第29期クロスメディアエキスパート論述試験の出題意図と講評

掲載日:2020年6月18日
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第29期クロスメディアエキスパート認証試験は、2020年3月15日(日)、東京・大阪など全国4会場で実施された。第2部論述試験は、架空の企業に関する与件文を読み、顧客の課題を解決するコミュニケーション戦略提案書の内容を記述するものである。

鋳物ホーロー鍋製造販売企業への企画・提案

テーマは、「鋳物ホーロー鍋製造販売企業への企画・提案」である。
提案先は、かつて工業用部品の下請け鋳造を主体とする企業であった。海外企業との競合が厳しくなったため、精密加工技術を活かしたオリジナル製品の開発を模索し、鋳物ホーロー鍋の製造販売へと転身した。

欧州製の鋳物ホーロー鍋は、高価ながら料理ファンや料理専門家に支持されている人気商品である。
提案先の企業は、高度な精密加工技術によって無水調理が可能なホーロー鍋を世界で初めて製品化し、大ヒットとなる成功を収めた。
今後も、製品群の拡充に加え、さらなる認知度アップやブランド浸透を図りたいと考えている。無水調理の特徴を活かした料理レシピや美味しさを幅広く知ってもらいたい。工場にショールームを併設し、工場見学や無水調理の体験コーナーへの集客を通じて、より多くの人に鋳物ホーロー鍋の魅力をアピールし、ブランドを浸透させたいと考えている、という設定である。

そのためにはどのようなコンテンツを用意し、どのようなキャンペーンを行うべきか。SNSや動画配信をどのように活用するか。
これらを提案書の要素として記述することが求められている。

新解答方式のポイントと採点基準

以前の論述試験はフリー形式で提案書全体を記述するものだった。2019年8月の前回試験より、提案書の要素を所定のフォーマットに記述するという設定に変更されている。
すなわち、「課題設定」「ターゲット」「提案の骨格・方針」「施策内容」「スケジュール」「概算見積」「タイトル」「序文」「施策の総合的効果」という項目で設問されている。
どのような意図でどんなコンテンツを用意するか、共有・拡散を促す仕組みは何か、競合他社との差別化などを記述することが求められている。複数メディアの連係を記述せよという設問は、カスタマージャーニーマップの内容を問うものである。

講評

施策内容としては、無水調理の特徴を活かしたレシピをコンテンツとして、その魅力を発信する、レシピコンテストを開催するものなどの解答が多かった。
例えば、ある答案ではファミリー層にアピールするための親子料理イベントの開催やSNS上で親子料理日記の投稿・出版化などが挙げられていた。他には、オリジナルレシピコンテストや調理方法の動画配信を通じてファン育成を図ること、料理愛好家の男性をターゲットにしてSNSでの投稿を促すこと、工場見学やショールームの体験レポートを集めることが記述された答案もあった。

実行スケジュールや概算見積は、表形式のフォーマットに記述する形式となっている。スケジュール項目と見積項目が一致していなければ、見積の信頼性や妥当性に欠ける印象があり、減点となってしまう。

印刷物の製作は、多くは依頼や相談があって実現方法を考えるという典型的な受注ビジネスである。それに対してクロスメディアビジネスは、自ら企画・提案することで顧客の課題を解決する能動的な行動が要求される造注ビジネスだと言える。

この論述試験では、限られた時間内に与件文を読み、提案先企業の状況や市場環境や課題を読み取り、その上で効果的な施策や方針をまとめることが求められる。
しかし、どのようなコンテンツを用意し、どのようなメディアを通じて発信するか、生活者への共有・拡散をどのように実現するかなど、基本的な企画・提案力があれば、難しい問題ではないはずである。
「デジタル×紙×マーケティング」ビジネスを推進し、顧客の課題を解決する道を探るためのトレーニングとして、この試験を活用してもらいたい。

(JAGAT 資格制度事務局)

【鋳物ホーロー鍋の製造・販売】第29期クロスメディアエキスパート 論述試験(与件)

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