クロスメディアビジネスは企画・提案から(第23期クロスメディアエキスパートの出題意図と講評)

掲載日:2017年4月28日
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ー第23期クロスメディアエキスパート試験の出題意図と講評ー

第23期クロスメディアエキスパート認証試験は、2017年2月26日(日)、東京・大阪を始めとした全国4会場にて実施し、128名の方が受験した。

クロスメディアビジネスは企画・提案から

本試験のメインは、架空の企業に関する与件文を読み、顧客の課題を洞察し、それを解決するコミュニケーション戦略の提案書を140分の制限時間内に作成する論述試験である。

今回は、中古マンションのリノベーションサービス企業に提案を行うという設定が出題された。

リノベーションサービスは、個性的で自由な空間デザインの住宅を、比較的安価に入手することが可能であり、近年注目されている事業である。
出題の企業は、創業10年目で独自のリノベーションブランドをうたい、首都圏にて3ヵ所のショールームを運営している。完成物件見学ツアーも積極的に開催している。これまで、中古マンション販売業者と協力し、業績を順調に伸ばしてきた。

しかし、リノベーションサービス自体の認知度が低く、その魅力が知られていない、ウェブサイトのアクセスが伸びていないなど、顧客コミュニケーションが十分でないという課題を抱えている。

そこで、リノベーションの価値を訴求し、ブランドを確立すること、ショールームへの来客増やイベント参加者増を図る新たなコミュニケーション戦略を求めている、という設定である。

出題意図と判断基準

本試験では、以下のような観点で提案内容が優れているかを判断している。

(1)ターゲットに応じたメディア選定が出来ているか
今回の主要ターゲットは20~30代の住宅一次取得者である。例えば、若年層へのアピールが見込めない新聞折込みチラシや雑誌広告は適切なメディア選択とは言えない。

(2)ウェブサイトへの集客増を図るコンテンツ提供を実現しているか
住宅購入やリノベーションに関心のある層にアピールするコンテンツ提供を提案し、実現できなくては集客増を見込むことはできない。

(3)有望顧客を絞り込む手段として、メディア間の連携・誘導を活用しているか
例えば、Webサイトにアクセスしたユーザーに資料請求やメルマガ購読のための会員登録を促し、登録者にイベントやキャンペーンの告知、冊子の送付をおこなうという施策が有効である。

(4)顧客との双方向コミュニケーションを想定しているか
従来のTV・新聞・雑誌を中心としたマスマーケティングは一方通行の情報発信だけしかできないという弱点があった。ソーシャルメディアの双方向性を活用することは、より密接なコミュニケーションが可能であり、コミュニティ化の推進も可能である。

講評

「Webサイトリニューアル」や「SNSサイトの構築」を考えるのであれば、魅力的で集客力のあるコンテンツを提供することが求められる。さらに、集客した客を他のメディアに誘導し、見込み客を絞り込むための施策が求められる。

チラシ・フリーペーパーを発行する際には、企画・編集をどうするか、配布先・方法、期待する効果についての記述も必要である。

例えば、
「ウェブサイトでリノベーション基礎知識や多数の完成物件画像を発信することで、中古マンションやリノベーションに関心ある層が、検索エンジンを通じて、このサイトにたどり着く。資料請求やウェブ会員登録を促し、登録者にはオリジナル冊子(DM)やイベント案内メールを送付する」

「完成物件の紹介動画や、物件ツアー動画を定期的に制作・配信する(動画マガジン)」

「SNS上に、このサービスの一番のファンである物件入居者の口コミサイトを構築し、自慢の画像や動画、お気に入り、購入予定者へのアドバイス等を発信してもらう→ファンサイトを中心としたコミュニティ化を推進する」

「ショールームでファミリー向けイベント(ミニパーティやミニセミナーなど)を開催し、その画像や動画をウェブサイトやSNS等で配信する」といった施策が考えられる。

これらのように、メディア連携・誘導、コンテンツの多メディア展開、双方向コミュニケーションを実現する提案を期待したい。

(JAGAT CS部 千葉 弘幸)