成長戦略を描く(JAGAT編)

掲載日:2024年5月7日

今年2月のpageカンファレンスでは「成長戦略を描く~事業承継と事業創造~」というセッションを担当した。

印刷需要の減少が続くなかで、自社の成長戦略をどうつくっていくかは、各印刷会社共通の課題といえる。後継者にとっては、資金や人材などの制約条件があるなか自社資産の継承と新事業の創造の両方が求められる。今まで通りでありたいという組織の現状維持バイアスも改革の障害となる。

本セッションでスピーカーの北田氏(株式会社CCG HOLDINGS代表取締役)が提唱されたのが先代の「型」を越える、業界の「枠」を超えるというアップデート経営である。これまでの成功体験にとらわれることなくお客様のニーズの変化にあわせて印刷業界という枠を超えて自社を柔軟に変化させていく必要がある。世間では、DX(デジタルトランスフォーメーション)が話題であるが、その前に以下のAX・BX・CX3つの変革が求められるという。

AX:アナタ(経営者自身)・トランスフォーム
BX:ビジネスモデル(事業戦略)・トランスフォーム
CX:カンパニーシステム(組織体制)・トランスフォーム
(詳細はJagat info4月号に掲載)

成長戦略が必要なのはJAGATも例外ではない。新型コロナ感染症が5類に移行後もグラフィック用紙の出荷高は対前年比で二桁マイナスが続いているなか、JAGAT会員向けに毎年行っている経営力調査では「将来的に重視したい事業領域」として「脱印刷」が約45%で最多回答であった(2022年度調査)。「脱印刷」を志向する印刷会社に向けてJAGAT(日本印刷技術協会)がどのようなサービスを展開すればいいのか?大いに自己矛盾をはらんでいる問いかけであるが、答えはやはりお客様(印刷会社)にあるだろう。

JAGATでは今年4月に組織変更(CX)を行った。従来のCS部と研究調査部がひとつになり研究・教育部となった。いままでは事業ごとの縦割り組織になっていたので、職員は、担当事業というフィルターを通してお客様に接していたが、組織が一つになり、お客様の課題を中心に据えて柔軟にサービス展開できるように変えていきたい。

縦割り組織から課題解決型組織へ

また、BX(ビジネスモデル・トランスフォーム)とは、「売り先」「売り物」「売り方」の3つの要素の一つ以上を変えることだという。
「売り物」「売り方」を変えるということでは、JAGATの商品・サービスに限らず、JAGAT会員同士が自社の強みや取り組みを売買できるプラットフォームを立ち上げたい。外注ネットワークではなく、新規商材の提案、多能工のための標準作業手順書など会員企業の知識と知恵が集まる場、かつそれらをマネタイズできる場づくりを目指したいと考えている。

そして、いま印刷業界が直面している困りごとは人材採用である。採用担当者からは、学生にとってそもそも印刷業界が就職先の候補から外れているというような声を聞く。時代にあわせて進化を続けている印刷会社の魅力を発信するようなコンテンツづくりを行い、印刷物、デジタルのプラットフォーム、そしてpage展というリアルのイベントと結びつけながら支援ができたらと考えている。

(研究・教育部 花房 賢)