高くても買いたい「ブランドの力」

掲載日:2016年12月14日

ブランド(brand)とは、商品やサービスを他と区別するためのあらゆる概念(らしさ)のことである。結果として顧客のなかに商品やサービスに対してでき上がるイメージ等も含まれる。ブランドと聞くと高級メーカーが思い浮かぶが、個人商店から大企業まですべてを網羅する。自家製和菓子屋の大福や八百屋の気前の良いおばちゃんまで顧客に影響や価値を与えているからだ。
現在、顧客は商品やサービスに対する豊富な情報を入手でき、自分に最適なサービスを選択することもできる。したがって、強力なブランドを持つ企業は、常にブランドの価値を意識した活動を行い顧客の心をつかんでいる。

世界のブランドランキング

2016年10月、世界ブランドランキング「Best Global Brands 2016」上位100位を発表した(インターブランド発表)。このランキングは、グローバル展開を行うブランドを対象に、そのブランドが持つ価値を金額に換算してランキング化したものである。アップルとグーグルが4年連続1位、2位を独占し、アップルは前年比5%増の1,781億ドル、グーグルは同11%増の1,332億ドルとなった。3位のコカ・コーラ、4位のマイクロソフトに続き、アジア初のトップ5にトヨタ自動車がランクインした。日本勢は100位中、トヨタを含む6ブランドが入った。

また、ソニーは8年ぶりにブランド価値が増加に転じた。トヨタやソニーは消費者とのデジタルコミュニケーションや人工知能(AI)の研究開発の取り組みなどが評価された。過去最高の5位(前年6位)となったトヨタは「長期的な視点からの事業戦略と、デジタルを活用したブランド訴求が市場で際立っている」という評価である。他の自動車関連ではホンダ21位(前年19位)、日産自動車43位(前年49位)であった。自動車以外の日本勢はキヤノン42位(前年40位)、パナソニック68位(65位)、ソニーは58位で変わらなかった。

ブランド価値はトヨタ9%増、日産22%増、ソニー8%増と大きく伸びた。ソニーは「構造改革による事業の選択と集中がブランドの復権に貢献した。高画質4Kテレビや仮想現実(VR)など、訴求力の高い消費者向け製品が出てきた」という結果だ。また、フェイスブックは「効果的なM&A(合併・買収)や提携を積極的に実施している」として前年23位から15位に上昇。最もブランド価値が増えたセグメントはリテール部門(19%増)であり、とくにアマゾンは33%増になり最も成長したブランドの一つとなった。

自ら変化を起こす企業の力

インターブランドは、ブランドが消費者の購買動向に与える影響と財務状況などを分析・評価し、ブランド価値を金額換算している。成長する企業のパターンとは何だろうか。それは表層的な分析に留まらず、現在各企業で行われているブランディングがビジネスの成長にどう結実しているのかを明確化する研究を重ねているという。このアプローチに基づき正しい活動を実行するブランドが、企業と顧客の共創を通じてさらに大きく成長している。

インターブランドのCEOは、「ランクインしているブランドは、いずれも単に変化を乗り越えるだけではなく、自ら変化を起こしている。」と語る。今回のランキングにおいて、Hewlett Packard、Dior、 Teslaが初のランクインを果たした。ちなみに上位100ブランドの価値合計は、前年比4.8%増の1兆7,963億ドルとなった。アジアでは、日本から6ブランド(トヨタ、ホンダ、キヤノン、日産、ソニー、パナソニック)、韓国から3ブランド(Samsung、Hyundai、Kia)、中国から2ブランド(Huawei、Lenovo)がランクインしている。

本当の意味のブランド力とは、顧客が商品やサービスを気に入り、同じ企業の商品を繰り返し購入するうちに、次第に「この企業の商品なら大丈夫」、「高くてもこの企業の商品を買いたい」という気持ちになる状態のことだ。究極には「あなたから買いたい」と思ってもらえるファンを多くつくりたい。

(西部支社長 大沢昭博)

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