伝統と先進技術の融合でお客様の立場に立った印刷物を提供

掲載日:2014年8月25日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ユーザレポート:伝統と先進技術の融合でお客様の立場に立った印刷物を提供

 

 

 代表取締役社長 丸山恵右氏

 丸山印刷株式会社(本社:兵庫県高砂市)は、1914年(大正3年)創業、従業員数210名の歴史ある総合印刷会社である。主な製造品目は、カタログ、パンフレット、チラシ、カレンダーなどの商業印刷物を中心に、商品ラベルなどの包装資材、ビジネスフォームなど広範囲に及び、環境保全にも配慮した顧客密着型の企業である。
いち早く先進技術を取り入れることにより製品の品質を高め、顧客へのサービスを品質保証と環境保全の両面から実現している。1999年にはCTPプレートセッターKodak Trendsetter(トレンドセッター)をいち早く導入。現在は、2004年にKodak Prinergy(プリナジー) ワークフローシステムと同時に導入したKodak Lotem(ロテム)とサーマルCTPプレートKodak ExThermo(エクスサーモ) TP-Wの組み合わせで、毎月5000版前後のCTPプレートを出力している。同社は常に、お客様の声をお聞きして、より良い印刷物の企画・提案を続けてきた。その成果として、現在では、年商数十億もの売り上げの企業へと成長した。
 本稿では、こうした同社の実績と今後の取り組みについて、代表取締役社長 丸山恵右氏、専務取締役 丸山元氏、製版部部長 福本祥克氏、製造部部長 北野芳朗氏にお話を伺った。

常に時代の流れに合わせた最新技術を導入

 同社は、創業時の活版印刷から、着実に事業を拡大させながら歩んできた。
なかでも1958年、MU式カーボン印刷を共同開発したことが大きな転機になった。この技術は、従来のカーボンペーパーによる手法から、印刷用紙裏面に直接カーボンを印刷する複写方式である。複写事務の能率を大幅に改善するものであり、この方式は現在も使われている(実用新案 昭33-12509)。
1966年にプロセス製版工場を建設、1996年には製版のデジタル化への移行を完了するなど、常に最先端の技術に取り組んできた。自社工場内にプリプレス工程をすべてもっていたので、早期のデジタル化への取り組みが可能であったと言う。

デジタル化により生産性が大幅に向上

 同社では、企画・デザインからDTPを中心としたプリプレス工程、CTP、印刷、製本、加工、納品までを行っている。取り扱う製品も幅広く、品質、価格はもちろん、短納期に対応することで顧客ニーズにこたえている。
 製造工程では、プリプレス設備としてMacintoshを始め、インクジェット・レーザープリンタ、フラットベッドやドラムスキャナがある。PDFワークフローサーバPrinergyを中核に、DDCP(Direct Digital Color Proof)のKodak Approval(アプルーバル)、CTP出力機Trendsetter、Lotemが使用されている。さらに、枚葉オフセット印刷機やUV枚葉オフセット印刷機、ラベル用凸版輪転機、ビジネスフォーム印刷機を始め、さまざまな印刷物の加工に対応するためのポストプレス設備も多々導入している。
PrinergyシステムをセンターRIPに位置付け、Print ready PDFを運用することで、CTPプレート出力はもちろん、プルーファへの出力などを行い、正確なプルーフの提供と効率化した安定生産を実現している。
いち早く、CTPシステムを導入し、プリプレス側から出力されたCIP3データを印刷機にオンラインで指示するシステムを活用していた。これにより、印刷時の色バランスを瞬時に解析し、色合わせに費やす時間を短縮すると同時に、色合わせ時のロス紙を削減するなどの効果を上げてきた。
また、2台のCTPシステムは、時差出勤による勤務体制(7時~23時)で、目標値の月産平均5000版を上回る稼働を続けている。
 福本氏は、「クライアントとの校正のやり取りやデータ修正で下版が遅れることはあるが、プリプレスワークフローにおいて、システム上のボトルネックはない」と語る。
 本機校正、平台校正、DDCPのApproval、カラープリンタ、リモートプルーフによる校正手法を、印刷品目によって使い分けている。Approvalやカラープリンタ、リモートプルーフなど、デジタル出力機は標準印刷物を基本としたApprovalをターゲットに、ICCプロファイルによってカラーマネジメントされている。
 定期的なキャリブレーションによって、どのようなプルーファで出力しても色のバラツキが基準内になるよう管理しているため、リモートプルーフでもある程度の色の校正が可能である。最近では、営業担当に目標値を設定してアナログの校正刷りからDDCP、カラープリンタ、リモートプルーフなどのデジタル校正へ積極的に移行を促進している。 福本氏は、「本社と各営業所をVPN(Virtual Private Network)で接続し、色が管理されている同型のプリンタを用いてリモートプルーフを行っているため、距離感なく仕事ができる」と言う。
さらに、デジタル検版機やセキュリティ関連システムも積極的に導入するなど、クライアントの信頼を勝ち得るためのツールを駆使している。そのため、地方自治体の発行する証明書や金券、商品券などの印刷を指名されることも多い。

 

こだわりの品質を提供する-Kodak Staccato(スタッカート)スクリーニング

同社では、従来からの高精細印刷(300lpi)に加え、Kodak Staccatoスクリーニング(FMスクリーニング)によって、モアレ、ロゼッタパターンなどの問題を解決しつつ高度な印刷品質を実現している。
 北野氏は、「Staccatoを使用すれば、滑らかな階調表現など印刷品質が向上するとともに、インキが乾燥しやすいなど効率化が図れ、インキ使用量の削減による経済性へも寄与する」と評価している。
 「高精細印刷の代わりに使用しており、細かい線や文字がある印刷物、アパレル関係などモアレが発生しやすい印刷物などでStaccatoは威力を発揮している」と続ける。 今後は、Staccatoスクリーニングによる印刷を付加価値印刷と位置付け、より戦略的な武器としても有効活用すると言う。
また、近年UV枚葉オフセット印刷機(A2判6色+コーター)を導入した。 北野氏は、「UVオフセット印刷によって、フイルム、プラスチック素材などの特殊素材への印刷に拡大し、より幅広い製品の提供ができるよう努力している」と言う。
この印刷機では、光沢部分とエンボス部分の質感を同時に再現し、今までにないメリハリの効いたユニークな仕上げが可能となる。このような表面加工を提案し、あらゆる面で差別化を図ろうとしている。
 北野氏は、「CTPによって版の管理が容易になったので、今後は温湿度などの印刷環境やインキの見極め、印刷機のメンテナンスがより重要な要素になる」と言う。

品質保証と環境保全により安心できる印刷物の提供

 同社はお客様に役立つサービスの提供を企業理念に掲げ、印刷物としての品質保証はもちろん、環境マネジメントシステムの国際規格「ISO 14001」においても、兵庫県下の印刷企業として初めて認証を取得する、地元企業のパイオニアとしてリードする存在である。 また、品質管理や個人情報保護活動の一環としてISO 9001:2000、プライバシーマークの付与認定、さらにFSC森林認証制度の「FSC COC認証」を取得するなど、品質保証と環境保全の両面を考慮した印刷物製作を行っている。 丸山社長は、「当社は、品質・価格・納期の3要素はもちろん、法律を順守しているため、どこでどのように製造、印刷したものか自信をもって明記できる。そのためお客様に安心していただける製品を提供できる」と、同社の顧客への姿勢を強調した。

お客様を始め、地域からも信頼される企業であり続けるために、さらなる進化

 本社は、正門から敷地内へときれいに整備され、社屋内の管理部門から製造部門おいても整理・整頓が行き届き、改善意識のしっかりとした企業であることが実感できる。本社工場では、各部署をガラス越しに見渡すことができ、風通しの良い職場の雰囲気を作り出していることも特徴の一つである。
また、時差出勤による勤務体制で効率良く仕事を流せるよう工場内では、製造物が西側から東側に流れて配送システムに至るよう一貫した生産ラインを構築するなど、生産効率を上げる工夫が随所に見られる。
お客様に役立つサービスの提供を理念とする同社は、印刷事業以外にも、印刷物製作のためのデータやCG、3Dなどの技術を活用した電子カタログ(CD-ROMなど)制作、データの2次利用の企画提案・システム開発、ホームページ制作、コンテンツ制作・一括管理サービスなどのマルチメディア事業も手掛けている。 ワンソース・マルチユースをベースに、印刷から電子カタログにとどまらないWebサイト構築までの一括管理を担い、制作コストの軽減やサポート強化を図り、何でも頼める会社であることをセールスポイントにしている。
また、金具を使用しないエコカレンダーや型抜き製本加工「ワンダフルカット」など、ユニークなサービスも展開している。
 丸山社長は、「厳しい価格競争の環境の中、Staccatoを始めとした前述のプラスαを評価していただき、今後もお客様の信頼を得られるサービスを提供し続けていきたい」と、今後の抱負を語った。また、「従業員の多くは地元の住民であり、大切なステークホルダーである。地域で操業するには、このステークホルダーを大切にしなければならない」と締めくくった。

 
会社概要
・会社名 丸山印刷株式会社
・代表取締役 丸山恵右
・所 在 地 兵庫県高砂市神爪1丁目11-33
・資 本 金 47,500,000円
・従 業 員 約200名
・本社・工場 工   場 TEL.079-432-1511 / FAX 079-431-1040
 本社営業部 TEL.079-432-1515 / FAX 079-432-7046
 事 業 所 神戸営業部 〒651-0085 神戸市中央区八幡通1丁目1-12
         TEL.078-251-4141 / FAX 078-251-3147
          大阪営業部 〒530-0042 大阪市北区天満橋1丁目4-16
         TEL.06-6358-5331 / FAX 06-6358-5341
      東京営業部 〒104-0033 東京都中央区新川2丁目1-10
         TEL.03-3553-7951 / FAX 03-3551-6269
クレオジャパン株式会社 TEL 03-5259-9300
コダック ポリクローム グラフィックス株式会社 TEL 03-5282-1541
http://graphics.kodak.com/

『プリンターズサークル』2006年10月号より

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(2006年11月)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)