[印刷技術]3-1 概要

3-1-1 印刷技術の起源

  • 印刷は情報を伝達するための重要な手段のひとつである。太古、人類は言葉や身振り手振りでお互いの意思を伝達していた。音声という聴覚だけに頼っていたコミュニケーションでは、交わされると同時に消えてしまうが、文字を発明することによって時間と距離の克服を果たし、より正確に意思を伝達できるようになった。

  • 文字を記しておく「物」を媒体(メディア)という。石や粘土、羊皮紙、パピルスなどを経て、中国で105年に蔡倫により樹皮、麻くずなどの植物繊維を原料にして紙が発明された。

  • 書写は大勢の人に情報を伝達することに適さないため、複製手段が求められた。中国では、唐の時代に木版印刷が始まったと言われている。現存する当時の印刷物としては868年に作られた「金剛般若波羅蜜経」がある。

  • 日本には奈良時代に製紙技術とともに伝来したと言われ、奈良・法隆寺には現存する最古の印刷物とされている「百万塔陀羅尼経」が残されている。

  • 中国で生まれた製紙法と木版印刷がヨーロッパに伝わり印刷が行われるようになったのは14世紀末と言われる。そしてドイツ人のグーテンベルクが現在の印刷術の基礎といえる活版印刷術を完成させた。彼の発明した活字は鉛を主原料とした合金で鋳造しやすく精度が高い上に再利用もでき、量産を可能とした。彼が印刷した「42行聖書」は世界最古の活字本として残されている。

  • 日本においては明治に入り本木昌造が和文の活字鋳造を行い、1870年(明治3年)創刊の「横浜毎日新聞」が印刷されている。

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