【クロスメディアキーワード】顧客とのメディアコミュニケーション

掲載日:2016年10月12日
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企業にとってステークホルダー(利害関係者)は複数存在するが、多くの場合、顧客はその中でも重要視される。

コンタクトポイント

顧客が製品やサービスを購入することで、企業は利益を確保できる。顧客とのコミュニケーションは、企業の継続性を担保するために、不可欠なものとなる。情報を顧客へ向けて発信する際、コミュニケーションが発生する点(場)を「コンタクトポイント(顧客接点)」と呼ぶ。
また、インターネットと対応したモバイル端末の普及により、「コンタクトポイント」は大きな影響を受けた。現在は、顧客とのコミュニケーションに対し、インターネットメディアである「電子メール」や「さまざまなWebサイト」を「コンタクトポイント」として企業は活用しているが、「テレビ」や「ラジオ」、「新聞」「雑誌」「電話」「DM(Direct Mail)」などの旧来からのメディアも当然のように併用されている。
企業が顧客との有効な関係を構築するためには、対象となるそれぞれの顧客に向け、「コンタクトポイント」を見極め、「求められている情報」を最適なタイミングで提供することが求められる。また、「顧客が企業や商品に対し抱いていること」を読み取り、素早く回答していくことも必要となっている。

情報とメディア

メディアによるコミュニケーションは、「情報(コンテンツ)」と「メディアの選択」が重要であり、双方の適切な組み合わせにより、「顧客にとって必要な情報を最適なタイミングで提供する」ことを実現する。また、顧客が企業となる「B to B(Business to Business)型」の事業を展開する企業にとっては、「顧客となる企業にとって必要な情報を最適なタイミングで提供する」こととなる。
「顧客が求めていない情報を望んでいないタイミングとメディアで提供する」といった、一方的なメディアによるコミュニケーションは、現在でも複数存在している。このようなメディアによるコミュニケーションでは、顧客との有効な関係の構築自体が難しいものとなる。

コミュニケーションプランニング

企業が顧客とのコミュニケーションを設計するには、まず、「顧客を知る」ことが必要となる。顧客の嗜好や行動について知ることが求められる。次に「顧客を知る」に基づき、「顧客が求めている情報を予測する」行動が必要となる。求めている情報が明確であれば、企業が顧客とコミュニケーションを行う大きな機会となる。さらに求めている情報を分析し、「顧客に提供すべき情報を選別する」ことから、企業にとっても有効なコミュニケーションを実現する。最後に「顧客に情報を提供するメディアを選定する」ことで、「顧客にとって必要な情報を最適なタイミングで提供する」ことが可能になる。

顧客の行動

顧客との適切な「コンタクトポイント」を明確にするには、メディアによるコミュニケーションの対象となる顧客が持つ「嗜好」を把握し「行動」を予測する。「顧客視点」によるマーケティング戦略を立案し、「顧客の立場」を最重要視する。
「ソーシャルメディアが一般的に注目されているから」「新商品を開発したから」などの企業側の理由だけで、顧客とのコミュニケーションを図ろうとしても、むしろ、費用だけを要してしまい、成功の可能性を低めていく結果をもたらしてしまうかもしれない。まず「日々、顧客が経験する生活における行動」を理解することが大切になる。
また、顧客の行動を理解するために、顧客の行動を「プロモーションの段階」では「問題認識や情報検索」、「セールスの段階」では「代替品の評価や購買決定」、「アフターセールスの段階」では「購買後の行動」といった分類をして分析することが重要であると、アメリカ合衆国の経営学者である「フィリップ・コトラー」は提唱している。

提供すべき情報

「顧客の行動」を把握し、コミュニケーションの必要性を得ることができたら、「顧客が求める情報」を分析し、「提供すべき情報」を選定する。
EC(Electronic Commerce)サイトから商品を購入する際、「クレジットカードを利用し注文することは可能であるか」「クレジットカードの情報を入力しても安全であるか」「何か問題が発生したときに保証はあるか」などは、顧客にとって大変重要なこととなる。さらに注文後に「正確に注文が行えているか」といった確認も必要であり、「商品の到着日時」などの情報も求められる。
ネット(インターネット)通販を展開する大手の事業者は、前述した情報提供のほか、顧客の行動を詳細に把握し、必要な情報を適切なタイミングで提供することで、顧客から信頼を獲得している。

メディアの選択

「コンタクトポイント」を設定し、「提供すべき情報」の選定後は、コミュニケーションに使用するメディアを選択する。
メディアは多種多様なものが存在するが、「顧客の行動」と「提供すべき情報」によりメディアの選択は大きく影響を受ける。
インターネットを利用できる「パソコン」や「スマートフォン」「タブレット」などとのデバイス(端末)で使用が可能である「デジタルメディア」は、多くの「コンタクトポイント」での活用を見込むことができる。しかしながら「デジタルメディア」は、必ずしも万能なわけではない。「プロモーションの段階」で、大量な電子メールの送付や、ソーシャルメディアへの執拗な投稿は、顧客に不快感を与える可能性もある。
メディアの選択肢が旧来のマスメディアやSP(Sales Promotion)メディアに限られていた時代と比較すると、インターネットの普及は、企業と顧客のコミュニケーションのあり方に、大きな影響を与えている。大切なことは、手段を優先せずに「顧客の立場」を考慮したメディアによるコミュニケーションにより、「情報」と「メディアの選択」を慎重に組み合わせることにある。

JAGAT CS部
Jagat info 2014年8月号より転載