RoHS指令が印刷業界に与えた影響は?

掲載日:2014年8月11日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:環境問題

Q:RoHS指令が印刷業界に与えた影響は?

A:RoHS指令とはコンピュータや通信機器、家電製品等で有害な化学物質の使用を禁止する指令です。RoHSは「Restriction of the use of the certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment(電気電子機器の特定有害物質使用規制)」の略です。2003年2月13日に欧州連合(EU)15カ国で発効し、2006年7月にEU加盟国(2004年7月時点では25カ国)で施行されています。地球環境破壊や人の健康に害を及ぼす危険を最小化することを目的とし対象となる有害化学物質は、鉛・六価クロム・水銀・カドミウム・、PBB(ポリ臭化ビフェニール)とPBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル)という2種類の臭素系難燃剤の計6物質です。 

これは電子機器に重金属を全く含まないものしか製造または輸入できないということです。日本の電気メーカー(以下S社)が製品を輸出したところカドニウムが検出されて全部返品された事件があり、それ以降各関連メーカーがこの対策をとるようになりました。  S社は製品を作るためにいろいろな部材を調達していますので、すべての調達メーカーに今後納めるものには重金属が全く入っていないものを納め、かつ入っていないという証明を出しなさいという通達を出した。そこで例えばケーブルメーカーも自社ですべて制作しているわけではありません。ケーブルにはビニールと銅線を使っているため、ビニールメーカーと銅線メーカーにも同じような指令を出します。ビニールメーカーも銅線メーカーも製品を作るにあたりいろいろな部材を調達していますからその先に同じような通達を出します。そうするともともとは欧州の規制で電子機器が対象でしたが、この通達により全部の分野に広まることになります。 
   印刷物は対象ではないのですが、製品の中にも取り扱い説明書がありますのでそこを印刷している会社にも同じような通達が来きました。こうしたことが広まっていくと、結局うちの印刷物にも有害物質は含んでいない旨をいえないと仕事がこないことになります。

印刷に限らずこのような通達に応じるには化学物質管理が重要であり、そのための法律としてPRTR法 (Pollutant Release and Transfer Register:化学物質排出移動量届出制度)があります。日本国内では化学物質がどれくらい輸入されてどれくらい排出され輸出されているかが全く把握されていなかった。それを日本でも始めようということで平成11年7月に公布されました。
 これには第1種指定化学物質354種と第2種指定化学物質の81種の物質が指定されています。この規制は、従業員が21人以上で第1種指定化学物質の年間取扱量が年間1トン以上取り扱うところが指定物質をどれくらい買って廃棄しているか、あるいは製品に回しているかを行政機関に報告しなければなりません。1トン以上使っている印刷会社は殆ど無いため印刷会社は規制されていません。ただこういうことをやっていかないと通達条件に適応できないため、印刷会社でもやっていく必要があります。

印刷インキ工業連合会では安全のために1973年に食品用の包装材料用に使う印刷インキに関して自主規制・ネガティブリスト(以下NL規制)を制定しました。その後バージョンアップをして2002年11月26日には環境マーク(NLマーク)が作られました。2006年5月には欧州のRoHS指令の該当する化学物質も含めて大幅に改善しました。
 2002年の11月26日にマークを制定するにあたっては食品包装だけではなく、印刷インキすべてにNL規制を考慮して製造していこうということになっています。したがってインキメーカーもすべての規制の物質を排除してインキの生産を行っております。各インキメーカーのラベルには殆どNLマークがついています。

 

(2007年5月21日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)