生活者のデジタルシフトに対応するDM

掲載日:2021年11月16日

10月26日に実施した印刷総合研究会「実践!デジタル×紙×マーケティング」では、コロナ禍でのDMへの影響やパーソナライズ化や デジタルマーケティングとの連携 が進むDMの現状についてトッパン・フォームズ(株)の今井尋氏にお話しを伺った。

コロナ禍で生活者の購買行動は大きくデジタルにシフトした。顧客(印刷発注者)のマーケティング施策も影響を受け、大きく減少した商業印刷物もある。コロナ禍においてDMはどのような影響を受けたのだろうか?

トッパン・フォームズの今井氏によると、紙のDMは比較的影響が少なかったという。同社が毎年、実施している首都圏のモニターを使った世帯ごとのDM取得数調査によると、2020年のDM取得数は、緊急事態宣言下の5月に激減したもののその後回復し、結果として前年(2019年)の平均通数よりも増加している。ただし、コロナ禍前後でDMを送っている業種は変化しており、小売りやサービスは減少し、教育・出版系が増加している(図)。

紙のDMへの影響が少なかった理由として以下の3つが挙げられる。

  1. 非対面でかつ生活者にダイレクトに伝達できる手段
  2. 商談機会の創出など、対面手段の代替として活用が広がった
  3. 在宅により“おうち時間”が増え、DMを見る機会ができ、また趣味や健康志向といった需要が生まれた。

また、パーソナライズDMの増加傾向がみられるという。これまでパーソナルDMが進まない理由は大きく3つあったが解消されつつある。

  1. 費用対効果の問題
    • 昨今のデジタルマーケティングの普及により、デジタル媒体で費用をそれほどかけずにパーソナライズのテストをすることが可能となったためパーソナライズの効果についての理解が進んでいる。
  2. 生活者の個人情報に対する意識
    • こちらもデジタルマーケティングの普及により、生活者が個人情報の対価として、便利なサービスや情報を得ることが一般化しており、当社が実施したパーソナルDMに対する意識調査では、「特になんとも思わない」が急激に増えており、抵抗感がなくなりつつある。
  3. 企業側の体制が整っていない
    • 米国の4年前の調査データでは、パーソナルDMを利用しない理由として、「技術を持ち合わせていない」「余裕・リソースがない」「必要なデータがない」の3項目が上位にきていて、企業側の準備が整っていないことが最大のネックとなっていた。パーソナルDMの必要性を認めつつも実現は容易ではないことが窺えるとともに、これらの課題を解決することでビジネスチャンスが広がるとも言える。

そして、デジタルマーケティングの進展によって重視されている要素がタイミングである。生活者が必要とする情報を欲しい時(気分)にあわせて提供することが求められている。パーソナライズというと従来はコンテンツに限定されていたが、今は、欲しい媒体(デジタル or紙)やタイミングも含めたパーソナライズの対応が必要である。
こうしたニーズへの解決策が「CloudDM(クラウドDM)」であり、お客様が利用しているMAやSFAなどのシステムとのダイレクト連携、即時発送、パーソナル化という大きく3つの特長がある。

CloudDM/クラウドDM』とは

CloudDMの詳細については、上記のリンクを参照していただきたい。いずれにしても生活者のデジタルシフトはかえって紙のDMの可能性を拡げつつある。デジタルマーケティングと連携し、よりきめの細かい対応をすることでより効果的なメディアとなることができると言えそうだ。

JAGAT大会2021では、基調講演にアメリカのダイレクトマーケティングの大家、ロン・ジェイコブス氏を招き、「DMはネクストノーマルに向けてどのように進化してきたか」アメリカの最新トレンドをお聞きする。

11月25日開催 JAGAT大会2021

(研究調査部 花房 賢)