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日本の季節と色と形(4)

会員誌『JAGAT info』の表紙のデザインは、印刷文化を語る上で欠かせない、色と形をテーマにしており、現在は「日本の形シリーズ」として、本誌の発行時期の歳時や風物をモチーフを主体にして、季節感と日本情緒が感じられるようなものとしている。

参考:『JAGAT info』バックナンバー 

では最近のバックナンバーから、表紙に描かれたモチーフについて解説し、制作手法を紹介しよう。

2025年2月号 「タンチョウ」

タンチョウはツルの仲間の中でも大型の種である。一時は絶滅したと考えられていたが、大正時代に再発見された。現在は環境省第4次レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類(VU)(絶滅の危険が増大している種)に登録されており 、また国の特別天然記念物に指定されている。現在は釧路湿原などに生息しており、国の特別天然記念物に指定されている。
タンチョウを漢字で書くと「丹頂」。これは頭頂部(頂)に羽毛がなく皮膚が露出しているため、血管が透けて赤色(丹)に見えることによる。
冬場に繁殖期を迎えると、雄と雌が互いに頭を掲げて翼を広げたり飛び跳ねたりと、ダンスをしているような姿が見られるが、これは求愛、あるいはつがいの絆を深める行動だと考えられている。
つがいができると春に湿原の中に巣を作り産卵する。

制作に当たっては、タンチョウの絵を色鉛筆で描いてスキャンし、Phtoshopでバックのテクスチャーと合成、文様はPhtoshopで描いた。
バックの大きな輪は雪輪文様で、その中に季節の植物である南天、椿、梅の絵をあしらった。

2025年3月号「桜餅」

お彼岸にちなんで、関東風の桜餅と、道明寺と呼ばれる関西風の桜餅を並べて描き、桜の枝と緑茶を添えた。

関東風は小麦粉の生地をクレープのように薄く焼いてあんを巻いたもの。江戸時代に向島(現・墨田区向島)の長命寺の門前で売り出されたのが始まりだという。
一方、関西風はもち米を原料とする道明寺粉を蒸してあんを包んだものである。
いずれも桜の葉の塩漬けを巻いているので、春らしい香りを楽しむことができる。この独特の香りは塩漬けしている間に生成される「クマリン」という成分によるものである。
なお、塩漬けに使われる品種はオオシマザクラである。

制作に当たっては、色鉛筆で描いてスキャンし、photoshopで色調などを調整した。

2025年4月号 「ツバメ」

JAGAT info 2025年4月号表紙

春になるとよく見かけるツバメをテーマにした。
ツバメは春に東南アジアなどの南方から日本に渡り、子育て後、夏にまた南方に帰る。日本では複数の種が見られるが、身近でよく見るツバメは、喉と額が赤茶、背が黒で、民家や駅などの建物の屋根の下に巣を作ることが特徴である。人のいる場所に巣を作るのは、外敵から身を守るためであると考えられている。
浮世絵や着物の柄などでは、しばしば初夏の情景として柳と組み合わせて描かれてきた。

制作に当たっては、さまざまなポーズを組み合わせて色鉛筆で手描きした後、スキャンし、ptohoshopで色調を調整した。


表紙絵を担当していると、日本文化の歴史や他国との関係などを知ることができ、対象となるものを観察することで思わぬ発見もある。今後もさまざまな題材を通じて、日本の風物の魅力を伝えていきたい。多忙な日々を送る読者の方々が、本を手に取る一瞬にホッと一息ついていただければ幸いである。

(『JAGAT info』制作担当 石島 暁子)

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印刷・メディアとデザイン

日本の季節と色と形(4)

会員誌『JAGAT info』の表紙のデザインについて紹介する。

会員誌『JAGAT info』の表紙のデザインは、印刷文化を語る上で欠かせない、色と形をテーマにしており、現在は「日本の形シリーズ」として、本誌の発行時期の歳時や風物をモチーフを主体にして、季節感と日本情緒が感じられるようなものとしている。

参考:『JAGAT info』バックナンバー 

では最近のバックナンバーから、表紙に描かれたモチーフについて解説し、制作手法を紹介しよう。

2024年10月号 「キノコ」

『JAGAT info』2024年10月号 表紙

そろそろ肌寒くなる時季であることから、鍋物や煮物などの温かい料理に活躍する食材であるキノコをテーマにした。
料理にキノコ類を入れるとうま味が増すし、シンプルに、バター焼きやホイル蒸しにしてしょうゆを垂らしてもおいしい。制作中は、我が家の食卓でもキノコを入れた炒め物や自家製の「なめたけ」の出番が増えた。
表紙に描いたのは椎茸・エリンギ・松茸・舞茸・ブナシメジ・エノキタケだが、他にも多くの種類がある。品種によって色も形もさまざまであり、それぞれの特徴を出すのは難しくもあり楽しくもあった。
制作に当たっては、色鉛筆で手描きした後、スキャンし、ptohoshopで色調を調整した。

なお、キノコで思い出すのは、2024年12月19日に逝去された絵本作家・いわむらかずお氏による『14ひきのあさごはん』。どんぐりパンときのこのスープを囲んだ朝食風景が微笑ましかった。

2024年11月号 「サザンカ」

『JAGAT info』2024年11月号表紙

サザンカとツバキは、どちらもツバキ科ツバキ属に属していることから、区別がつきにくい。
しかしよく観察すると明らかな違いがある。
例えばツバキの花弁は付け根が合着して筒状になった、いわゆる合弁花であるが、サザンカの花弁は一枚ずつ分かれている。そのため花が終わるとツバキは咲いた形のままポロリと落ち、サザンカは花弁が1枚ずつ散る。
雄しべの形も、ツバキの場合、花の中心部の花糸(雄蕊の中で、先端の花粉嚢を支える部分)同士が接着して筒形になっているのに対し、サザンカの花糸は一本一本が離れている。
また葉を見てみると、ツバキの場合、先が尖った卵型でつやと厚みがある。一方サザンカの葉はツバキより小ぶりで、表面に艶はなく、葉の縁がギザギザしている。
制作に当たっては、11月号と同様、色鉛筆で手描きした後、スキャンし、ptohoshopで色調を調整した。

2024年12月号 「白蛇」

『JAGAT info』2024年12月号表紙

2025年の干支にちなみ白蛇をテーマとした。
白蛇はアオダイショウなどが色素異常で白化した個体(アルビノ)のことを指す。山口県岩国市には古くから白蛇が多数生息し、白化が子孫に受け継がれている希少な例であることから「岩国のシロヘビ」として国の天然記念物に指定されている。
日本の絵画ではたびたび、琵琶に絡み付いた白蛇が描かれている。その由来は、白蛇が弁財天の使いであり、弁財天が持っている楽器が琵琶であることによるとされている。
筆者は爬虫類が苦手ではある。しかし白蛇の顔をよく見ると、目は丸くて赤く、口元は笑っているようにも見えなくもない。そのため、描き上げた白蛇の表情は可愛げのあるものとなった。
制作に当たっては、白蛇と琵琶を色鉛筆で描いてスキャンし、和紙のテクスチャーに色を乗せた画像を背景に合成した。


表紙絵を担当していると、日本文化の歴史や他国との関係などを知ることができ、対象となるものを観察することで思わぬ発見もある。今後もさまざまな題材を通じて、日本の風物の魅力を伝えていきたい。多忙な日々を送る読者の方々が、本を手に取る一瞬にホッと一息ついていただければ幸いである。

(『JAGAT info』制作担当 石島 暁子)

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印刷白書2024

印刷産業の現在とこれからを知るために必携の白書『印刷白書2024』
第1章 Keynote 「共奏」ビジネス 第2章 印刷産業の動向 第3章 印刷トレンド 第4章 関連産業の動向 第5章 印刷産業の経営課題

 

 

発行日:2024年10月31日
ページ数:120ページ 判型:A4判オールカラー
発行:公益社団法人日本印刷技術協会
定価:9,900円(9,000円+税10%) JAGAT会員特別定価:8,300円(7,545円+税10%)

解説

印刷産業のこれからを知るために必携の白書『印刷白書2024』

あらゆる産業を顧客とする印刷産業は、さまざまな産業と密接に関わりを持っています。「印刷白書」では、印刷産業の現状分析から印刷ビジネスの今後まで幅広く取り上げています。

印刷・同関連業界だけでなく広く産業界全体に役立つ年鑑とするために、社会、技術、産業全体、周辺産業というさまざまな観点から、ビジョンを描き込み、今後の印刷メディア産業の方向性を探りました。

印刷業界で唯一の白書として1993年以来毎年発行してきましたが、2024年版ではdrupa、サステナビリティ、事業承継などの項目を追加しました。

印刷関連ならびに情報・メディア産業の経営者、経営企画・戦略、新規事業、営業・マーケティングの方、調査、研究に携わる方、産業・企業支援に携わる方、大学図書館・研究室・公共図書館などの蔵書として、幅広い用途にご利用いただけます。

「第1章 Keynote」では印刷会社の「共奏ビジネス」をテーマに、印刷ビジネスの課題解決に取り組んでいます。「第2章 印刷産業の動向」では印刷産業の現状と課題を俯瞰的に捉え、「第3章 印刷トレンド」では技術課題を整理しました。「第4章 関連産業の動向」ではクライアント産業の動向を探りました。「第5章 印刷産業の経営課題」ではサステナビリティから人材まで印刷産業が取り組むべき課題を整理しました。 印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、UD書体を使った見やすくわかりやすい図版を多数掲載し、他誌には見られないオリジナルの図版も充実させました。

CONTENTS

第1章 Keynote 「共奏」ビジネス 印刷ビジネスは「創注」から「連携」、そして「共奏」へ

第2章 印刷産業の動向 [産業構造]多くの可能性を秘めている印刷テクノロジーの対応力 [産業連関表]あらゆる産業に提供される印刷製品・関連サービス [市場動向]共創による価値創出へのビジネスモデル革新 インフレ時代の利益成長に向けて [上場企業]サステナビリティの実現と企業価値向上を目指す上場印刷企業 *関連資料 産業構造/産業分類・商品分類/規模(1)/規模(2)/規模(3)/産出事業所数(上位品目)/産出事業所数・出荷額/調達先と販売先/産業全体への影響力と感応度/最終需要と生産誘発/印刷物の輸出入額と差引額/印刷製品別輸出入額/印刷物の地域別輸出入額/印刷物の輸出入相手国/経営動向/上場企業/生産金額(製品別)/生産金額(印刷方式別)/売上高前期比・景況DI/設備投資・研究開発/生産能力/紙・プラスチック/印刷インキ/M&A

第3章 印刷トレンド [デザイン]消費者ニーズに応えて進化するデザイン [ワークフロー]印刷に新しい価値を吹き込むオンデマンドサービス [drupa]drupa2024でデジタル印刷の将来は見えたか [後加工]受注単価の値上げに取り組み、第3の市場開拓を模索する製本業界 *関連資料 設備投資の動向/フォーム印刷業界

第4章 関連産業の動向 [出版業界]出版市場の動向と読書バリアフリー [新聞業界]新聞ならではの信頼性を確保しつつ進むデジタルシフト [広告業界]広告費は過去最高の7.3兆円、インターネット広告は3.3兆円に [DM業界]ターゲット精度の向上と顧客データの活用・解析でDM効果の最適化を図る [地域メディア]地域メディアが持つ本質的な効果と事業創出力 派生的効果の包括的評価に向けて [通信販売業界]通販・EC市場売上高は13兆円超えと成長続く 目立つ老舗カタログ通販企業へのM&A *関連資料 出版市場/新聞市場/広告市場/通販市場 [コラム]自分を幸せにしてあげていますか?

第5章 印刷産業の経営課題 [サステナビリティ]ビジネスに直結するサステナビリティ サプライチェーン全体で環境対応を考える [地域活性化]経営資源を活用した地域活性化による企業成長 起業しやすい地域づくりで差をつける [経営管理]人口が減少する成熟社会の企業経営を考える 経営者に求められる「市場創出」のマインド [事業承継]未来を見据えたベンチャー型事業承継の提案 自社の経営資源に後継者の意志を融合する [デジタルマーケティング]デジタルマーケティングはAIマーケティングへ進化、そしてAIインダストリーへ [AI活用]進化が進む生成AIとAI技術 今後の利活用の鍵は各工程における連携 [労務管理]省力化対応の観点から考える新しい労務管理 [人材]経営戦略とともに捉える人的資本の形成 *関連資料 クロスメディア/AI活用/人材

●巻末資料 DTP・デジタル年表/年表

2000年代の広告を振り返る

アドミュージアム東京で開催された「『コレって広告?!』展 ―拡張する21世紀の広告クリエイティブ―」の展示内容を通じて、21世紀に入り急速に変容している広告の役割について考える。

(さらに…)