【マスター郡司のキーワード解説2021】ICCプロファイル(Japan Color 2011)

掲載日:2021年6月28日

以前にも解説したICCプロファイルについて再確認しておきたい。
5月18日にJAGAT印刷総合研究会で「基本から理解するカラーマネージメント」を開催したのだが、キッカケになったのは、あるデザイン雑誌のカラマネの記事だったのだ。デザイナーの人に興味を持ってもらう目的なので、印刷職人(デザイナーは職人の意見が好き)の方に取材して、少々誇張して書いている節が見受けられる(ワタシテキには、編集担当者もよく知っている人なので誤解はないし、職人さんの指向や言いたいことも理解できる)。その記事中に「Japan Color 2011の方がJapan Color 2001より再現色域が大きい」という記述があり、これは少々コメントしておかねばと思った次第である。何年かおきには基本的なコトも再確認しておかないと迷信が横行してしまうという危機感から、研究会セミナーを開催したのだ。

研究会ではかなりハッキリとコメントしたのだが、文章に残るとなるとこちらも一人歩きしてしまうので、今回はサラッとだけ書いておこう。ICCプロファイルは印刷に関係した全てのパラメーターを押し込めるので、肌モノチューニングやキレイ目チューニングなど、ICCプロファイルの本来の目的ではない使用方法も可能なのだが、それは極力やめるべきだとだけ、あえてここで言っておきたい。そういった目的以外でも、アドビが製作したJapan Color 2001プロファイルの出来が非常に良かったため、印刷通販を中心にこれが一挙に普及したのである。

最新のバージョンはJapan Color 2011だが、ここに至るまでは紆余曲折があった。Japan Colorというと印刷条件が云々と言われるが、その印刷条件以上にプロファイルの出来不出来(品質)がある。2001は奇跡的に良い出来だった。考えてみれば、プロファイルによって印刷標準規格が普及したと、逆説的に言えなくもないのだ。

ある色にこだわって、例えば「オレの見た空の色はこんなブルーじゃない」と無理やり調整していくとブルーの階調自体が破綻してしまうし、鮮やかなグリーンにこだわるとガク(花の付け根の部分)の階調が反転してしまう。従って、ICCプロファイルはさまざまなことを考慮して作り込まなくてはいけない代物なのである。そこはさすがアドビで、Japan Color 2001プロファイルは相当作り込まれている。2011までの途中にいくつかトライされたプロファイルは、一部の意見に引っ張られてバランスが崩れてしまったので、2001ベースに戻したのがJapan Color 2011プロファイルだ。もちろんCTP環境でデータを測定しているので、これを使っていけば問題ない。
 
MacのColorSyncユーティリティを使ってICCプロファイルの中身を確認すると、プロファイル作成者(社)は2001がアドビ(図1)で、カラマネ普及のために同社が最初に用意したプロファイルだが、「おまけ」とはいえない高品質であった。

https://www.jagat.or.jp/wp-content/uploads/2021/06/e18ea6f9cd1e9d9afb6450ce4dc0be5c.png

          図1 Japan Color 2001のプロファイル作成者(社)



2011はX-Rite社(図2)に作成が依頼されたということである。

 

          図2 Japan Color 2011のプロファイル作成者(社)


前述の再現色域は図3が2001で、図4が2011である。

   図3 Japan Color 2001の再現色域

   図4 Japan Color 2011の再現色域

ダブルクリックしただけなので厳密ではないが、これを見せられて「2001の出来が良いので再現色域が広い」などと説明したら、信じてしまう人だっているだろう。ほとんど差はないというのが、正しい判断である(重箱の角的にはいろいろあるが)。

(専務理事 郡司 秀明)