クロスメディア提案におけるコンテンツの重要性

掲載日:2017年11月21日
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<第24期クロスメディアエキスパート、論述試験の出題意図と講評>

第24期クロスメディアエキスパート認証試験は、2017年8月27日(日)、東京・大阪を始めとした全国7会場にて実施し、125名の方が受験した。

本試験のメインは、架空の企業に関する与件文を読み、顧客の課題を解決するコミュニケーション戦略の提案書を140分の制限時間内に作成する論述試験である。

■ハウスウェディング企業へのコミュニケーション戦略提案

今回は、ゲストハウスウェディングの企業に提案を行うという設定が出題された。

国内のブライダル市場は、大きな変貌を遂げている。
80年代まではホテルや専門の結婚式場で挙式・披露宴をおこなうスタイルが中心だった。
90年代にはカジュアル志向のレストラン・ウェディングがブームとなった。この頃、ブライダル情報誌が相次いで創刊されたことで、式場や費用に関する情報流通が飛躍的に増えた。

2000年代以降、独立したゲストハウスを貸し切りで運営するハウスウェディングがブームとなり、新興企業が急成長するケースも現れた。
さらに、2000年代後半以降はブライダル情報サイトも活発化している。ブライダルに関する一般常識や企業からの発信に加え、利用者からの詳細な費用や体験、評価がクチコミとして発信されている。

近年、人口減少や晩婚・非婚化、「ジミ婚」という風潮により、挙式・披露宴が減少する傾向がある。
その反面、一件当たりの挙式・披露宴の総額は、2000年頃から10数年で約1.5倍に上昇しているという調査結果もある。

出題企業のA社は、静岡県と神奈川県内に3拠点のゲストハウスをオープンし、夢と感動を与えるブライダルの提供を目指している。
しかし、各地域とも近隣のホテルや専門の結婚式場との競合が厳しく、事業は安泰とは言えない。

現在のA社の成約ステップは、ブライダル情報誌や情報サイトを通じてブライダルフェアへ誘導し、成約に至るケースと、結婚式相談所からの紹介が中心である。

安定した成約を維持するには、自社ゲストハウスの魅力を直に感じてもらえるブライダルフェアへの来場促進が最重要である。A社は、独自のメディア展開やコミュニケーション戦略によって、その魅力を伝えたいと考えており、新たな企画・提案を求めている。

■出題意図と判断基準

・出題企業の課題を解決するコミュニケ―ション提案となっているかどうか。

・ターゲットに応じたメディア選定が出来ているかどうか。
  (対象は婚姻予定者であり、中心は20~30代前後、あるいは40代まで)

・Webサイトへの集客増を図るコンテンツ提供や仕組みを実現しているかどうか。

・起点となるメディアから他のメディアへの連携や誘導を想定しているかどうか。
  (一方通行の発信ではなく、メディア連携やメディア誘導を実現できるかどうか)

・顧客との双方向コミュニケーションを想定しているかどうか。

主にこれらのような観点で、採点をおこなっている。

■講評

今回の出題事例は、ターゲットが婚姻予定者ときわめて限定されているという特徴がある。つまり、チラシやパンフレットを一般向けに配布するといった不特定多数向けの施策は、ほとんど意味をなさない。さらに、リピーターが期待できないという特殊なマーケットである。
出題内容としては、やや難易度が高いかという懸念があった。

実際の答案では、ターゲットの特性を理解し、適切なメディア選択とコンテンツ企画によって、課題を解決しようとする提案も多数見受けられた。

答案における施策の中心は、「Web(コーポレート)サイトのリニューアル」「SNSの活用」などである。

例えば、ブライダルフェアの来場者にフォトブックを制作してプレゼントするといった独自のキャンペーン企画、またはコンテスト開催によって写真や動画コンテンツを募集すること、さらに、SNSを通じてこれらの情報の拡散・シェアを狙うといった優れた企画提案もあった。

メディア連携やメディア誘導を図ること、効果測定によって人気コンテンツを把握し、改善を図るなど実務に即した提案や、InstagramやFacebookなどSNSを活用し、双方向コミュニケーションやファン作りを意識したものもあった。

今後も引き続き、このようなレベルの高い提案を期待したい。

(CS部 千葉 弘幸)