『みんなの印刷入門』発刊4年目にして第10版に

掲載日:2023年6月13日

「印刷」のことを知りたいすべての人に向けた必携の一冊として、JAGATが発行する入門書『みんなの印刷入門』は発刊以来、新入社員向けの参考書やセミナー・通信教育のテキストとして好評を博して版を重ねてきた。このたび、節目となる第10版を、内容を大幅にブラッシュアップして発行した。

■現代にふさわしい印刷入門書を制作する
JAGATの印刷入門書の歴史をたどると、創立初期の1971年に発行した高畑利雄著『印刷技術概論』を嚆矢とするが、1988年には“高度情報化社会に対応する印刷への入門書”として『新・印刷技術概論』にリニューアルされた。ただしこの時点では、目次にはまだ「DTP」の文字はなく、2003年になって既にフルデジタル化されていた印刷工程を背景に、新たに『印刷入門~プリプレスからポストプレスまで』を発刊した。
『印刷入門』は2012年に改訂され、2018年まで版を重ねるロングセラーとなった。だが、誌面はモノクロであり、ネット社会における多メディア化や価値観の変容の観点からも、内容が時代にそぐわなくなっていた。そこで、現代にふさわしい印刷の入門書を新たに作ろうと、各界の専門家による制作委員会を立ち上げたのが2018年2月であった。委員会において対象となる読者の想定やデジタル時代の印刷入門書に必要なコンテンツの選定をはじめ、体裁など本のテイストまでを議論し、執筆・編集作業を進めて『みんなの印刷入門』というタイトルで初版を発行したのが2019年3月である。印刷人や印刷に興味のある人であれば、部門や職種にかかわらず知っておくべき印刷技術の基本はもちろんだが、旧書ではほとんど触れられていないデジタル印刷機とその活用法など、印刷ビジネスの新しい必須知識も学べるものとなった。

■内容をこまめにアップデートする
一般にこのような基礎的内容で、ある程度の販売部数が見込めるのであれば、コスト面から考えてもオフセット印刷で製作することが理にかなっている。しかし『みんなの印刷入門』は、あえて必要部数だけ(具体的には500~700部)印刷し、小まめに内容をアップデートしていくことを一つのコンセプトとしている。そのため、デジタル印刷を活用して増刷するたびに内容も更新していく方針とした。いわば、更新し続けるウェブサイトを紙の印刷物で実践するといった試みである。技術もビジネスもめまぐるしく変化していく印刷の世界に即対応していくことで、初心者だけでなく経験者にとっても役立つ本となるはずだ。
『みんなの印刷入門』は久しぶりの入門書の最新刊ということもあり、印刷会社だけでなくメーカーや学校などでも順調に採用され、発行年の2019年だけで第3版に達し、翌年には第6版まで推移した。昨年には第9版に至るまでになり、3年間の累計販売冊数は5000部以上となった。

■記念すべき第10版のブラッシュアップ
節目となる第10版の制作を機に改めて内容を見直すべく、制作委員会を昨年招集して意見交換を行った。その結果を受けて、情報のアップデートはもちろんだが、より分かりやすさに重点を置いて大幅に記述を修正、さらに不要項目の削除とともに書き下ろし原稿を追加した。例えば「ワークフロー」のセクションでは、ごく限られた分野だけで使用されている1bit Tiffワークフローの解説はやめ、主流のPDFワークフローについてはより分かりやすく整理した。一方で「インキ」のセクションでは、今後さらに普及が進むと思われるインクジェットプリンターのインクについて、その種類や組成、特徴などについて新たにページを割いている。体裁面では、これまで混在していた段組みを2段組に統一してより見やすく改良し、表紙の色もイエローからグリーンに変更した。

本書には、「チラシ」の語源や「インキとインクの表記」について、「網点」が印刷普及の大発明であること、欧米では当たり前の「上製本に使われる糸かがりが、日本ではアジロ綴じが普通」なのはなぜか、さらには「オフセット両面印刷機の反転機構(どのようにして紙を反転させて裏面に刷るのか)の解説」など、他の入門書では触れられていない知識についても豊富に記載している。それらが一層、印刷に対する興味を引き立てるものとなっている。今後も、『みんなの印刷入門』は方針を変えることなく、ますます内容に磨きをかけていく。

(CS部 橋本 和弥)

 

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『みんなの印刷入門』(第10版)

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