新サービス開発と事業再構築補助金の概要

掲載日:2021年5月25日

ウイズ&ポストコロナを見据えて、印刷会社も新たな収益の柱を築く必要がある。今回は、新規事業開発に活用できる、事業再構築補助金の概要についてポイントを交えながら紹介する。

新規事業サービスの根幹である設備やシステム、販路開拓のためのマーケティング等に投資する資金はどうしても必要になります。しかし、コロナの影響により財務に余裕がない企業も多く、資金を捻出することができず断念せざるを得えないケースもあります。そうした場合、金融機関からの融資を得ることが一般的ではありますが、助成金や補助金をうまく活用することで、経営リスクを抑えて新規事業へ挑戦する機会も増えています。新規事業開発に適した補助金として最近話題になっているのが、経済産業省管轄の「事業再構築補助金」です。

■事業再構築補助金とは
経済産業省が実施する、総予算1兆1485億円、1社最大1億円の大型補助金事業です。本補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待し難い中、新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とします。年間を通して5回公募する予定で、全体で67,000社の採択を目標としています。第1回の公募は終了し、5月20日から第2回の公募が開始され申請受付は5月26日から開始される予定です。

補助額は応募する枠に応じて、金額に違いがありますが、JAGAT会員企業の多くが該当し利用する可能性の高い申請枠に絞って紹介します。

■過去最大級の補助額で大型投資に対応

【補助金額】

申請枠

従業員数

補助額

補助率

通常枠

 

100万円~6,000万円

2/3

緊急事態宣言特別枠

5人以下

100万円~ 500万円

3/4

6~20人

100万円~1,000万円

3/4

21人以上

100万円~1,500万円

3/4

通常枠は最大の補助額が多く、印刷機械設備投資等の大型投資を検討している企業はこの申請枠を使うケースが多いです。一方、コロナの影響により会社の売り上げが30%以上減少し事業再構築の緊急性が高く、1,500万円以下の投資を検討している場合は、緊急事態宣言特別枠で申請する方が、補助率が3/4と高く自己負担分を軽減できます。

■コロナで影響を受け打開策として新事業を検討している企業が対象

【補助対象要件】
対象企業は中小企業者等全般ですが、申請要件としては以下の3つがあります。

1) 売上が減っている(10%以上減少)
2) 事業再構築に取り組む(新規性が重要)
3) 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する(付加価値額年率3.0%以上の目標)

要点を絞って説明すると、コロナの影響で売り上げが10%以上減少していて、その打開策として新規事業を立ち上げて、3~5年程度で業績改善を目指す意思のある企業が対象です。

その申請をするためには、新規事業計画書を策定する必要があり、「認定経営革新等支援機関」 の承認が必要になります(※申請する補助金額が3000万円を超える場合は、金融機関も参画して事業計画を策定)。
その事業計画の達成目標として補助事業終了後3~5年以内に、付加価値額の年率平均3.0%以上増加(又は、従業員一人当たりの付加価値額)が求められます。

付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費

要するに、経済産業省のスタンスとしては、補助事業に取り組む中小企業が、新規事業を行うにあたり、設備投資をするのでその分の減価償却費が増加するのは当然ですが、新事業の結果、売り上げ増加による営業利益が増え、それを原資に既存社員の処遇改善や新たな雇用を創出してもらえれば良いですということです。新規事業が3~5年以内にうまく軌道にのれば3.0%以上は必然的に達成できますし、それが達成できない事業計画ではそもそもその事業を行わない方が賢明です。

■「建物費」「研修費」「広告宣伝費・販売促進費」も経費対象

【対象経費区分一覧】

建物費

機械装置・システム構築費

技術導入費

専門家経費

運搬費

クラウドサービス利用費

外注費

知的財産権当関連経費

広告宣伝・販売促進費

研修費

海外旅費

 

事業再構築補助金は補助額が高いことは勿論、「建物費」「研修費」「広告宣伝費・販売促進費」が経費対象になっているのが特長です。印刷業の場合は、印刷機械設備を配置するための生産、加工施設の増設も必要になり、これらが対象になるのは大きなポイントです。たとえば、DM(ダイレクトメール)印刷市場に参入する計画の場合、印刷機の導入に加えて個人情報を管理するセキュリティルームの増設も必要です。このような付随施設も補助の対象になる可能性があるのが特長です。
また、特徴的なのが広告宣伝費・販売促進費が対象になっていることです。販路を拡大するための展示会の出展料や、そこで配布するカタログ等の印刷物、サービス認知度を高めるための、動画、Web等のデジタルメディアの制作費用と多岐に渡ります。今まで資金的にできなかったプロモーションも利用できる機会が増えているので活用することが望まれます。

今回は、事業再構築補助金の概要についてポイントを絞って紹介した。次回は、新規事業開発に必要な事業計画の考え方について紹介したいと思います。

CS部 塚本直樹

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