印刷ビジネスが明るい未来へ向かうための対応策を披露

掲載日:2014年11月17日

2014年10月3日(金)に会員大会であるJAGAT大会が椿山荘で開催された。JAGATinfo11月号の特集ではJAGAT大会で行われた『未来を破壊する』の著者の一人であるジョー・ウェブ博士の講演の概要を報告している。

今年のJAGAT大会は、例年6月に開催していたものを印刷白書の発刊とジョー・ウェブ博士の来日に合わせて10月に時期を移し、2009年以来の目白の椿山荘を会場にして開催された。

第1部ではJAGAT専務理事の相馬謙一が「JAGATからの報告」を行った。印刷市場が縮小傾向にある中で、21世紀は20世紀と同じような戦略では成長は危うい。しかし、印刷業は多様性を持ち、多くの企業や個人のお客様と強力な販売チャネルを持つので、チャンスに対応できる産業である。それが強みであり、これからは異業種と提携していくことで、多様なお客様へ、多様な生産物、多様なサービスを提供していくことが求められているし、それが可能である。そこで、「商品の多様性」「市場の多様性」[技術の多様性」「パートナーの多様性」の4つの多様性を上手に使っていくべきであるとし、さらに英国印刷会社の事例を紹介しながら、これからの印刷業の進むべき方向性の一つを示唆した。

続いて、JAGATの塚田司郎会長がKeynoteとして「価値創造の経営」について講演を行った。印刷会社は効率的な生産ができるよう設備を見直すことや、自動化に取り組むことが重要になる一方で、従来のビジネスを補完する新しいビジネスを創り出す必要があると述べた。さらに昨年のJAGAT大会で講演した早稲田大学ビジネススクール教授の内田和成氏の話を引用しながら、現在は異業種間の競争の時代であり、競争は同じ業界だけの問題ではない。既存の事業、既存の市場が成熟化で、新しいサービス、製品を作るなどの商品開発と、新しい市場開発をすることが必要になっている。現在の経営者は自分たちの市場、ビジネスでの問題に気が付くスピートが求められる、さらに、それに対してどう対処するかの意思決定のスピード、決めたことを進めるスピードを高めていくことが重要になる。今は顧客視点で新しいビジネスを創っていく実行のスピードを求められていると述べた。

続く講演ではJAGAT理事の郡司秀明が、「新たな需要を生むためのビジネス戦略-課題と実践」をテーマに行った。プリントオンデマンドビジネスを手掛ける米国イングラムグループのライトニングソースを見学した報告を中心にオムニチャネル対応など、これからのビジネス戦略に言及した。

第2部は『未来を破壊する』の著IMG_9427者であるジョー・ウェブ博士の講演が行われた。講演では、まずアメリカの印刷市場が紹介された。アメリカの印刷市場は15年ほどで年間出荷額の45%を失い、その間生産プロセスはオフセットからデジタルへシフトしている。この4年間でも事業数は4000以上も減少し、従業員数も4万5000人以上減っているが、従業員1人当たり利益は伸びており、利益は10年前のレベルに回復し、さらにそれが伸びている。これらの変化は業界の中の統合によるもので、合併や買収・売却、あるいは弱い企業が市場から退出したからであるが。利益が伸びたのは良い経営がされているからでもあると述べた。

一方で、ウェブ博士は、「印刷は生き残るといわれているし、私もそう信じているが、印刷がビジネスとして生き残るかどうかは別問題である」とも指摘した。では、印刷がビジネスとして生き残るためには、印刷業界がどう対応すべきかについて触れ、その中で商業印刷物はデジタルメディア成長の中で、デジタルとの連携は不可欠となることを指摘した。さらに商業印刷ビジネス戦略の枠組みとなる8つの枠組みを紹介し、生き残る企業はどんな企業かについて言及した。詳細についてはぜひ本誌11月月号でご確認いただきたい。

このほか特別企画として井上秋男氏の「GRAPH EXPO2014・World Publishing Expo2014」概要レポート、デジタル印刷最前線では、マイページシステムで問い合わせ、入稿、決済まで行う同人誌印刷の草分けポプルスを紹介している。

(JAGAT info編集 小野寺仁志)

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