【クロスメディアキーワード】クロスメディアとワンソースマルチユース

掲載日:2016年9月21日
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クロスメディアとは、ある情報について文字や音響、映像などのさまざまな素材と、プリントメディアやデジタルメディアといった複数のメディアを用い、効果的な情報伝達を行う手法である。
複数メディアの利用については、生活者のメディア導線を予測したシナリオにより、メディアごとに適したコンテンツを用意し情報発信を行う。
メディア利用の概念については、「ワンソースマルチユース」や「マルチメディア」「メディアミックス」など、「クロスメディア」と似たさまざまなものがある。

ワンソースマルチユース

ワンソースマルチユースとは、基となる印刷用データやWebサイト用データなどから、異なるメディアへコンテンツ展開を行う概念である。「マルチ(multi:複数の)」の意味としては、利用するメディアの数や、コンテンツの再利用回数といった解釈も可能であり、ワンソースマルチユースにより、コンテンツの制作効率を高めるといった意味を持ち合わせている。
印刷用に加工されたデータを利用し、ほかのメディアへ展開を行うにはデータの再加工が必要となる。ワンソースマルチユースを実現するために、印刷用データに含まれる寸法や書体指定のような情報は付加せず、ほかの印刷系メディアやWeb 系メディア向けといった複数の出力を想定したデータ作成が求められる。
マルチユースは、「データベースパブリッシング」の考え方と密接な関係がある。データベースパブリッシングは、リレーショナルデータベースを用い、条件に応じて自動レイアウトを行うシステムである。フォーマットがある程度定型化されている大型のカタログやパンフレットなどの制作には欠かせないものであり、データベースに蓄積されたデータの活用は、当初のメディアに対するコンテンツ制作や再利用だけに止まるものではない。リーフレットやWeb、デジタルサイネージなど、さまざまなメディアへのコンテンツ展開を可能にする。
出力メディアを構成するコンテンツに関する情報をデータベース化して、メディアに合わせた検索を行い、データ抽出後に自動レイアウトする手法が普及している。
文書の型を定義付けられるXML(ExtensibleMarkup Language)を利用したデータベースをシステムを中核にし、おのおののメディアに合わせたスタイルシートを用意することで、フレキシブルなコンテンツ展開も実現できる。
XML に対応したDTP アプリケーションを合わせて利用することで、変更や修正を行った箇所をデータベース内のデータに対し同期させることが可能である。データベースにより派生する、ほかのメディアのコンテンツに、自動的に反映することができる。このコンテンツ管理手法が「ワンソースマルチユース」といった概念であり、データベースパブリッシングは効率良く実現するための手段である。

クロスメディア

共通データのデータベース化は、情報のクロスメディア展開の際においても有効な資源となる。
クロスメディアの概念では、必ずしも「基となるデータ」が1 つである必要はない。情報発信の効果を最大限にするため、「基となるデータ」に対しメディア特性を考慮した加工を施すことや、新たな「データ」を追加することが求められる。
現代の生活者は、製品やサービスを購入する際に関連の詳細情報を求める傾向があり、得た情報の結果に満足しないと購買活動へと至らないことがある。
製品の機能を紹介する場合、プリントメディアでは文字や写真、図表での表現となるが、映像や音響の利用により製品の動きや音の表現が可能となり、機能の理解度が飛躍的に高まることが期待できる。映像や音響といった「データ」を追加することで、Webコンテンツにより効果的な製品の機能紹介を実現できる。また、モバイル端末向けWeb サイトを併設する場合、端末の動作を考慮し、コンテンツのデータ量を削減する取り組みも求められることがある。
映像や音響を扱うテレビ放送であっても、製品の詳細機能を訴求するメディアとしての活用が難しい点がある。テレビ放送は、インタラクティブ性や検索性に欠ける部分があり、生活者が情報を得る際、目的の情報を見つけ難いことがある。
クロスメディアを実現するためには、メディア特性を熟慮する必要がある。クロスメディアは、「基となるデータ」を効率よく展開することではない。情報の発信者が想定するシナリオを前提にして、情報の受信者である生活者が行動することを促すために、さまざまなメディアの持つ特性を理解しメリットを最大限に発揮させることが重要である。
コンテンツを構成する情報による相互作用や相乗効果を高めるために、クロスメディアの概念が活用される。また、クロスメディアではQR コードによるWebサイトへの誘導、ICカードを活用した本人認証・決済機能な、ど各メディアの連携をスムーズに行わせる「橋渡しの仕組み」も不可欠である。クロスメディアは制作効率の向上が目的ではなく、情報発信の目的を達成するためのメディア活用手法である。

メディアミックス

メディアミックスは、メディアを組み合わせて情報の到達を最大限にする、クロスメディアと近い概念である。
異なるメディアを組み合わせ、活用することにより、各メディアの弱点を補う手法といった原義がある。
コンテンツは、映像でなければ伝えられない情報や、熟読しないと伝えられない情報など複合的に存在するため、必然的に使用するメディアも複合的になる。映像での情報と紙面(誌面)での情報を連動させ、生活者のコンテンツに対する理解を強化するために、統一したビジュアル表現を採用することもある。個別のメディアにおいても、原則的には個別にコンテンツとして完結することを前提にしている。
現在では、特定の娯楽作品が一定の経済効果を持った時、その作品の副次的作品を数種類のメディアの利用を前提に多数製作することで、ファンサービスと販売促進を拡充する手法を指すことが多い。

JAGAT CS部
Jagat info 2013年8月号より転載