【マスター郡司のキーワード解説】
 つぶやき的「RGB+CMYK混在入稿」

掲載日:2023年12月25日

比較対象はスマホ

今回はキーワードというよりも、(個人の)つぶやき的原稿になることを勘弁していただきたい。

今年1年間の大きな話題は「生成AI」だと思うのだが、コロナ禍以降の印刷業界には、印刷を取り巻く価値観の変化も大きいのではないか?と感じている。まず、紙の善悪についてだ。コロナ禍の真っ最中でも、紙を悪く言うことはなかったと思う。「紙は電気を必要とせず、どこでも手軽に情報をじっくりと見ることができる」という肯定的な感じであった。しかし、コロナ禍が終わった今、紙はスッカリ悪者扱いされている。今どき「電気を必要としない」などと発言しようものなら、それだけで話を聞いてはもらえないだろう。TBSテレビの日曜劇場「VIVANT」の劇中で、死の砂漠を越えて国境を脱出する際、「われわれにはソーラー充電器とスマホがある。これで生存率は格段にアップする」という阿部寛の印象的なセリフがあるのだが、そういうことなのだ。

私は藝術大学(日藝)でも教鞭を執っていて、変な講義内容で人気なのか(?)メインの写真学科だけではなく、デザインや美術、放送、映画、文芸学科の受講生も多く、「どう教えようか?」と常に頭を悩ませている。写真学科の学生は常日頃、教授から「グレーバランスとかシャドウの調子再現について細心の注意を払え」と言われ続け、写真評価の際には必ずファインプリントといってプリンターで出力する(印刷する)のだが、かつてはそれが写真の評価基準だったのだ(現在進行形?)。

だが私は、「素人(写真学科以外の学生たちも)さんは自分のスマホとしか見比べないよ」と念を押している。これは印刷業界にも言えることで、印刷発注者は自分のスマホと比較するのが自然な行為だ。もちろん色校正紙との比較はするだろうが、これはあくまでも個別の色チェックであって、もともとの欲しいイメージはスマホで見る仕上がりイメージだと思う。つまり、加算混合(自発光=ディスプレー)的なイメージなのである。この辺は、印刷業界も根本から考え直さないとイケない点である(では、どうするか?は、決して簡単ではない)。

本当にここだけの話だが(内緒?ナイショ!ですよ)、私のMacの白色点は現在5000Kではなく6500Kに調整している(スマホ用に合わせているワケだ)。もちろん昔は、5000Kできっちり紙に合わせていたのは言うまでもない。能書きをタレている分、実践もしていたのだ。しかし、白色点はイメージが大事であり、私の場合は「5000Kだとこうなる」くらいの想像はできるので、(スマホだったらこうなるという想像をするのではなく)紙ならこうなると想像してやっているのだ。すなわち、力点がRGBに移ったということだ。

最終報告はpage2024で

本題だが、本誌『JAGAT info』は2022年7月号からデジタル印刷化している。そして1年が経ったので、RGB入稿というか、色文字指定やチント処理をRGBでわざわざ指定(し直し)するのも面倒なので、この辺はCMYK入稿を残している。つまり、PDF/X-4による本格的なRGB+CMYK混在入稿にトライしているわけだ。

この入稿方法は、印刷業界で俗に言われている、再現色域を単に大きくするRGB入稿とは異なり、印刷に適しているCMYK入稿(色文字やチント指定)はそのままにして、データハンドリングをなるべくRGB中心にしようというものだ。具体的に説明すると、表紙回り(表1〜表4)はトナー機で印刷しているので、再現色域もそこそこ大きい。従って、RGB入稿で色調(子)も伸びやかに、スッキリとした仕上がりになっている。この部分は広告が多いので、RGB入稿してくれた広告主のみにということになるわけだ。

他方、本文は上質紙にインクジェットで印刷しているので、「色域再現がどうのこうの?」とまでは言えないが、現時点では表紙と本文共に印刷機の能力を目いっぱい使っての仕上がりを目指している。今後どのようにしていくのかはまだ分からないが、現時点では、良い悪いはヌキにしてJapan Color再現を各メーカーが一つの合格ラインとしているので、機械任せでも問題はないようである。もちろん、印刷機の能力をどのように使えばうまくいくのか?は試行錯誤中で、プロファイルの作り直しや設定値を変更しつつ実験している。仕事をこなしながら調整していくという手法だが、これが一番実務的なのだ。

他方、本文は上質紙にインクジェットで印刷しているので、「色域再現がどうのこうの?」とまでは言えないが、現時点では表紙と本文共に印刷機の能力を目いっぱい使っての仕上がりを目指している。今後どのようにしていくのかはまだ分からないが、現時点では、良い悪いはヌキにしてJapan Color再現を各メーカーが一つの合格ラインとしているので、機械任せでも問題はないようである。もちろん、印刷機の能力をどのように使えばうまくいくのか?は試行錯誤中で、プロファイルの作り直しや設定値を変更しつつ実験している。仕事をこなしながら調整していくという手法だが、これが一番実務的なのだ。

(専務理事 郡司 秀明)