印刷の「未来を創る!」~JAGAT中部大会からpage2016へ

掲載日:2015年12月15日

今年度JAGATはジョー・ウェブ博士著『未来を創る-THIS POINT FORWARD』を様々な機会に取り上げ、日本の印刷の「未来を創る」ことに関し議論の場を設けてきた。首都圏のみならず各地域のJAGAT大会(JUMP)でも地元の方々を交えディスカッションしてきたが、この後JAGAT中部大会(1/28)を経て、page2016(2/3~)においては、その集大成としての結論を提示したいと考えている。

 『未来を創る』では、後戻りできない現実を踏まえつつ未来の成功のための戦略について、人材、機材、技術、パートナーシップといった様々な切り口で提言を行っているが、ウェブ博士はアメリカのコンサルタントであり、これらは当然アメリカのグラフィクアーツ業界を背景・前提としている。
アメリカの印刷業界も、従業員20人未満の小規模企業が8割を占めるなど、日本の事情に通ずるところはあるものの、やはりJAGATとしては日本における印刷業の“未来の創り方”、ビジネスをどう変えていくべきかについての方向性について示すべく、社内はもとより研究会、各地のイベント等でも取り上げ、議論を重ねてきている。

本書は“「印刷物への愛」の終わり”というアンチテーゼから始まる。顧客は印刷を愛してはおらずその必要もないので、それを口にしても意味が無いということだ。つまり、メディアとして顧客の目的達成にかなわないのであれば、いくら印刷の特長や重要性を述べても仕方がないということであるが、これに対しある経営者は「だが我々以外にに誰がそれを語るのだ」と語り始めた。「無論、印刷のダメなところはしっかり認めたうえで、本当に印刷物が必要な場面ではその必然性を声を大にして訴え、新たな価値創造とともに印刷愛を語るべきである・・・」と。
8月に仙台で開催したJUMP東北2015においての『未来を創る』をめぐるディスカッションでは、紙の長所や効果にスポットがあてられた。「印刷物(紙)はデジタル(メール等)に比べ圧倒的に人の五感に訴えることができる」であり、最たるIT企業であるGoogleが最大のDM発信者である(紙の効果を知っている)ことなどが紹介された。

また、本書では人材戦略において、未来を創るためにふさわしい人物は“従来の印刷ビジネスのスタッフではない(かもしれない)”とし、“印刷営業の終わり”であり、ゼロベースでビジネスを始める場合は“従来と異なるキャリアの人材”が必要である。さらに“印刷業界とは異なる領域から新しい若手の人材を雇う”べきであるとする。
この辺りが、アメリカと日本の雇用環境、習慣の違いが現れており、日本の経営者にとって最も違和感や、もしかするとあきらめに近い感覚を抱くところではないであろうか。社内で人を育てる、ということが日本式でありそれがきちんとできる企業が良い会社と評価される。
9月のJUMP中国・四国2015(広島)におけるディスカッションでは、2020年までの15年間に最も重要で力を注ぐべきは人材育成であると結論づけた。
曰く「印刷の出荷額は今後も減り、印刷以外での展開を考えるとサービス業へ転換していく必要がある。そのために機械を稼働させるためにサービスをタダするのではなく、顧客が儲かった対価をいただくといった考え方に切り替えていかなければならない。そのためには営業力の底上げしかないと思い、スキルアップに力を注いでいる」
「極論すれば将来印刷機がない会社をも視野に入れている。今後は設備に投資するくらいなら人に投資していきたい。特に、営業は外に向けての発信力が必要になってくるであろう」
「人なしには何もできない。人にしっかり向き合い時間も投資していきたい」ということだ。

2016年1月にはJAGAT中部大会(名古屋)において引き続きこのテーマでディスカッションを行う。これまでの議論を踏まえつつも新たな展開も期待している。
そして2月のpage2016では今年度の集大成として、カンファレンス等で日本の印刷の『未来を創る』方向性について何らかの結論を示すべく、社内外を問わず議論を深めていく所存である。

(CS部 橋本 和弥)

<関連情報>
JAGAT中部大会2016 1月28日(木)開催(名古屋市中小企業振興会館:吹上ホール)
 印刷の「未来を創る!」
  ~Keynote/講演会(JAGATからの報告)/ディスカッション/情報交換会