【第16期与件:大学】クロスメディアエキスパート第2部試験

掲載日:2016年12月28日
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状況設定について

あなたは、首都圏にある中堅総合印刷会社のX社に勤務するクロスメディアエキスパートである。X社は、商業印刷物やDVD-ROMの制作、Webサイトの構築・運用などのサービスを顧客企業に提供している。X社にはデザイン専門の系列子会社があり、グループ総従業員数は100名である。

A学園提案プロジェクトについて

X社が過去に企画制作した顧客に、大学を運営する学校法人A学園がある。X社は、同社Webサイトの一部を手がけた実績もある。

営業担当者より、「A学園はA大学の顧客である受験予定者や学生との新しいコミュニケーション戦略の検討をしている。」と報告があった。X社は、営業部門や企画部門、制作部門に所属する数名で、A学園提案プロジェクトを立ち上げた。

クロスメディアエキスパートであるあなたは、本プロジェクトのリーダーに任命された。 X社は、本プロジェクトにて提案書を作成し、2013年8月26日にA学園へ提出する予定である。

面談ヒアリングについて

A大学について調査をすすめていった結果、X社の競合企業がインターネットやモバイル端末を活用した提案の準備をすすめているといった情報が入った。

X社は、営業担当者が中心となり、理事長と販促担当者に面談ヒアリング(※面談ヒアリング報告書参照)を実施した。A学園は、コミュニケーション戦略を立案するにあたり、社外からの優れた提案を取り入れ、実施を検討する方針である。

A学園面談ヒアリング報告書

2013年8月25日
X社  営業部 第一課 黒須目 一郎

概要:A学園からの提案依頼に伴う、ヒアリング調査 日時:2013年8月21日 10時~12時 対応者:高橋理事長、広報室 三浦室長 内容:下記に記載

1.提案へ向けて

栃木県小山市に本部を構えるA学園は、A大学と付属教育機関を運営し、着実に規模を拡大している。大学経営を行っていく過程で、社会情勢の見極めにより、進展する高齢化社会とそれに伴う健康志向から教育や健康、医療、福祉分野の総合大学の他、付属高校や付属幼稚園を展開している。

近隣にある一部の同分野を扱うB大学は、5年前に開学し着実に受験者を集め事業を拡大しつつある。

A学園は、A大学の受験予定者とその保護者、学生、卒業生といった関係者とのコミュニケーションを深めたいと考えている。理事長は「現場の声」を大切にしており、関係者との直接的な対話を重視し、イベント実施に力を入れている。

A大学は、関係者との新たなコミュニケーション手法を確立し、それに伴うコンテンツやコミュニケーション施策のメディア展開案を求めている。

2.施策の運営と実施効果測定

  • 週単位でメディア展開の実績を確認したい
  • 可能な範囲でメディア利用者のレスポンスを管理したい
  • A学園の担当者は、他業務と兼任で2名を予定

3.想定予算

  • 印刷物作成費、ハードウェア、ソフトウェア、開発費などで、総額1,000万円以内を想定

4.施策の実施期間

  • 10月1日にサービス開始、来年3月31日までを第1フェーズとして予定している
  • 1月から3月中旬までが運営業務のピークを迎えるため、コミュニケーション企画は、業務のピークを考慮したものとしたい

5.創設について

  • A大学は、A和洋裁女学院を母体とし平成13年に開校した
  • A女子短期大学の開学を経た後に、現理事長・学長の高橋一茂により、A大学の開学へと至った
  • 改組する以前の短期大学は、スポーツ面での評価は高かったが、学業面では決して高い評価は得ていなかった
  • 当時の大学市場では、短期大学の需要減少が起こり、生き残り策として四年制大学への改組を行う短期大学が多かった
  • 現理事長は、短期大学の内容をそのままに四年制大学にしても、学生は集まらないと考えていた
  • A大学は、進展する高齢化社会とそれに伴う健康志向といった社会の動向を十分に検証した結果、開設された
  • 理事長は、常に考え続ける姿勢を持ち、スピード感を持って着手し、果敢に舵取りを行うリーダー的存在である
  • 大学開設時は、総学生数に対し優秀な学生数は少なかった
  • 市場動向を絶えず把握し、スピードを意識した事業展開により、開学から10年余りで相次ぐ新学部の増設を行っている
  • 現在は地道な教育と大学のイメージアップを目的としたブランディングにより、中堅大学としての地位を確立している
  • 世間で有名な電子掲示板サイトにおいて、開設当時の状況を誇張した内容の掲載があり、誹謗中傷が多く見受けられる

6.大学の市場や環境について

  • 昨今の大学を取り巻く環境は厳しく、定員割れをする私立大学は40%を超えている
  • 経済状況の悪化が影響し家計の厳しさから、大都市の大学への自宅外進学は、回避する傾向がある
  • 少しでも多くの学生を獲得するために、留学生の募集を拡大する大学も少なくない
  • しかしながら、東日本大震災の影響もあり、留学生の入学も減少傾向にある
  • 少子高齢化が問題視される中ではあるが、全国の大学進学者と大学側の入学定員は約58万人であり均衡がとれている
  • 受験者と入学定員の均衡にも関わらず、人気や利便性などの事情により定員割れが起こる状況において、各大学は生き残りの戦略が求められている

7.大学のカリキュラム構成や設備などについて

  • カリキュラム構成は、人間と人間社会を見つめ、「共生の心」を醸成する教育理念を反映した「教養基礎科目」群と「人間理解科目」群を配置している
  • さらに、「国際理解科目」群を配置して、保健や医療、民族、文化、国際関係などに学生の視点が向けられるよう配慮している
  • 教育や健康、医療、福祉の分野の総合大学として、最新の施設や設備、優れた教育スタッフのもと、社会の一線で活躍できる医療福祉サポートのスペシャリストを養成している
  • 最新の設備を備えた教育施設が充実しており、学生の能力と技術の向上を支えている
  • 教育施設棟には、体育館、大講義室、「給食経営管理実習室・実習食堂・調理実習室」などがあり、学生は、それぞれ専門的な技術を磨くことができる
  • 保健医療学部、薬学部はそれぞれの学部棟に実習室・実験室を完備している
  • 遠方地域出身の学生のために、キッチンやバス、トイレ、冷暖房完備した個室の女子寮を提供している
  • キャリアサポートセンターでは、就職講座の開講や説明会の実施などを行い、学生就職活動を支援する体制が整っている
  • 「合同就職説明会」をキャリアサポートセンターで開催し、医薬品関連事業者70社、県内外90の病院から人事担当者が来校する
  • 近隣の駅から離れている立地のため、スクールバスや自家用車による通学を余儀なくされる

8.学部構成

学部 学科 特徴
健康福祉学部 医療情報学科 少子高齢化の進む社会のニーズに応える健康・医療・福祉のスペシャリストを育成
健康栄養学科
社会福祉学科
薬学部 —– 提案する能力を重視した教育を行い、社会で信頼される薬剤師を育成
保健医療学部 看護学科 人間性と判断力、実践力を兼ね備えた看護師や保健師、理学療法士を育成
理学療法学科
人間発達学部 子供教育学科 高度な理論と実践の総合力による「子供専門家」を養成

9.学生の動向について

  • 大学生が2,250名、大学院生が30名在籍している
  • 薬学部の人気が高く、理学療法や社会福祉に関する学科に人気が無い
  • 管理栄養士、社会福祉士、精神保健福祉士、診療情報管理士、保育士、幼稚園教諭、小学校・中学校教諭、看護師、理学療法士、薬剤師などを目指している
  • 学生は、「人を思う心と信頼される人間性」を重視した教育により、地域住民や企業(アルバイト先や就職先)からの評価が高い
  • 実習指導や援助技術演習などを豊富に取り入れたカリキュラムに支持が集まっている
  • 学部や学科を超えた共通講座制を採用しており、学生間の交流機会が多いことが受け入れられている

10.競合大学の動向について

  • 競合であるB大学は、定員割れはなく急速に業績を伸ばしている
  • 2008年に開学し、A大学と比べ半分の規模であり、学費は1割ほど安い
  • A大学近隣駅の徒歩圏内にある
  • 学部構成は生活科学部のみで、食物学科や児童学科、社会福祉学科を設置している
  • 教育理念は、「生活を支える専門的人材の養成」である
  • 卒業生の就職内定率は97%であり、A大学を上回っている
  • 大学パンフレットは、1ページ目から明確に入学メリットを大きく取り上げ、それを実現する仕組みを掲載する工夫がとられている
  • 地方局でCMを頻繁に放送している
  • 「大学ブランド・イメージ調査」においても、A大学を上回っている
  • Webサイトに受験勉強に関するゲームを取り入れ、高校生から人気を集めている
  • ゲームにより、個人情報を収集している
  • 東京と大阪にサテライト教室を設置している
  • 来年度から生活情報学科を開設し、規模を拡大する予定である
  • 実施していなかった、地域に対する取り組みを始めようとしている

11.大学の近況について

  • 過去の3年間の推移では、学生数が年5%ずつ増加しているが、年50名程度の定員割れが見られる
  • 平成24年3月卒業生の就職内定率は、看護科と短期大学卒業生は100%であるが、薬剤師の需要と供給の問題から薬学部卒業生の内定率は80%となっている
  • 前述した学部や学科以外の卒業生の就職内定率平均は、96%である

12.受験促進イベントについて

  • 受験促進への取り組みとして、高校生を対象としたイベントを毎年10月中旬に行っている
  • Webサイトでイベントの告知を行い、資料請求者に対しても案内を同封している
  • 口コミによるイベント参加者も少なくない
  • イベントでは、模擬授業や体験実習、施設見学を行う
  • 模擬授業の内容は、予備校から講師を招いた「入試英語対策講座」や「入試数学対策講座」などであり人気がある
  • イベント終了後には個別相談会を実施し、入試や奨学金、キャンパスライフに関するアドバイスを行っている
  • 今後は保護者に対し、好感や期待を高める取り組みを行いたいと考えている

13.社会貢献について

  • 地域の住民や社会人、卒業生を対象に、各学部や学科による有料の公開講座を通年で行っている
  • 公開講座の内容は、幼児教育や水分補給の重要性、インフルエンザと薬など多肢にわたっている
  • 公開講座は受講者数が伸びず収益性が低いが、継続したいと考えている
  • 昨年度は、市立学校の教育活動への支援に関する覚書締結を教育委員会と行った
  • ボランティアに力を入れており、教育スタッフと学生による被災地支援や地域貢献をおこなっている

14.メディア活用について

  • 広告代理店が運用する大学紹介ポータルサイトを活用し、入試情報誌や大学紹介など様々な情報を発信している
  • 大学案内の内容は、「学校紹介」や「理事長メッセージ」、「就職内定率」など一般的なものである
  • A大学Webサイトは2年前に大幅リニューアルを行い、様々な情報発信や資料請求フォームを設置しており、内外関係者からの評価が高い
  • Webサイト上では電子パンフレットを提供しているが、利用者は少ない
  • 電子パンフレットの内容は、大学案内と入試案内である
  • ソーシャルメディアの導入を検討しているが、電子掲示板サイトの誹謗中傷が障壁となっている

15.ビジョンについて

  • 現理事長は、現場の情報に基づき戦略を立案し、着実に実施したいと考えている
  • 建学理念のもと「同じ志を持つ人々の集い場」として着実に規模を拡大し、大学を活性化したいと考えている
  • 「健康と福祉を学ぶ」といった21世紀の重要な課題に集中し、成果と基盤を求めている
  • 卒業生と大学の絆を深め、公開講座を活性化する手法を模索している
  • 地域社会と学生の健康管理を担うため、来年にはクリニックを開設予定である

以上

学校法人A学園の概要

法人名:学校法人A学園
設立:昭和10(1935)年
教職員:330名
資産:13,500百万円
収入:4,820百万円(2013年3月期)
所在地:栃木県小山市
理事:理事長 高橋一茂 副理事長 三浦理恵 常務理事 本田三郎 その他8名
事業:A大学運営 A大学付属高等学校運営 A大学付属幼稚園運営

沿革

1935年:A和洋裁女学院創設
1945年:学校法人A学園となり、A女子短期大学(家政科)を開学
1947年:A女子短期大学付属高等学校開校
1963年:A女子短期大学付属幼稚園開園
1990年:第2代理事長・学長として高橋和己が就任
1998年:第3代理事長・学長として高橋一茂が就任
2001年:A大学開学
2006年:大学に薬学部、看護学部を開設
2004年:大学に人間発達学部開設

建学理念

人々の生活基盤構築に貢献する

教育目的

人々の生活にかかわる諸問題を情報処理、福祉及び栄養、薬学、看護の観点から総合的に捉え、快適な人間生活の方策を研究すると共に健康を基調とした人間中心型の福祉社会の創造に貢献できる指導的な人材の養成を目的とする

理事長プロフィール

高橋 一茂(たかはし かずしげ)

D大学大学院 農学研究科博士課程修了。農林水産省 環境総合研究所 成分利用研究室室長。
平成2年からA短期大学副学長として学園に赴任、以降同短期大学長、学園理事長として現在に至る。

モットーは「走りながら考える」。趣味は、読書、渓流釣り、オペラ鑑賞。

A学園損益計算書(2011年度、2012年度)

単位:千円
  2011年度 2012年度
売上高 4,725,000 4,820,000
売上原価 4,660,000 4,750,000
売上総利益 65,000 70,000
販売費・一般管理費 49,800 50,000
営業利益 15,200 20,000
営業外収入 31,000 30,000
営業外費用 30,000 29,000
経常利益 16,200 21,000

注)実際の学校法人会計では、損益計算書ではなく、資金収支計算書を使用します。

設問

問1 A社の顧客コミュニケーションにおける課題を3つ記述しなさい。

・課題1:
・課題2:
・課題3:

問2 問1の課題解決に向け、A社へ提出する提案書に記載する施策について記述しなさい。

・施策の想定ターゲット顧客
・コンテンツやコミュニケーションに関する施策
・施策で使用するメディアと選定理由

問3 A社に提出する提案書のタイトル、提案の主旨(特徴)を記述しなさい。

・提案書のタイトル
・提案の主旨(特徴)

問4 A社へ提出する提案書をクロスメディアエキスパートとして記述しなさい。

【記述形式:A4・横書き・3枚】