【クロスメディアキーワード】マスメディアとコミュニケーション

掲載日:2016年10月31日
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「マスメディア(mass media)」は、「新聞社」「出版社」「放送局」など、特定の情報を発信する事業者から不特定多数の受信者へ向け、情報伝達手段となる「新聞」「雑誌」「ラジオ放送」「テレビ放送」などのメディア(媒体)を指す。また、マスメディアにより実現される情報の伝達(コミュニケーション)を「マスコミュニケーション」と呼ぶ。

マスメディアの歴史

15 世紀半ば、グーテンベルクによる活版印刷術の発明により、複数の受信者に対する情報の同時発信が可能になった。1660 年には世界初の日刊紙「ライプツィヒ新聞」が創刊され、その後ヨーロッパ各地で日刊新聞が創刊された。欧米や日本では、19 世紀の産業革命による都市人口の増加と、初等教育の普及による識字率の上昇に伴い、「書籍」や「新聞」の大衆化が進んだ。1895 年には、グリエルモ・マルコーニが電波による無線通信の実験に成功し、放送の手段が確立された。

ビジネスモデル

マスメディアの収入の源は、情報の発信を望む側から受け取る広告料と、受信者に「受信料」「購読料」などとして課金するものに大きく分類できる。
「新聞」や「雑誌」は双方に課金し、書籍は書籍料金として受信者からのみ徴収する。
放送事業者には、「新聞」や「雑誌」と異なり、さまざまな課金手段が存在する。「広告料」や「受信料」のほか、「政府交付金」を受ける放送事業者もある。また、「衛星放送」や「有線放送」の場合には、「ペイ・パー・ビュー方式」により視聴者に課金する事業者もある。
IT(Information Technology)とネットワークの発展により、マスメディアの収入源はインターネットを介し提供されるメディアと競合し、減少傾向にある。

主なマスメディア

主なマスメディアとして、電波によるメディアは、「テレビ放送」「ラジオ放送」などが挙げられる。また、紙によるメディアは、「新聞」「雑誌」「フリーペーパー」などが挙げられる。さらに、「映画」や「音楽」「出版(書籍)」全体をメディアに含む考え方もある。

デジタルメディアによる変化

「新聞」や「雑誌」「ラジオ放送」「テレビ放送」などのマスメディアは、社会的な地位を十分に示すことで発言力を持ち20 世紀に君臨していた。これらのマスメディアは、それぞれが独特の情報に関するシステムを編み出すことで、そのノウハウや影響力が資産となり、事業として大きく成長した。しかし、さまざまな情報がデジタル化され、メディア自体もデジタル化されることで、平準化された技術としてインターネットが頭角を現した。さらに、インターネットの通信速度が高速化し、マスメディアとの境界線がさらに弱まっている。
さまざまなメディアは、デジタル化の影響を受けることで、その役割や性質に変化が生まれ、特別なものとしてではなく、日常のコミュニケーション手段となる道具として扱われるようになっている。メディアのデジタル化によって企業にとってさまざまな事業と連携したメディアの登場や、コミュニティーの形成を重視したマーケティングが展開されるなど、従来のメディアが持つ世界とは異なる環境が、提供され続けることが考えられる。

パーソナル化するコミュニケーション

現代のテレビ放送では、個人視聴の傾向が強まっている。さらに、デジタル放送が普及することで、「見るだけのテレビ放送」だけでなく「利用するテレビ放送」や「参加するテレビ放送」「対話するテレビ放送」などと変化している。今後も、さまざまなデジタルに関する技術の発展により、マスメディアのインタラクティブ性(双方向性)が高まり、コンテンツの企画や制作が重要視されるようになると考えられる。

新しいメディア

1990 年代後半から普及したミドルメディアと呼ばれる「Web サイト」がマスメディアに近い影響力を持ち始めており、「ニュースサイト」「動画共有サイト」「BBS(Bulletin Board System:電子掲示板)」「ブログ」などをマスメディアとして捉える考え方もある。

口コミ情報

伝統的なマーケティングでは、生活者の商品購入が最終目的と考えた。アメリカのローランド・ホールが提唱した「AIDMA」や電通により提唱された「AISAS」などの生活者の消費行動モデルでは、なるべく多くの生活者に対し「注意」を促し、「関心」から「欲求」や「検索」へと意識が高まるような情報を発信する必要があるとされている。情報を発信し、多くの生活者を対象に「注意」を促すには、マスメディアの活用が効率的と考えられる。さらに、「関心」から「欲求」や「検索」へと意識を最大限に高めるため、専門家によるクリエイティブが重要視される「広告」が必要であった。
現在では、生活者によるインターネット上の口コミ情報が力を持ち、情報発信の方法として無視できない存在となった。生活者の行動は、マスメディアの情報と比べ、口コミ情報により強く影響を受ける傾向があるとされ、特に「映画」や「ファッション」などの嗜好性の強い商品にその傾向が強い。情報の受信者は主体性を持ち、メディアによるコミュニケーションをイニシアチブを持って行う。

マスメディアとクロスメディア

マスメディアとミドルメディアの組み合わせにより、生活者の商品の認知から始まるシナリオ(動線)を設計する必要がある。マスメディアではクリエイティブの専門家に依頼することで、インターネットへの情報発信と比べ、訴求力の高い「広告」配信の実現が期待できるが、宣伝色の強すぎる「ブログ」の展開は逆効果を誘引する可能性もある。インターネット上に存在する予測が難しい「発言力」の扱い方は、情報を発信したいと考える事業者にとって大きな課題となる。

JAGAT CS部
Jagat info 2015年3月号より転載