係

■技術トレンド/クロスメディア
広がるIoT

■技術トレンド/グラフィックス
普及期を迎えたプロセスレスプレート、デジタルメディアは足踏み

■Education
印刷ビジネス開発への挑戦!自社の弱みを強みに変える逆転の発想
「印刷ビジネス開発実践講座」受講インタビュー
株式会社小西印刷所

■エキスパート資格
デザインとすうがく

■デザイン・トレンド
暮らしを彩る紙製品
「インテリア ライフスタイル 2019」に見る印刷業界の提案

■メディア業界動向
令和初の業界動向
〜厳しい経営環境と新たな取り組み進展 井上 秋男

■デジタル印刷最前線
仮説検証型ショールーム キヤノン「Customer Experience Center Tokyo」

■森裕司のデジタル未来塾
PDFを活用しよう!

■DTPエキスパートのための注目キーワード
UVインキ

■クロスメディアエキスパート試験でも役立つ課題解決入門
O2OからOMOへ 影山 史枝

JAGAT夏フェスセミナーのご案内/印刷産業経営動向調査2019のご案内/印刷界OUTLOOK/キーワード2019/西部支社便り/印刷ビジネス開発実践講座のご案内/図書のご案内/JAGAT通信教育講座のお知らせ/『みんなの印刷入門』のご案内/ニュースラウンジ/JAGAT夏フェス2019のご案内/JUMP東北開催のご案内/印刷総合研究会・印刷産業経営動向調査2019報告会のご案内/印刷経営ウオッチング/消息

2019年8月15日発行 A4判

JAGAT info 最新号

印刷ビジネス転換期を乗り越える戦略とは

「2018年度印刷産業経営動向調査」の結果がまとまった。『JAGAT info』では7月号で概要を報告したが、8月号では戦略分析編として、9月末に刊行が予定されている『JAGAT 印刷産業経営動向調査2019』に先がけて、経営戦略と業績の相関関係、業績良好な会社の思考特性について概要を紹介している。

デジタル化社会になって印刷会社のビジネス環境が大きく変わっており、品質の高い、あるいはすぐれた印刷物を低価格で提供できれば、売り上げ拡大につながるということが難しくなっている。そういった従来どおりのビジネスのやり方で生き残ることができる印刷会社もあるだろうが、それはごく一部の会社だけだろう。となると、自分達の印刷ビジネスのあり方を変える必要があり、そういう意味で転換期であり、次世代に向けた戦略が必要になる。それは、前号の紹介で印刷ビジネスの本質が変わりつつあるようだと言及したことにつながる。

そのことは、ビジネスの現場のところでは当然のように意識されているようで、「2018年度印刷産業経営動向調査」の設問「強化したい工程」では、今回から調査項目に加えた「企画・マーケティング」は、いきなり2番目となり55%の会社が強化したいという結果になった。これからの売り上げを作っていくために、顧客の期待に応えるサービスをビジネス化していく上では企画・マーケティングが重要な役割を担うという表れだろう。

なお、強化したい工程でトップは、7年連続で「デザイン」となっている。いくら素晴らしいマーケティング企画があっても、その施策を実施するにあたっては、説得力のある表現が不可欠である。例えば、さまざまなデータ分析に基づいてピンポイントのターゲットが選定でき、的確なコンテンツを提供できる素晴らしい施策だったとしても、最終的にはターゲットを動かくすだけの表現ができないとならない。そういう意味でもデザインは重要な訳である。

また、最近は「働き方改革」ということで、人手不足対応を含めて、社員の労働環境の改善も課題になっている。これらの問題に対してどのような制度を作ろうとしているのか。ほかにも、財務視点、顧客の視点、内部プロセスの視点や組織や人材の視点などさまざま調査項目から、経営者が次代の戦略をどのように考えているのか、また業績の良い企業はどのような経営視点を重視するのかを探っている。自社の時代の経営戦略を考える上で参考にしてほしい。

JAGATinfo8月号の目次はこちら

■関連イベント

最新調査にみる印刷経営と戦略、設備2019【東京・大阪・愛知】

『JAGAT info』2019年7月号

JAGAT info 2019年7月号表紙

■特集「2018年度印刷産業経営力調査」業績分析
経営環境の変化から兆候と商機を読み解く
新時代ビジネスモデルへの転換に向けて

■私の若手社員時代
「他人と同じことをしない」を信条に
独自の商品開発を実践し他社と差別化
株式会社昇寿堂 代表取締役社長 瀬戸 良教氏

■特別企画
印刷色に関わる国際標準化動向

■お知らせ
JAGAT Summer Fes 2019 〜デジタル×紙×マーケティング for Business〜のご案内

■マーケティング情報
折込チラシの最新動向2019
枚数と特性、そしてチラシ起点のビジネスモデル考察

■デジ印奏論
感光体と帯電

■技術トレンド/クロスメディア
自動化、スキルレス化が進む動画制作

■技術トレンド/グラフィックス
時間当たり付加価値と働き方改革

■Education
次世代を担う経営幹部育成の重要性

■エキスパート資格
第27期クロスメディアエキスパート 論述試験の出題意図と講評

■デザイントレンド
第30回 国際 文具・紙製品展 ISOTが示す2019年の文具トレンド

■経営情報
印刷会社の「働き方改革」への取り組み
第7回 印刷会社における働き方改革事例

■メディア業界動向
令和時代の新聞製作技術の導入状況
〜コスト削減、省力化、環境対応が進展 井上 秋男

■デジタル印刷最前線
国内初!デジタル印刷機によるフルカラー日刊紙発行
日本プロスポーツ新聞社における競輪新聞の取り組み

■森裕司のデジタル未来塾
アドビ、突然のポリシー変更!

■DTPエキスパートのための注目キーワード
デジタル印刷ビジネスの発展

■クロスメディアエキスパート試験でも役立つ課題解決入門
ネット戦略と印刷メディアの融合 影山 史枝

印刷ビジネス開発実践講座のご案内/『みんなの印刷入門』のご案内/印刷界OUTLOOK/図書のご案内/Keyword2019/西部支社便り/印刷後継者・経営幹部ゼミナールのご案内/『DTPエキスパート受験サポートガイド』のご案内/デジタル×紙×マーケティング読本/ニュースラウンジ/JAGAT通信教育講座のお知らせ/『クロスメディアエキスパート受験サポートガイド』のご案内/印刷経営ウオッチング/消息

2019年7月15日発行 A4判

JAGAT info 最新号

『JAGAT info』2019年6月号

JAGAT info 2019年6月号表紙

■特集
印刷ビジネス激変の時代に挑む印刷会社の取り組み

■特別企画
page2019カンファレンス報告
WEBと地方で広がるデジタル出版の可能性
〜プラットフォーマーと同人誌新規参入会社の視点から〜

■私の若手社員時代
「他人と同じことをしない」を信条に
独自の商品開発を実践し他社と差別化
株式会社昇寿堂 代表取締役社長 瀬戸 良教氏

■マーケティング情報
フリーペーパーに関する2018年調査結果から
そして印刷会社の取り組み事例から見える方向性

■[新連載]デジ印奏論
電子写真方式が主流

■技術トレンド/クロスメディア
AIで高度化するデータ分析・活用

■技術トレンド/グラフィックス
見える化による3つのドンブリからの脱却

■Education
広く活用されているコントロールストリップ
〜印刷品質向上と顧客の信頼獲得には不可欠

■エキスパート資格
100年ライフと学び直し

■クロスメディアエキスパート認証試験 解答形式を改定

■デザイントレンド
広域の連携をアピールする「九州ロゴマーク」のデザイン

■メディア業界動向
令和時代の新聞製作技術 〜“AI・IoT”を活用して次世代展開へ
井上 秋男

■デジタル印刷最前線
ビジネスを共に「ツクル」
印刷と連携したワークスペース創造の挑戦
キンコーズ・ジャパン株式会社

■森裕司のデジタル未来塾
今どきの使い方(Illustrator編)

■DTPエキスパートのための注目キーワード
Web to Print

■クロスメディアエキスパート試験でも役立つ課題解決入門
AI(人工知能)ベースのサービス動向
影山 史枝

印刷ビジネス開発実践講座のご案内/『みんなの印刷入門』のご案内/印刷界OUTLOOK/Keyword2019/西部支社便り/印刷後継者・経営幹部ゼミナールのご案内/『DTPエキスパート受験サポートガイド』のご案内/図書のご案内/ニュースラウンジ/JAGAT通信教育講座のお知らせ/印刷経営ウオッチング/消息

2019年6月15日発行 A4判

JAGAT info 最新号

おにぎり経営~理念の共有と見える化によるマネジメント

急速な環境変化の中で、印刷会社には自ら「変わる」ことが求められている。新しい取り組みや業務改善を行うときには、なんのために取り組むのかという目的を社内に浸透させる必要がある。

株式会社エクシートは1952年に創業した福井県坂井市にある印刷会社である。当社は非常に経営哲学を大事にしており、社是が「おにぎり経営」である。
おにぎりは米粒1つ1つが粘着力を発揮してぎゅーっと固まることで成り立っている。社員1人1人がしっかりと能力を発揮するとともにバラバラになることなくお互いを補い合うような会社を目指している。
その哲学をおにぎりフィロソフィーとして文書化しているほか、社員に親しみを持ってもらえるようにおにぎりのオリジナルキャラクターも作成している。

同社の専務取締役 出口淳氏によると、経営理念とはセクショナリズムや個人の利害を乗り越えるためのツールであるという。
会社のなかではさまざまなことが起こる。忙しさのなかで流されてしまう弱い自分とも出会うし、セクショナリズムの問題も出てくる。
そのときにどう判断して動くのか、共通の価値観をあらかじめリスクヘッジとして決めておく。「弱い自分に対する未来への危機管理」といえる。

同社では案件ごとの収支は納品前に工程別でわかるように「見える化」されている。赤字となったときは、営業と現場とで原因と対策を話し合うというルールになっている。しかしながら、何らかの強制力がないと日々の忙しさに追われて形骸化してしまいがちである。

こうしたときに役立つのが「おにぎり経営」という理念である。
例えばある仕事のDTPの赤字の原因が、入稿のやり方がめちゃくちゃでその整理に苦労したというのは、営業が自分だけ良ければいい、面倒なことをしたくないという行動の結果である。
これは「おにぎり経営」の理念に反しているよね、ということで改善に持っていく。罰則をつくるのではなく共通の価値観を浸透させることによって対応するようにしている。当社で重視しているのは、なんのために取り組むのかという目的、理念の浸透と場作り、空気作りである。

(花房 賢)
Jagat info2019年6月号「見える化による3つのドンブリからの脱却」より抜粋