『印刷白書2022』発刊のご挨拶

掲載日:2022年10月21日

2022年10月21日発刊の『印刷白書2022』について、会長塚田司郎よりご挨拶させていただきます。

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コロナ禍での生活も2年間が過ぎ、今年は3年目となりました。年初の感染拡大も一段落して春になると、経済活動も徐々に戻ってきてアフターコロナの世界を考えた企業も多かったと思います。しかし、夏からは再び変異株が猛威をふるい、それも9月になってようやく収まってきましたが、一方で後遺症に悩まされる人も多くなっている状況です。

2月にはロシアがウクライナに侵攻し、世界中を震撼させました。コロナ禍にありながらも回復基調であった世界経済ですが、各国がロシアに対して制裁を課した影響で原油の高騰を招きインフレ圧力が高まりました。

アメリカ経済は個人消費が回復し、旺盛な労働需要を背景に人材確保のための賃上げの動きが顕著であり、FRBはハイテンポで政策金利を上げています。一方、日銀はゼロ金利政策を継続しているため、金利差により急速な円安となり輸入価格が上昇、食料品や日用品の相次ぐ値上げが家計を圧迫しています。

こうした状況下、企業にとって目下の課題は戦争と円安によるエネルギー価格の急激な上昇です。わが国の経常収支の黒字幅は減少を続け、東京では東京電力が8月に決定した燃料費調整額により、10月からの電気料金が大幅に上昇して企業の活動にかなりの影響を与えることになりそうです。

日本印刷産業連合会は9月14日の日本経済新聞に広告を打ち、高付加価値コミュニケーション産業へと業態を転換させるべく、新たな取り組みにチャレンジしていることにも触れながら、需要家に対しエネルギーや原材料の価格高騰の現状と価格転嫁への理解を求めました。プレーヤーの多い印刷業界においては、積極的に業態を転換させる努力をしている企業も多くある一方で、残念ながらそうでない企業もあって、後者の場合は変化し続ける現代社会のニーズに適合できずにやがて業界周辺の限界的存在となって融資も滞ることが予想されます。今後は業界の再編がさらに進むのかもしれません。

SDGsの観点から現代の自動車を見ると、CO2排出抑制のためハイブリッドカーやEVが増えて、またドライバーの負担を軽減し事故を防ぐためにも自動運転の機能が導入されています。印刷機もこれに似ていて自動運転すればオペレーターの負担が軽減され、高齢者や女性でも扱いやすくなり、小ロット化している印刷物には、何万枚もの耐刷力のあるPS版を使用するオフセット印刷ではなく、デジタル印刷機で生産できれば資源効率が高まることになります。今年のIGASではそのような現実的なインクジェット機が見られるでしょうか。

VUCAの時代と呼ばれる現代の経営には他にもさまざまな課題があります。今年もこの白書が企業の皆様にとって何らかのお役に立つようにと願っております。

2022年10月
公益社団法人日本印刷技術協会
会長 塚田司郎

書籍発刊のお知らせ

『印刷白書2022』2022年10月21日発刊