第27期クロスメディアエキスパート 論述試験の出題意図と講評

掲載日:2019年5月27日
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2019年3月17日(日)、第27期クロスメディアエキスパート認証試験が実施された。第2部の論述試験は、架空の企業に関する与件文を読み、顧客の課題を解決するコミュニケーション戦略の提案書を140分の制限時間内に作成するものである。

8ページほどの与件文には、ある企業の事業推移や市場環境、競合企業の動向などが記述されている。提案ではターゲットを的確に絞り込み、適切なメディア選択、メディア連携を実現し、顧客の課題解決をおこなうことが求められる。

オーダースーツを製造・販売する企業への企画・提案

今回のテーマは、「オーダースーツを製造・販売する企業」という設定であった。新ブランド構築に際して、新たなコミュニケーション戦略を模索しており、企画・提案を求めている、という設定である。

提案先は、かつて大手百貨店のオーダー部門のスーツ製造(下請け)に特化していた企業である。早くから中国に製造拠点を立ち上げ、アパレル用のCAD/CAMを活用して効率化を実現していた。
百貨店の破たんによって経営危機に陥ったが、格安のオーダースーツ直販ビジネスに切替えることで再建を果たした。
しかし、大手紳士服チェーンなどオーダースーツ参入業者が増え、競合が激しくなったため、より高級感のある新ブランドを創設した、という設定である。

大学生を始めとした若者や女子向けに新ブランドを浸透させるには、どのようなメディア、コンテンツを用意すべきか。SNSや動画配信を通じて双方向コミュニケーションを実現するには何をすべきか。会員登録促進のため、どのような施策を講じるのか。集客や認知を広めるイベントの具体的なプランはどうするか?
クロスメディアエキスパートの論述試験では、これらを提案書としてまとめることが求められる。

提案書の採点基準

提案書の採点においては、以下のような記述が重要視されている。また、これらのポイントは実務上でも有効である。
今後、取り組む際には、このような点に留意するとさらに完成度が上がるだろう。

(1)コンテンツの企画・制作と発信

Webサイト、冊子・フリーペーパー、チラシなどどのメディアを使用するにしても、どんなコンテンツを発信するかが重要である。Webサイトの改定を行うのであれば、どのようなコンテンツを誰に向けて発信し、どのような効果を狙うのか。訴求力のあるコンテンツをどのようにして準備するのか。コンテンツの企画・編集、制作費用は適切かどうかも重要である。

(2)メディア選定理由

メディア選定理由を問う設問があり、なぜそのメディアが適しているかを回答することが求められている。つまり、メディアの特徴(長所・短所)を正しく認識し、それを活用しているかどうかが問われている。

(3)提案書の挨拶文

挨拶文であるため、分析・評論するような文体は避けるべきである。例えば、顧客の業績や状況に関する認識を表現する場合、リスペクト感が伝わるような記述が望ましい。

(4)消費行動モデルに即した提案内容

消費者・生活者の心を動かすには、消費行動プロセスモデルに即した方法が有効である。インターネット時代に有効とされるAISASモデル(注意・関心・検索・行動・共有)やAISCEAS(注意・関心・検索・比較・検討・行動・共有)に即した施策は効果的である。また、SNSやコンテンツマーケティングに即した消費行動モデル(SIPS、DECAX)も有効である。

消費行動プロセスにおける位置付けを明確にすることで、提案内容の説得力を高めることができる。

(5)コミュニケーション施策の全体設計と自社の強み

例えば3つの課題に対して、バラバラに施策を立て、それらを並列で実施するだけでは大きな効果を期待できない。複数の施策の連係によって相乗効果を生み出すような記述が期待される。
また、自社(提案する側)の強みをアピールすることも重要である。いくつもの提案の中から自社の提案を採用することが、もっとも適切で効果的であることを伝えなければならない。

(6)スケジュールと費用

スケジュールは費用算出の根拠ともなる。実務上でも、工数配分をベースに費用を算出することが多い。スケジュール上の規模感が、結果的に費用に反映されていると提案の妥当性が増す。例えば、企画・設計の期間や費用を適切に見込んでいるか、Webサイトの維持・改善の工数を見込んでいるかどうかなども、妥当性を示すポイントとなる。

印刷物を使用する場合、原稿を受領してデザイン制作をするのではなく、印刷物の企画・原稿執筆・データ制作を含める必要がある。さらに、印刷・製本して納品することがゴールではなく、エンドユーザーへの配布方法や費用を見込む必要がある。

(7)競合他社との差別化

提案先とその競合他社との差別化は、もっとも重要な項目の1つである。最終的に「競合他社との差別化」を実現する提案でなければ、採用されることにはならない。提案書の中で強調されていなければならないポイントである。

講評

画一的でサイズやフィット感に制約のある既製スーツと比較すると、オーダースーツは魅力的な製品である。価格が同等であれば、関心を持つ者は少なくないだろう。
就職活動などで初めてスーツを購入する男女学生が、オーダースーツを通じてこの企業のファンになれば、リピート購入だけでなく、周囲へのインフルエンサーになることも期待できる。そのための仕掛け作りが求められている。

展示即売会を開催し、集客することができれば、オーダースーツを実体験するだけでなく、購入に結びつくことになる。ブランド力のあるメーカーや店舗であれば、そのようなことも可能であるが、新興メーカー・ブランドでは容易ではない。

例えば、店舗での採寸から完成・試着までのプロセスを動画で視聴できれば、オーダースーツの実態を知ることだけでなく、フィット感や満足度などを疑似体験することになる。
さらには、オーダースーツの購入者自身が画像や動画を発信し、コミュニケーションを図る場を設けることで、ユーザー側の評価を浸透させることが可能である。

解答における施策には、大学構内のPOP広告からスマホを通じたWebサイトへの誘導、動画による疑似体験や基礎知識の発信、SNSの活用によるコミュニケーション促進などがあった。InstagramやTwitter、FacebookなどのSNSを活用し、双方向コミュニケーションやファン作りを意識したものも多かった。
AISAS、AISCEASなどの消費行動モデルを反映したシナリオがあると、さらに説得力が上がるだろう。

(資格制度事務局)

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