[印刷技術]3-8 特殊印刷

出版印刷や商業印刷など紙を対象にした印刷を一般印刷という。それに対して、プラスチック、金属、ガラス、布などへの印刷は特殊印刷と呼ばれる。また、紙への印刷であっても特殊な機能や効果を持ったインキを用いたり、特殊な印刷方法、加工方法によるものも特殊印刷と呼ばれる。後者は販売促進用のノベルティや商業印刷分野の宣伝広告媒体に用いることで、より消費者の関心を集め、印刷物の効果を上げることができる。

ここでは、コミュニケーション効果を高めるための特殊印刷を中心に取り上げる。

3-8-1 スクラッチ印刷

  • スクラッチ印刷は、印刷面の上に銀色などの特殊インキを印刷するもの。コインや爪などで擦り取ると隠された部分が現れる。

  • セロハンテープオフ印刷はスクラッチ印刷同様、銀インキの隠ぺい性を活かした特殊印刷である。セロハンテープなどの粘着性を利用して表面のインキを剥がし、隠された部分の絵柄を見る。

3-8-2 蓄光・発光・蛍光印刷

  • 蓄光印刷は、光のエネルギーを蓄える性質を持つ顔料を練り込んだインキで印刷するもの。明るいときに吸収・蓄積した光のエネルギーを暗がりになったときに少しずつ光を出し続ける。なお、蓄光性を持つ物質が暗所で発光する際の光を「燐光」という。この発光の明るさを燐光輝度(単位:cd/m2)で示す。

  • 発光とは、光を発すること。熱放射(黒体放射)(恒星、炎、白熱灯などの光)、ルミネセンス(冷光)、荷電粒子線の制動放射による発光、チェレンコフ光などがある。化学反応によって励起状態をつくり、それが基底状態に遷移するときに発光する。これを化学発光と呼ぶ。

  • 生物発光とは、生物が光を生成し放射する現象である。化学的エネルギーを光エネルギーに変換する化学反応の結果として発生する。

  • 蛍光(英:fluorescence)とは、発光現象の分類。最も広義には、ルミネセンスによる光(発光)全般を指す場合もあるが、一般的には、ルミネセンスのうち、電子の励起源が可視光より短波長の電磁波による発光を指す(フォトルミネセンス)。紛らわしいが、蛍(ホタル)の発光は化学反応(ケミルミネセンス)であり、蛍光(フォトルミネセンス)とはメカニズムが異なる。

  • 実際の発光・蛍光印刷の例は、多色のHexachromeやステレオ印刷で、彩度を上げるために蛍光剤を混ぜたオレンジやレッドインキが使用されているのが一般的である。同じく特色に蛍光剤を混ぜたインキも一般的である。

  • ブラックライトで発光するRGBインキを使用した印刷物もある。例えば白いウエディングドレスの写真にブラックライトを当て、赤く変化させることが出来る。

  • カラーマネジメント技術が発達したおかげで比較的簡単にRGB印刷も可能になったといえる。しかし黒に見えるところは何もインキの載っていない部分で紙の白地が黒に見えるようになっているので、紙の上の加算混合ということが出来る。

3-8-3 凹凸

  • 特殊なスクリーン印刷をすることで、一見腐蝕されているかのように見せる擬似エッチングや熱によって膨らむパウダーを印刷面に付着させ立体効果を出す隆起印刷(バーコ)、表面にちぢみ模様の凹凸を発生させるちぢみ印刷などがある。

3-8-4 立体

  • 立体印刷は平面上で絵柄が浮かび上がって見えたり奥行き感を出す等、視覚的に立体感を得られる印刷であり、ホログラムやステレオグラム、2枚写真法、レンチキュラープリント等さまざまな手法がある。

  • 3Dホログラムとは、平面画像と立体画像をまぜ、角度を変えると虹色に変化するレインボータイプのホログラムで、平面上の画像と立体感を感じさせるバックの画像を組み合わせたものである。転写箔とステッカーの2種類のタイプがある。偽造防止用としてクレジットカードやコンサートなどの入場券に使われているほか、ポスターやカレンダーのデザインの一部としても使われている。

  • レンチキュラープリントとは、微細なカマボコ形のプラスチックレンズを絵柄に貼り合わせて、立体像を見る方法である。断面がカマボコ形になっているレンズのことをレンチキュールと呼び、それが均等なピッチで複数並んだものをレンチキュラーレンズという。レンズの厚みや1インチあたりのカマボコ形の本数などは何種類もあり用途ごとに厚みやレンズの線数も使い分けられている。CDやDVDのジャケット・マウスパッド・ステッカー・トレーディングカード等に使われている。

  • 2色立体印刷は、絵柄を赤、青(藍)の2色で印刷し、赤と青のフィルターのメガネを通して見ると絵柄が立体に見える。絵本、地図などの用途がある。

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