2.書体の変遷(5)

掲載日:2014年9月15日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

書体の起源:2.書体の変遷(5)

 

(5)楷,行,草書の時代(六朝)

漢代から萌生えて変遷してきた隷書,草書,楷書が三国の時代の過渡期書体を経て行書体を含めてこの時代に完成の域に達したものと推察できる。この時代以降の楷書の多書体が後世に大きく影響している。書体は地勢風土の違いから,南朝は揚子江沿岸の江南の温雅さ,北朝の野趣と雄渾さとの対照的な書風が生まれる。南帖北碑とよばれるように,南方には「帖に書く」行書,草書類が多く,北方は「碑,磨崖の石刻文字」に使われる楷書が多種である。帖の書体を重んじる帖学派と,石刻書体の碑学派に書風が分かれる。この時代の書体が文字の習得を志す者の手本として今日に及ぼしている。

 *南朝の書
 行書,草書は帖の筆写に適した書体であり,南朝の書体群の楷書,行書,草書のいずれにも毛筆書の基本となりその極限に達した王義之の書が,今日に至るも漢字圏の書体の規範になる。

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*北朝の書
 北朝では仏教関係の造像記,石碑などに適応した書体の楷書体が多く用いられる。北魏の書は,たくましく,気勢のある書体で,整然としている中で自由奔放で,拘束的な要素が少なく個性的な楷書体で種類が多い。現在も六朝風書体として活用されているが,各地に残る老舗の屋号などは碑学派の隆盛で六朝風書体が多い。

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 (印刷情報サイトPrint-betterより転載)