【クロスメディアキーワード】カウンセリングとコーチング

掲載日:2016年10月24日
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カウンセリング(Counseling)とは、相談者の抱える「問題」や「悩み」などに対し、専門的な知識や技術を用いて行われる「相談援助」を指す。

一般的な定義

一般的に、カウンセリングを行う者を「カウンセラー(Counselor)」と呼び、カウンセリングを受ける者を「クライアント(Client)」「カウンセリー(Counselee)」などと呼ぶ。カウンセリングでは、「援助的対人間関係」「行動変容」「クライアントの自律性尊重」が重要視される。問題を抱えている「クライアント」に対し「カウンセラー」がコミュニケーションを重ねることで人間関係を形成し、「クライアント」自身の自律性により行動変容を促す。これがカウンセリングの概要となり、さまざまな理論や技法が提唱されている。

カウンセラーの条件

適切なメディアによるコミュニケーションを目指すメディアのコーディネートでは、情報の受発信を行う主体となる人物をカウンセリングする心構えが必要であり、その知識と能力は重要なものとなる。
カウンセラーには「自己一致」「共感的理解」「無条件の肯定的尊重(受容)」といった3 つの条件が必要であると、アメリカの臨床心理学者であるカール・ロジャーズが提唱している。「自己一致」とは、クライアントの前で自身が感じていることや経験していることを否定したり歪めてはならないといった態度を指す。「共感的理解」では、クライアントの私的な世界を自身のことであるかのように感じ取る性質を指す。「無条件の肯定的尊重」では、「あいづち」といった単純な行為ではなく、相手の深層に対する受容である。

コーディネーターとして

メディアのコーディネーターは、コンサルティング能力が求められる。
コンサルティングには、カウンセリング能力のほか、自発的行動を促すコーチング能力や精神的な支えとなるメンタリング能力も必要となる。

カウンセリングの技法

カウンセリングの技法は、さまざまな理論に基づき、理論の種類分けが存在する。「精神分析療法」や「来談者中心療法」「ゲシュタルト療法」「論理療法」「行動療法」などが代表的な技法である。カウンセリングでは、クライアントの「考え」や「思い」が最も重要視される。クライアント自身も分析に参加し、理解し、認知する必要がある。しかしながら全ての問題に対し、カウンセリングにより十分な満足感が期待できる解決方法や解答があるわけではない。カウンセリングはさまざまな理論と技法を用いることで、クライアントの「安心感」や「安全感」を誘発するための一つのアプローチであると考えられる。

コーチングとカウンセリング

コーチングとは比較的新しい概念であり、主に一対一の状況で「モデリング」「問題解決」「カウンセリング」などにより、さまざまな技術を教えることを指す傾向がある。特定分野において能力の向上を期待する人物を対象として、コーチングは実施する。将来志向を強く持ち、目標を達成するための道筋を示し、クライアントが求める成果を実現するサポートを行う。
一方カウンセリングでは、問題を抱えているクライアントが対象の中心となる。やや治療的な意味合いもあることから、カウンセラーはパートナーと一致せず、過去から将来といった広範囲に及ぶ内面変化による行動変容を実現する。

コーチングの技術

コーチング技術は複数存在するが、「傾聴」「承認」「質問」「要約」「フィードバッグ」は代表的な技術となる。

・傾聴
特に相手との関係性を確立する段階で重要視される技術は、「傾聴」である。「傾聴」はカウンセリングでも使用されるが、クライアントの「話したいこと」や「伝えたいこと」を「受容的」かつ「共感的」な態度で聴く技術である。意識的に耳を傾ける状態で、偏見や先入観、固定観念を排除し、客観的な姿勢で聴く。さらに、「はげまし」や「うなずき」を加え積極的な姿勢で、クライアントのためにクライアントの立場を考慮して聴くことが重要である。「傾聴」は、「心構え」が必要になり、受容的な態度が最も重要視される。
・質問
コーチングは、「質問」によりクライアントが関心を持つように促す過程を指すこともあり、「質問」技術が重要視される。「質問」は「ポジティブな質問」や「ネガティブな質問」で構成される。「ポジティブな質問」とは、「正解が複数ある質問」や「将来のことに対する質問」「否定形のことばを含まない質問」であり、クライアントの能力を最大限に発揮できるよう使用され、コーチングの本質として重要視されている。
・要約
「要約」技術は、クライアントの抱える課題を整理する「チャンクダウン」を指す。「要約」により解決すべき「問題」と「原因」を明確にすることで、解決へ向かう大きなステップとなる。「要約」技術は、自身の解釈を押し付けず、クライアントが答えを持たせることが注意点となる。
・フィードバック
「フィードバック」とは、クライアントに対し「反応」や「感想」「意見」を率直に伝える技術である。自身の「考え」であることがクライアントに伝わることが大切であり、自身をマネジメントする技術も求められる。あくまでもクライアントの立場を重要視することが求められる。

JAGAT CS部
Jagat info 2015年1月号より転載