新入社員に伝えたいこと

掲載日:2014年12月3日

新入社員に対する表現はどうあるべきか。通信教育「印刷業のための新入社員コース」の改訂では、まっさらな頭に知識を入れていくために、素直に受け入れ、伝えられる言葉になっているように努めた。

「印刷業のための新入社員コース」2014年11月大改訂

JAGAT通信教育は1971年の発足以来、「実務に即した内容を体系的に学習できること」を訴求ポイントとして、印刷産業に特化したコースを提供し、80%を超える高い修了実績を上げてきた。
毎月1日開講で随時受け付けているが、11月1日開講分からは「印刷業のための新入社員コース」の申し込みが急増している。内定者教育に活用されているからだが、実はこの11月に大幅改訂している。2015年度新卒者に対して、新しいテキストと課題を提供できてホッとしているところだ。

「印刷業のための新入社員コース」は1995年4月に開講し、導入企業は100社以上、受講者数は3000人を超えている。既存コースの中でも最も人気が高く、通信教育導入のきっかけともなる重要なコースだ。開講以来マイナーチェンジを重ねてきたが、定期的な改訂が行われてこなかったことから、印刷産業の現状にマッチしない部分が出てきていた。受講企業からも「今年も受講したいけれど、改訂しないのか」という問い合わせが寄せられていた。
多くの印刷会社が定期的に設備の更新を行うだけでなく、時代の変化に対応して経営革新を進め、積極的に新しい営業ツールなどを取り入れている。そういう業界に入ってくる新入社員に対して、改定前のテキストは古くさい業界というイメージを与えていたかもしれない。

Web時代の新入社員に伝わる言葉で、新しい情報を追加

せっかく改訂するのであれば、全くの新コースにして印刷文化の一翼を担う誇りをもってもらえる内容にしたいと考えた。しかし、よくよく考えてみると「新入社員コース」に盛り込みべき内容は大きく変わってはいない。テキスト3分冊は、Ⅰ 印刷産業のアウトライン(印刷の役割、印刷の歴史など)、Ⅱ 印刷物はどのように作られるか(印刷技術の基本)、Ⅲ 印刷会社と印刷の仕事(印刷会社の仕組みなど)というオーソドックスなものなので、基本構成は変えないで、印刷会社と新入社員の双方の期待に応える内容にブラッシュアップすることにした。

例えば、これまでの「テキストⅡ」ではオフ輪の説明として「ロール状に巻き取られた長巻紙(ウェブ)を印刷機械に通して、枚葉印刷機の数倍の速度で一気に印刷する」とあるが、ウェブと聞いてオフ輪を思い浮かべる新入社員がいるだろうか。そこで、今回の改訂では枚葉(sheet)に対する巻取紙(web)を説明し、Webには①織物と②蜘蛛の巣の意味があって、巻取紙は①から、Web(World Wide Web)は②から派生した言葉であることを注記した。
印刷技術の基本を概説した「テキストⅡ」の変更は、実はそれほど多くはないが、テキストⅠとⅢはかなり大幅に加筆修正している。「テキストⅠ」では、身近な印刷物の例などを現実に即したものにあらため、印刷製品・サービス分類も整理し直した。コンプライアンスや情報管理などの項目を拡充し、印刷メディアとデジタルメディアを対比することで、印刷メディアの魅力と今後の可能性を再確認できるようにした。
「テキストⅢ」では、ホウレンソウ・5W1Hなどの基本知識を加筆し、ビジネスメールやビジネス文書の基本などを具体的なものにし、かつ情報管理の重要性にも言及している。

実践的で役立つ教材を提供していきたい

テキスト改訂の基本方針として、情報の正確さやバランス、初心者が誤解なく理解できる内容や添削課題との整合性などに配慮し、教科書としての信頼性・品位を確保するために、誤字脱字や口語的な表現、あいまいな表現などを正すように努めた。添削課題は初心者向けの基本的な課題とし、テキストの理解に役立つように設問の主旨を明確にした問題文を提示し、クイズや引っ掛けのような設問はなくし、3回コースの全問題を新問題に変更している。
新入社員に対する表現はどうあるべきか。まっさらな頭に知識を入れていくために、素直に受け入れ、伝えられる言葉になっているかどうか。一方的な表現になっていないか、専門用語の使用は適切か、難しい言葉や曖昧な表現はないか。今回の改訂でどこまで実現できているかは、受講企業の教育担当者や受講者の皆様にぜひ声をきかせてほしい。

通信教育では、最新の技術動向を追いかけるよりも、基本的な知識を整理することに重点がおかれるが、今後とも定期的な見直しを実施することで、実践的で役立つ教材を提供していきたい。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)