合成紙への印刷の留意点は

掲載日:2014年8月11日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:オフセット印刷

Q:合成紙への印刷の留意点は

A:街中に様々なポスターが貼られているのを目にします。これらのポスターの多くは上質紙・コート紙・アート紙等に印刷されていることが多く、雨風に晒されると用紙がゆがんでヨレヨレになったり色が落ちたりします。しかし、ポスターの中には用途により、雨風に晒されても形態が崩れてはならない印刷物もあります。選挙用のポスター等がその代表的な例です。 
  では、屋外に貼られている選挙用ポスター等はどうやって印刷されているのでしょうか。通常の印刷物と違うのは、用紙であり合成紙が使用されているという点です。

 【合成紙】
  合成紙とは、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニール等を原料として造られたもので、強度・耐水性・寸法安定性に優れその特性を生かした用途に使用されます。
  通常の印刷用紙は、インキが用紙の繊維の間に浸透することによって乾燥を促進しています。しかし、合成紙は天然のパルプ紙とは違い毛細管や空隙がないためインキの浸透機構をもちません。
  また表面平滑度が大きいためインキの裏移りやブロッキングが発生しやすくなります。そういう状態で印刷後早く乾燥させるためのインキが合成紙インキです。

 【合成紙専用インキ】
  合成紙インキとは、プラスチックフィルム・アルム箔等インキが浸透しない素材へオフセット印刷する時のインキで、乾燥性・接着性・皮膜強度などを考慮したビヒルクを使用した高固形分の酸化重合乾燥型インキです。このインキのビヒクルとしてロジン変性フェノール樹脂、乾性油、および少量の高沸点溶剤を使用しています。
  ロジン変性フェノール樹脂は光沢のある丈夫な皮膜を形成し耐摩擦性、耐薬品性に優れておりクイックセットインキ、ヒートセットインキに使用されています。
  また合成紙インキは無溶剤インキといって石油系の溶剤が入っていません。合成紙自身が石油系のため印刷すると、分子給合といってインキの石油系溶剤と合成紙のそれとが結合して紙が膨れてしまいます。

 【印刷】
  合成紙紙の場合、印刷機は多色機を使用する場合が多く、トラッピング不良を起こす可能性が大きいです。トラッピング不良とは先刷りのインキが後刷りのインキをうまく捕まえられない状態をいいます。原因としては、先刷りインキに比べ後刷りインキのタック値が大きかったり、先刷りインキの盛り過ぎがあります。
  これには、先刷りインキにタック低いインキを選んだり、濃度の管理をしっかり行い先刷りインキの盛りを薄くしておくことが必要です。
  また、合成紙はインキを全く吸収しないため、他の上質紙、塗工紙に比べるとドットゲインが大きくなります。このため、プリプレスの出力データは合成紙への印刷と他の上質紙、塗工紙とでは多少違ってくることになります。合成紙へ印刷するときの連続階調の網点は他の上質紙、塗工紙に比べ小さいほうがいいでしょう。
  また、インキにはドライヤが普通のインキの2~4倍、裏ズキ防止剤が2~3%はいっています。乾燥時間も単色で約8時間、多色になると12時間以上かかります。
  合成紙用のデータをDDCP又は校正用カラー出力機でそのまま出力すると色が合いにくくなりますので注意が必要です。合成紙の校正はなかなか作成しにくいので、本機校正の会社もあります。 

 

(2003年9月1日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)