経済効果も含めて大成功のラグビーワールドカップ

掲載日:2019年11月22日

日本初開催のラグビーワールドカップは、9月20日から11月2日の決勝までの44日間、日本各地で計48試合が行われました。その経済効果は4372億円、訪日外国人客は40万人とされます。(数字で読み解く印刷産業2019その8)

数字で読み解くラグビーワールドカップ2019

大型台風の影響で48試合中3試合が中止となりましたが、日本代表はロシア、アイルランド、サモア、スコットランドを次々に破って、予選グループを全勝で1位通過し、準々決勝で南アフリカに敗れたものの、1試合ごとにラグビーファンを増やしていきました。

今年話題になった言葉に贈られる「新語・流行語大賞」のノミネート30語のうち、ラグビーワールドカップ(W杯)2019に関連する言葉として、「ジャッカル」「にわかファン」「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」「笑わない男」「ONE TEAM(ワンチーム)」の5つが選ばれています。

タックルされて倒れた相手のボールを奪うプレーが「ジャッカル」と言われても、「にわかファン」には何のことかわかりませんが、「一生に一度」の体験を求めて大勢の観客が会場へと足を運び、「笑わない男」の顔も広く知られるようになりました。

「ONE TEAM」で初のベスト8進出を決めた日本対スコットランド戦の観客動員数は6万7666人、全試合の観客動員数は延べ170万4443人(1試合平均3万7877人)で、チケット販売枚数は184万枚(販売率99.3%、中止の3試合を含む)に達しました。

経済効果は4372億円

「ラグビーワールドカップ2019大会前経済効果分析レポート」では、大会開催による経済効果を4372億円と試算しています。

この試算は2017年9月現在における情報や想定に基づくもので、スタジアム等のインフラ整備、大会運営、観客による消費需要増加額を積み上げ、次に産業連関分析を用いて第一次・第二次間接効果を含めた経済効果を試算しています。

2015イングランド大会の247万人、2007フランス大会の219万人に次いで、日本大会の入場者数は150万~180万人の予測でしたが、台風で中止となった3試合が開催されていれば、180万人は確実に超えていたことになります。

同レポートでは、W杯を目的とした訪日外国人客40万人、その消費による経済効果を1057億円と予想し、「大会後の経済効果を見据えた取組みの実施により、本大会による経済効果はさらに増大する」としています。

日本政府観光局(JNTO)によれば、9~10月のW杯出場国からの外国人旅行者数は76万4100人で前年同期比29.4%増となりました。このうち、優勝した南アフリカからの旅行者は9500人で5倍近くに増え、日本と1次リーグで対戦したアイルランドからも2万1200人と約5.5倍に増加しました。また、イギリスからは11万8000人と、85.1%の大幅な増加となりました。

ラグビー観戦にビールは欠かせないといわれますが、W杯のワールドワイドパートナー「ハイネケン」の9~10月の国内販売量は、試合会場での販売や大会ロゴを使用した販促などが功を奏し、前年同期比2.8倍と大幅増を達成しました。

また、英国式パブHUBを展開するハブの10月度の月次速報によれば、全店舗の売上高(前年同月比)125.6%、客数(同)117.7%と好調でしたが、9月度より売上高で1ポイント、客数で3.6ポイント縮小した要因を「台風19号による、売上指数の最も高い土曜日であり且つラグビーイベントの複数試合が予定されていた10月12日(土)の休業(関西および九州の15店舗を除く96店舗が休業)の影響」とみています。

全国各地が会場となり、地方に長期滞在する人も多かったため、ビールだけでなく、宿泊施設など各方面に大きな経済効果を及ぼしたようです。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

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