会長の塚田より新年のご挨拶

掲載日:2024年1月1日

新年明けましておめでとうございます。昨年は3月に開催されたWBCで大谷選手の活躍もあって侍ジャパンが優勝し、日本中が歓喜に沸きました。また、5月に政府が新型コロナウイルス感染症を5類に認定したことにより、サービス業などの内需の回復が見られました。長かったコロナ禍での生活も終わり、再びかつての日常が戻ってきたことで、後半は経済も上向いて需要も戻ってくるのではと期待されました。しかしながら3年間にわたる需要減や諸物価の上昇、各種補助金の終了、3年前のゼロゼロ融資の返済の年であることもあり、年度予算は余裕のない企業も少なくなかったのではと予想されます。Zoomの浸透や新しい法律の施行、いまだに終わらないウクライナでの戦争やイスラエルとパレスチナの対立の影響などで、今後の印刷需要予測もやや不透明になっています。

現代はデジタル経済と実体経済が並行して走っている時代です。デジタルメディアでは検索のたびにエンジンが学習して個人の趣味嗜好に合った提案をするようになっているのに対し、印刷の方でもユーザーの購買履歴をRFM分析してバリアブルプリントでターゲットユーザーの興味を引くDMを作成したり、ニッチな分野でより少部数の本やパンフレットなどを提供することなどが求められます。そのためには、より一層コストと品質のバランスが取れた現実的なデジタル印刷機が必要になります。今年はdrupaの開催が予定されており、各メーカーからの新しい提案が期待されます。

さらに環境問題があります。IPCCの最新のレポートでは、世界平均気温は産業革命以前と比較して1.1℃上昇していて、パリ協定の1.5℃目標を達成するには従来の各国の温室効果ガス削減目標では足りないと指摘しています。国連のグテーレス氏は「地球温暖化ではなく地球沸騰化の時代の到来だ」、最近では「人類は地獄への扉を開けた」とも発言しています。需要の減少している現在、製紙メーカーは大量の水とエネルギーを消費する側から電気を作る側となり、また世界的にアルミの需要は旺盛なこともありPS版の工場も一部閉鎖されています。どんな印刷方式にせよ、必要以上に大量に紙や資材を消費することは、食品や衣料品のようにロスにつながり持続可能とはなりません。インキの乾燥では、電力消費量の大きいオフ輪のヒートセット方式やパッケージのUV乾燥も今後の課題です。

他の産業と同様に、印刷企業もDXや生成AIで業務効率を改善し、事業転換を進めていくことが求められています。page2024のテーマは「連携」です。印刷企業もメーカーも自社以外のリソースをどのように取り込んだらよいのか、変化の速い現代の市場の要求です。皆様のご来場をお待ちしております。

公益社団法人 日本印刷技術協会
会長 塚田 司郎