【クロスメディアキーワード】メディアリテラシーとフィルタリング

掲載日:2016年9月23日
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メディアリテラシーの向上が求められる高度情報化社会において、未成年者の健全な育成を目的としたフィルタリングサービスが提供されている。

メディアリテラシー

メディアリテラシーとは、情報の受信者が主体的に内容を読み解き、メディアを活用する能力である。リテラシーとは読み書きに関する能力であるが、メディアの持つ様式にはメッセージ性があることから、マーシャル・マクルーハンは「メディアはメッセージである」と提言し、メディアリテラシーの重要性を喚起した。メディア特性を踏まえた、受信者の判断と活用が求められるようになったことに起因し、メディアリテラシーの重要性は増している。受信者は、メディアの多様化により、マスメディアのみならずミドルメディア(インターネット)やパーソナルメディアなど、さまざまなメディアから情報を取捨選択できる能力が必要である。受信者はマスメディアのような影響力のあるメディアで発信される情報においても、その情報の確実性を判断できるようになるべきである。情報の発信者はさまざまなメディアの特性を理解し、活用できる能力が求められ、受信者は主体的かつ批判的にメディアに接触する能力が求められる。

情報の信憑性

テレビ放送の情報は「正確」で「事実」であると判断することは、メディアリテラシーに欠けると考えられる。発信されている情報は、誰にどのように作られたかといった意図をくみ取る必要がある。広告表現においては利害関係や編集意図が介在し、必ずしも中立的な情報が発信されているとは限らない。しかしながら、メディアリテラシー向上の目的は、広告を否定するものではない。広告の役割や情報バイアス(偏り)を認識する必要がある。

メディア特性

情報化社会の進展により、パソコンやモバイル端末などのさまざまなメディアが生活者に普及することで、マーシャル・マクルーハンにとって想定外の事象が起きた。テレビや新聞、雑誌といった直感的に理解しやすいメディアから、インターネットに接続するさまざまなメディアの登場により、メディア特性を捉えることが難しくなった。
ブログとSNS(Social Networking Service)で見られるように、コンテンツの特性が異なっていても、共通点が多い技術やサービス名称でメディア特性を区分することは、本質的な意味を持たない。「メディア」と呼ばれるものが、すべて同質の「メディア」であるとは限らない。情報の受発信における特徴を考察し、メディアとしての役割や評価などの特性を熟考するべきである。
メディアリテラシーが向上することで、高度情報化社会を正確に捉え、充実したコミュニケーションを図るきっかけを得ることができる。ビデオカメラやインターネットを活用した市民チャンネルやインターネット放送が一般化し、情報の受信者が発信者でもあるような転換が起きている。

フィルタリングサービス

ケータイやスマートフォンなど、未成年者のモバイル端末利用の普及に伴い、コンテンツへの規制が求めらている。インターネット上には、犯罪につながる情報や、未成年者の健全な成長に有害な情報も存在している。ふさわしくない内容のコンテンツやコミュニティーサイトに対するアクセス制限である「フィルタリング」が行われている。
日本における「フィルタリング」は、総務省の要請で、移動体通信事業者が実施しているサービスである。利用者の設定により、有効か無効を切り替えることができる。一般的には、未成年者の保護者が設定を行い、未成年者に受け渡すこととなる。したがって、移動体通信事業者は、保護者に対し「フィルタリング」に関する意思の確認を行う。「フィルタリング」には、ホワイトリスト方式とブラックリスト方式の2 種類が存在する。

ブラックリスト方式

特定のカテゴリーに属するWeb コンテンツやWebサイトをリスト化し、アクセスを制限する方式である。一律的にWeb コンテンツやWeb サイトのカテゴリー分類を行うため、健全な運営を行っているWeb コンテンツやweb サイトにアクセスできない可能性がある。

ホワイトリスト方式

一定の基準を満たしたWeb コンテンツやWeb サイトのみをリスト化し、リストに入っていないWeb コンテンツやWeb サイトは、アクセスを制限する方式である。ホワイトリストへ指定できるものは、膨大な数が存在するWeb コンテンツやWeb サイトと比較すると、極々一部となってしまう。安全性については期待ができる反面、利便性が損なわれてしまう傾向がある。

フィルタリングの課題

「フィルタリング」は、Web コンテンツやWeb サイトごとに分類されており、フィルタリングソフト提供事業者が情報を収集し、移動体通信事業者へリストの提供を行っている。必ずしも内容詳細の解析を行った上で分類せず、特定語句による分類が行われている可能性があり、正確な「フィルタリング」が行われていない可能性が残っている。有用な情報を提供しているにも関わらず、アクセスが制限されてしまうこともあり、コンテンツ提供事業者から問題視されていることもある。

フィルタリングの動向

現在は、新規や既存を問わず、未成年が利用するモバイル端末契約者へ対する「フィルタリング」使用の原則化が完了した。今後は、更なる「フィルタリング」の普及促進がなされると同時に、機能のカスタマイズ化などの画一的な現行モデルの改善策の策定が進められている。一方、一部の地方自治体においては、未成年者に対するモバイル端末の「フィルタリング」を実質的に義務化する動きもある。

メディアリテラシーとフィルタリング

「フィルタリング」は、利用者の利便性が損なわれるだけでなく、メディアリテラシーの向上に対する阻害要因となる可能性を秘めている。未成年者も情報の選別ができるように、メディアリテラシーの向上に考慮した取り組みが必要になる。

JAGAT CS部
Jagat info 2013年9月号より転載