事故を未然に防ぐスプレーパウダー使用の注意点

掲載日:2018年8月10日

枚葉機で使用されるスプレーパウダー(以下パウダー)は印刷用紙の裏移りを防ぐために重要な役割を果たしており、その使用量の調整と装置のメンテナンスをしっかりやらないといけない。

●パウダーの変遷
出版・商業印刷用途に使用される枚葉機のパウダーは、排紙部で印刷紙面上に均一に散布される。昔は裏移り防止対策として植物の種を粉状にして使用していた。しかし、自然のものなので数に限りがあり高価であった。また、タルクや貝殻を砕いたものを使用していた時期もあったが、パウダーの大きさにバラツキがあり角があった。また装置の痛みや紙面上のキズ及び人体への影響を考えると課題があった。今では、デン粉を原料にしたパウダーが使われている。

●撥水性と親水性の2タイプ
パウダーの大きさには10μから30μのものがある。その中でも大きく分けるとシリコンでコーティングされている撥水性のものとコーティングしていない親水性のものがある。これらの違いは水を弾くか水に馴染みやすいかということだ。撥水性のパウダーは滑りやすく、湿気を吸いにくく加工している。しかし、ブランケットの表面にパウダーが堆積しやすく、まめに洗浄回数しないといけないので親水性のパウダーを使用している会社が多い。現場ではブランケットへのパウダーの堆積を嫌う傾向があるようだ。

●ノズルを定期的にメンテナンス
パウダーの噴射装置は印刷用紙の面積に合わせて散布量をコントロールして均一にする役目がある。現在ではノズルの形状が扇形ではなくパウダーを直進させるタイプのものが使用され、ノズルの数を増やして散布して筋を無くし付着効率を上げる設計になっている。均一に散布できないと用紙が一定の高さになった時に偏ってしまう。
ノズルが詰まる一番の要因は印刷機内のオイルミストがパウダーにくっついてしまうことだ。印刷会社によりパーダーの使用量と機械の稼働率は違うが、一般的に月に1度は装置のエアーブローをして、年に1度は分解掃除をしておくと目詰まりを防げる。

●オペレーターが作業する上での注意は以下の通りである。
(オフセット印刷技術 作業手順と知識 より)
①使用量はなるべく最小限にする。絵柄面積の少ないもの、インキ皮膜が薄く紙クセがないものはスプレーパウダーなしで印刷できる。
②紙クセ、折りクセがあるとその部分が裏移りするので、これらを付けないように注意して用紙を扱う。
③スプレーパウダーは湿気を吸収して固まりやすいので、使用途中のものは袋をしっかりと閉じておく。
④スプレーノズルは詰まることがあるので、作業開始前に散布状態を確認する。
⑤ブロワの吸い込み口のフィルタを清掃する。
⑥パウダスプレー装置と集塵機の気流によって、デリバリで搬送途中の刷り本のくわえ尻がばたつき、擦れることがあるので刷り本の状態を見ながらエアー量を調整しる。
                              (CS部 伊藤禎昭)

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