ワンソースマルチユースによる新たな事業展開への取り組み

掲載日:2014年8月25日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ユーザレポート:ワンソースマルチユースによる新たな事業展開への取り組み

 

株式会社精興社

 電子情報システム課 マネージャー 
 木村 素行 様

  株式会社精興社は本社・工場を青梅市に、事業所を神保町に構え、大正2年の創業以来、活版印刷を経て、現在はDTP・CTSによる組版システムとオフセット印刷で、時代とともに変化を遂げている印刷会社です。コンテンツをワンソースマルチユース化する仕組みを作ることで新たな事業展開につなげることをテーマに「プロジェクトS」を発足し、2005年9月にサーバを導入。今までの手書き台帳での管理方法から、デジタルデータ管理への移行の経緯や、今後の展開について、同社マネージャー・木村素行様にお話を伺いました。システム構成は、サーバ本体にSUNV240、RAIDにEMC-RAID、バック・アップアーカイブ機器にSONY AIT4 チェンジャー16巻を2台。ソフトウェアはWebNativeVenture、FullPress 10クライアント、FlashNet、FlashWebがインストールされています。

  ■「プロジェクトS」が発足

 「プロジェクトS」はワンソースマルチユースによる新たな事業展開への取り組みとしてスタートしました。歴史の長い会社なので、沢山の在版データがあり、重版や再版の間隔も長く、その間にも様々な新刊データが生まれています。従って、それぞれを組版システム毎に管理して来ましたが、お客様に対して何をお預かりしているのかを把握していても、いざ探すとなると時間がかかってしまい、データ管理システムによる標準化・体系化が必要と思っていました。さらには、印刷物のコンテンツデータ管理をすることで、クロスメディア展開できるようにしたいという思いがありました。導入する前に調査した時点では、保管データの点数は1万6000点以上。年間でも約2000点ずつ増えて行きます。重版、再版で上書きされる物もありますし、フィルムでの在版も含むと相当な点数になります。将来的には、古くなってしまったフィルムを、そのまま画像としてInDesignに貼り込み、順次デジタルデータとして保管しようと思っています。

  ■導入の流れ
 お預かりしているデータをお客様にも検索をして頂きたかったのです。印刷業界では、置版としてお預かりしている版は、貴重な財産をお預かりしているにも関わらず、普通は預り証も無く、もっぱら信頼関係だけで成り立っています。DTSによる顧客への閲覧サービスによって「確かにお預かりしています」という一つの証しとして、預金通帳の照会のような感覚で、利用をして頂きたかったのです。これをふまえて、まずは検索機能やセキュリティの課題をしっかりクリアしたいですね。お預かりしているデータが入ったテープの複製を、バックアップとして遠隔地の青梅本社工場へ保管もしています。きちんと管理し、そこから今後の展開をご提案することにもなるでしょう。

  ■VPJのシステムに決めたポイント
 当社受注の1/3は人文系の学術書、1/3が出版多色物という絵本などのビジュアルもの、1/3が商業印刷で成り立っており、この主力の3分野に対して使えるということが条件でした。保管点数では、文字物が多いのですが、他の用途にも展開が出来ると思いました。データ保管するだけのシステムは、他社製品でもあります。欲張りですが、もうちょっと発展できるプラットホームが欲しかったんです。VPJ製品は汎用性があり、ユーザ側でカスタマイズできるということが、当社として選択のポイントになりました。在版アーカイバというと、どうしても専用機的な考え方をしてしまいがちですが、クロスメディアやデータベースとしての発展につなげたかったのです。WebNativeでDTPデータがファイル名だけじゃなく、ビジュアルで閲覧できる、さらにはPDFでも確認できるというのも便利でした。今まではCTSで組んできたのですが、それをお客様にご理解頂き、古いやり方から切り替えて、今後は全面的にWindowsのInDesignに切り替えていこう、と取り組んでいます。またカスタマイズし、今まで蓄積した写研のデータも入れて行こうとしています。DTPになるとデータ容量が大きくなるのは必至なので、これからの増設、拡張性、カスタマイズに関して強いというのも大きなポイントだと思っています。

  ■時間面での変化は?

  受け渡しの時間がかからなくなりました。今までの「媒体で渡す」という感覚ですと、作業が媒体単位で工場を動いていました。今ではオンライン上でのデータ受渡しを工場、営業、生産管理が行っています。「営業が入稿して来たデータをそのままサーバに突っ込んで、作業が進んで行く」という流れが予想外に上手く進んでいます。絵本などのInDesign、カラー系は、ワークフロー(FullPress)の領域を使っています。Webで接続してダウンロードしてアップロードしてとなると思っていましたが、マウントしたままどんどん制作上で使っています。

  ■導入後の社内での流れは?

  当社では、「スカラボ(Seikosha Contents Aggregator LABoratory)」と名付けてカスタマイズし、社内で頻繁に使っています。「最初にパスワードを入れてから」と教育はしましたが、結局使わないのではないか、という不安もありました。しかし簡単に使えたので、普及に時間はかかりませんでした。慣れてしまえば、いろいろと使い道が出て来ますね。現在100個のIDパスワードを設定し、見るだけの人も含め、アクセスグループを細かく分けて使っています。またお客様とやり取りするのは、セキュリティを社内できっちり立ち上げてからです。不特定多数とやり取りするのではなく、お客様編集部、編集プロダクション、デザイナー、当社と当社工場の間でのやり取りを1つのサーバでやるという流れを想定しています。印刷会社のWebでよくあるような「データ入稿の際にはここに入れて下さい」というのではなくて、仕事単位で一つひとつ領域を分けていこうと考えています。

  ■今後の展開

  5月以降から、開始したいと思っているクロスメディア展開の一つは24ページの月刊物のフリーペーパーです。印刷物のデータから、Webでも情報配信して行くというものです。データ入稿から校了までを24時間で終わらせ3日後に納品し、その後データをMOでWeb制作に持っていかなければならない仕事です。WebNativeを使うことで、この流れを大幅に改善して行けるだろうと期待をしています。 (木村氏)

・このソリューションレポートは,ビジュアル・プロセッシング・ジャパンが発行する
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■関連情報
 株式会社精興社 【神田事業所】
  〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-9
 TEL 03-3293-3012
 URL http://www.seikosha-p.co.jp/
 【本社・青梅工場】 〒198-0004 東京都青梅市根ヶ布1-385

株式会社 ビジュアル・プロセッシング・ジャパン
 印刷・出版システム事業部
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『プリンターズサークル』2006年6月号より

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(2006年7月)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)