[DTP]1-4 画像

連続的に濃度が変化する画像や線画などの図版のデータ形式や扱い方などについて理解する。

1-4-1 デジタル化

  • 連続的に濃度が変化する画像をデジタル化する場合、画像を一定の間隔で最小の単位(画素=pixel)に分割し、各画素に対する平均の濃度を求める。これをサンプリング(標本化)という。

  • 各画素あたりの濃度の情報は、本来連続的に変化しているものを、一定数の段階に分けて処理する。これを量子化という。10ビットなら1024段階、8ビットなら256段階で量子化が行われる。

  • dpi(dots per inch)はインチ当たりの出力ドット数で、ラスターイメージを出力する際の密度、解像度を表す。

  • ppi(pixels per inch)はインチ当たりの画素数で、アナログの画像をデジタル化する際の画素のサンプリング密度を表す。

  • lpi(lines per inch)はインチ当たりの網点の密度、スクリーン線数を表す。

1-4-2 ビットマップデータ

  • ビットマップデータとは、ピクセルの集まりで構成されたデータのことで、ソフトウェアによりビットマップを生成し、そのビットイメージをディスプレイや出力装置に送り、画面表示や出力を行う。

デジタルカメラ

  • 写真原稿の入稿はデジタルカメラ撮影によるデータ入稿が主流となっている。

  • デジタルカメラによる撮影では、事前に品質保証や要求品質にどのように応えるかなど、画像の要求仕様を整理しておくことが重要である。

  • デジタルカメラのデータ形式には、各メーカーの画像エンジンを経由して適切に補正・加工され、JPEGやTIFFなどの汎用フォーマットに書き出されたデータと、CCDやCMOSなどの撮像素子のデジタルデータを最小限の加工に留められたRAWデータがある。

  • RAWデータはメーカーや機種ごとに異なっており、互換性はほとんどない。メーカーなどが提供する専用の読み込みソフトウェアなどを使って汎用フォーマットに変換し、表示する必要がある。この変換処理は、「現像」と呼ばれている。

  • フィルムカメラは、レンズから入った映像をフィルムに焼き付け、写真として記録される。デジタルカメラは、光を感知するセンサー(CMOS、CCDなどの撮像素子)がデジタル信号に変換し、記録する仕組みである。

  • ホワイトバランスとは、太陽光や蛍光灯、白熱灯など被写体周囲の光源の色温度に応じて、デジタルカメラのホワイトの基準を補正する機能である。

  • 被写界深度とはピントの合う領域のことで、絞り値・焦点距離・被写体との距離によって変化するため、背景のボケ具合を大きくしたり、全体をシャープな写真にするといった調整ができる。

スキャニングデータ

  • デジタルカメラが普及する以前は、スキャナーを用いて写真原稿などをデジタルデータ化していた。

  • スキャナーで入力する原稿は大きく分けて透過原稿と反射原稿がある。透過原稿の多くはリバーサルフィルムなどであるが、反射原稿はカラーの印画紙をはじめ各種イラスト原画、印刷物、プリンター出力物など多岐にわたる。

解像度

  • 画像システムがどれだけ詳細に画像を再生できるかを表すのが解像度である。解像度が高ければ、再生される画像は細密になる。
    デジタルシステムではピクセルの配置密度と同義に使われる。

  • デジタル画像は必要以上に精細にデータ化すると、作業効率が落ち、逆に出力に対して粗い設定になると、品質が著しく損なわれる。そのため一般に出力に必要な大きさや解像度から逆算してスキャニングする。カラー原稿をスキャニングする際に、仕上りの画像で、解像度が300~350dpiあることが望まれる。

画像解像度変更と再サンプル

  • Photoshopで画像解像度を変更する際、画像を構成するピクセルを増やしたり減らしたりする再サンプルを伴う方法がある。近年ではAI技術を利用したピクセル補間も実用化されている。

画像フォーマット

  • 濃度変化のある原稿をデータ化するには、濃度レベルの段階数とその表現方法、記録する方向、画像の大きさその他の形式を決定しておく。

  • 画像データをファイルに書き出す場合には、画像データの形式とファイルフォーマットを選定する。

  • 近年、よく使われる画像フォーマットとして、汎用性の高いTIFF、不可逆圧縮のJPEGなどがあり、多くのアプリケーションで対応されている。

  • Adobeアプリケーションの環境では、ネイティブ形式のIllustratorのAIファイル、PhotoshopのPSDファイルが多用されている。

1-4-3 レタッチ

  • 画像の調子や色調、ゴミやキズなど不要物の除去などを部分的に修正することをレタッチという。スキャナーで画像をデータ化するときに失われた情報やデジタルカメラで再現領域の狭い撮影モードで撮影して失われた領域外の情報は、後のレタッチでは回復できない。しかし、豊富に情報をもった画像データに対しては、色変更、シャープネス、ボケ、合成などの加工ができる。写真に対する基本的な調子や色調の修正と、絵柄ごとに常識的な色演出の方法があることを理解しておく。

  • よく見受けられる代表的な絵柄については、それらしい色や調子として認知されている記憶色(あるいはプリーズカラー)を意識してレタッチする。
    – トーンカーブ:画像のどの濃度域に階調を豊富にもたせるか、どの濃度域を圧縮するかなどの調整をする。
    – 濃度ヒストグラム:濃度域の最小から最大を軸として、サンプリングされた画素の数を棒グラフ上に示した濃度ヒストグラムを用い、画像タイプを把握し、レベル補正やハイライトポイント、シャドーポイントなどを調整する。
    – フィルター処理:画像データを構成する個々の画素に、周辺の画素との間で演算を行って、画像にぼかしやシャープネスなどの特殊効果を与える。
    – 合成:写真類や色面などを隣り合わせに配置するとき、境目がないようにぴったりくっつけてレイアウトすることを指す。

1-4-4 写真の切り抜き

切り抜き

  • 写真画像の背景から人物や建物、物品などの形状に沿って切り取ることを、切り抜きという。切り抜いた画像は他の背景画像と合成されることが多いが、切り抜いた状態でレイアウトされることもある。

  • Photoshopなどの画像編集ソフトには、切り抜きのためにクリッピングパスを作成する方法や、自動で選択範囲のマスクを作成する機能がある。

1-4-5 ベクターデータ

  • ベクターデータとは、点の座標と直線・曲線を定義する式から構成される画像データで、線や面の輪郭が明確な図形・イラストなどで使われている。データを展開するたびに数値データを再計算するため、拡大・縮小・変形をしても、画質が損なわれない。
    例えば、Illustratorはベクターデータを基本とするアプリケーションである。また、デジタルフォントは、ベクターデータで記述されていることが多い。

スプライン曲線

  • スプライン曲線とは、指定した点をスプライン(自在定規の意味)関数を使って滑らかな曲線で結んで曲線を表現する。作図で用いられるものは、主に二次あるいは三次のスプライン曲線である。二次と三次は制御点を通らず、避けるようにして曲線を作り出すのを特徴とする。

  • ベジェ曲線ほど操作の自由度は高くないが、すべての点が曲線上に位置するため、ベジェ曲線よりはコンピューターの演算処理が簡単になる。

ベジェ曲線

  • 三次ベジェ曲線では、始点と終点およびその間に2つの制御点を指定する。制御点は曲線の外側にあり、これを移動させることにより曲線を変化させられる。任意の自由曲線が制御点の移動で描け、また一度描かれた曲線の変更が容易であるのが特徴である。

  • PostScriptやPDFでは、文字や図形を直線と三次ベジェ曲線で表すことを基本としている。

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