設備の予防保全にとどまらないTPM

掲載日:2015年8月21日

TPMに取り組むプロセスの中で人が育ち、その人材によって現場が変わり、結果として継続的に利益を生み出せる企業体質になるという。

TPMイコール設備の予防保全と漠然と捉えていたが、調べてみると、そのような単純なものではなく、TPMに取り組むプロセスの中で人が育ち、その人材によって現場が変わり、結果として継続的に利益を生み出せる企業体質になるという。

付け焼刃ではあるが概要を紹介したい。

まず、TPMとは何かというと、Total Productive MaintenanceあるいはTotal Production Managementの略称である。前者は生産設備の予防保全という印象を受けるが、TPMの活動は、もっと広範囲で生産活動全体に及ぶという意味合いで後者の略称も用いられるようだ。なお、Totalには“全員参加”という意味合いも込められている。

TPMでは、生産システムに潜在するあらゆるロスをゼロにすることで、企業利益の拡大と儲ける企業体質を実現する。

無くすべき“ロス”は全部で16種類、16大ロスという。分類すると設備の効率化を阻害するロス(故障ロス、段取りロス、チョコ停ロスなど)、人の効率化を阻害するロス(管理ロス、動作ロスなど)、そして原単位の効率化を阻害するロス(歩留まりロス、エネルギーロスなど)の3つに分けられる。

管理ロスとは、指示待ちや材料待ちなどで、動作ロスとは決められた手順を守らないなどがあたる。

これらの16大ロスを減らす、のではなくゼロにするための活動がTPMの8本柱と呼ばれるものである。

  1. 生産システム効率化の個別改善
  2. オペレーターの自主保全体制づくり
  3. 保全部門の計画保全体制づくり
  4. 製品・設備開発管理体制づくり
  5. 品質保全体制づくり
  6. 教育・訓練
  7. 管理・間接
  8. 安全・衛生と環境

これらの活動は製造現場だけでなく全社にまで及ぶ。8本柱のすべてに取り組むには負担が大きく期間もかかるので、中小企業向けにC-TPMというものがある。

その定義は、

  1. 企業の体質強化、基礎基盤づくりを目的に
  2. 5Sの維持管理と設備の基本条件を整え
  3. 生産活動におけるあらゆるロスを発生しない設備と現場管理の仕組みを
  4. 現場現物で構築し、顧客の信頼と生産効率を高め
  5. トップからオペレータに至るまで全員が活動に参加し効果を上げる

というものである。

TPMでは、現場での“自主保全”に重きを置いている。自主保全そのものがオペレータが育つ仕組みだという。どうして人が育つのか、TPMで有名な言葉(格言?)を紹介する。

「清掃は点検なり」
「点検は不具合の発見なり」
「不具合は復元・改善するものなり」
「復元・改善は成果なり」
「成果は達成の喜びなり」

人は成果が出て、それを評価されると、より意欲が出て創意工夫につながる。
この好循環を繰り返すことで人が育ち、組織が変わり、利益を生み出し続ける企業体質となる。

自主保全を行うには具体的には以下の7ステップを踏む

  1. 初期清掃
  2. 発生源・困難箇所対策
  3. 自主保全仮基準の作成
  4. 総点検
  5. 自主点検
  6. 標準化(と維持管理)
  7. 自主管理の徹底

また、これらの取組みをすることで、“設備に強い”オペレータが育つ。
“設備に強い”とは以下の4つの能力を持つことだという。

  1. 異常を異常として見る目を持っていること(異常発見能力)
  2. 異常に対して正しい処置が迅速にできること(処置回復能力)
  3. 正常か異常かの判定基準を定量的に決められること(条件設定能力)
  4. 条件管理のルールをきちんと守れること(維持管理能力)

いずれにしても、5Sを始めとした日本のものづくりの良いところが凝縮され、現場改善のエッセンスがすべて盛り込まれているような印象がある。

本格的に取り組むには専門家への依頼が必要となるようだが、例えば、せっかく取得したISO9000シリーズが形骸化しているので活性化させたい、あるいは5Sに取り組んだもののモチベーションが続かず継続できないといったときに、TPMのエッセンスを自社に合うかたちで取り入れてもよいのではないか。

参考文献:
トコトンやさしいTPMの本 中野金次郎 編著/TPMトコトン研究会 著
(日刊工業新聞社)

【参考リンク】
公益社団法人 日本プラントメンテナンス協会
株式会社 日本能率協会コンサルティング

(JAGAT CS部 花房 賢)