見出しの組版処理と校正での確認

掲載日:2016年2月24日

日本語組版とつきあう その51

小林 敏(こばやし とし)

見出しの指定と組版処理

書籍の見出しは、文字サイズ、フォント、行ドリ、字下ガリなど多くの指定事項がある(図1参照)。原則として、原稿に出現するすべての見出しについて、必要な事項を指示しなければならない。

実際の組版処理では、見出しの個々の事項について、それぞれ設定するのではなく、各種の組版指定事項をセットにしておき、名前をつけて登録し(スタイルやスペックなどとよばれているが、以下ではスタイルとよぶ)、それぞれの見出しには登録した設定内容を一度に適用し、見出しの各種事項を設定している。

したがって、原稿の見出しに対する指定では、最初の見出しまたは別紙に詳細な指定を施し、原稿の個々の部分には、カラーマーカーなどで見出しの種類が分かるように指示しておくだけでもよい。電子原稿(デジタル原稿)の場合は、見出しの行頭などに見出しの種類が分かる記号を付けて示してもよい。

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(図1)

校正での確認

登録したスタイルで見出しの配置方法を処理した場合、見出しのレベル(種類)を見誤って組版処理を誤ることはあり得るが、活字組版のように見出しの一部(例えば字下ガリだけ)が誤るということは考えられない。
したがって、校正では、それに応じた点検でよいことになる。

しかし、同一の見出しであっても、ある特定の見出しだけ例外的に指定が異なる例もあるので、こうした事項は校正では特に念をいれて点検する必要がある。以下では、どんな事項が例外的な指定として考えられるかみてみよう。

スタイルにはどこまで登録できるか

スタイルには、見出しの設定事項について、どの範囲まで登録できるのであろうか。特定の見出しだけを個別に設定することは避け、できるだけスタイルに登録しておくことが望ましい。個別の箇所で特別に設定すると、設定漏れや不整合が生じやすいからである。

処理系にもよるが、最近では、見出しの設定事項のほとんどが登録できる。改丁・改ページのページの開始方法についても登録できるようになっている。

また、初期のDTPにおいて、スタイルには行頭見出し(同行見出し)の設定・登録はできなかったが、今日では処理系によっては可能である。見出し文字列のなかに異なるサイズやフォントが混じっていても(例えば章番号だけフォントや文字サイズを変える)、記号・約物などで規則的に区切られていれば、それを手掛かりに、スタイルに登録できる。

さらに、見出しでは、約物の配置方法について本文とは異なる処理をする例もある。例えば、句読点の後ろのアキや括弧類の外側のアキを四分アキまたはベタ組にする方法がある。こうした事項も、今日ではスタイルに登録できる処理系が多いだろう。
したがって、校正作業では、どこまでスタイルに登録されているかの情報があると作業がしやすい。

個別の処理が必要になる例

見出しの字数が少ない場合、字割を行う例がある(最近の書籍では少なくなっている)。
この字割は、一般に一律ではなく、字数に応じてアキを変えている。そこで、異なるアキごとに別のスタイルとして登録する方法もあるが、字割する箇所が少なければ、特定の見出しだけを個別に設定することも考えられる。

見出しの行ドリについては、単独に出現する場合と、大見出し・中見出し・小見出しと連続する場合では、一般に行ドリを変えているので、スタイルを別にするか、個別の処理が必要にある。また、見出しにサブタイトルがついた場合、見出しが折り返しになる場合なども、同様である。
小見出しの前を1行アキにする方針で、この1行アキの処理方針によっては(たまたま改ページで小見出しが始まる際に、ナリユキとしない方針)、例外的な処理が必要になる。
見出しにルビをつける例は少ないが、ルビの文字サイズなどはスタイルで設定・登録できる。しかし、細部の配置位置については個別処理が必要になる場合もある。

校正では、個々にすべての事項を忠実に点検していくというのは原則としても、どうした事項がスタイルに登録され、どんな事項が特定の見出しだけに個別に設定しているかを心得て作業するとよいだろう。

その他の見出しの校正での点検

目次の作成では、本文の見出しを抽出する方法もあるが、手作業で作成する場合もある。また、見出しは、校正作業の段階で変更されることも多いので、校正の最終段階では、必ず、本文の見出しと目次との照合作業は欠かせない(見出しの文字列とページ数)。
この最終段階の点検では、見出しだけを通覧して点検しておく作業も大切である。

日本語組版とつきあう (小林敏 特別連載)