コロナ後に、印刷ビジネスが生き残り出来るのか?

掲載日:2021年1月21日

コロナによる価値観の変化は著しい。第1次緊急事態宣言の時には折込チラシをはじめとした宣伝用印刷物は皆無になってしまったのだが、スーパーの売上げは絶好調という印刷業界からすると散々な結果だった。

もちろん、巣ごもり需要に呼応して、調子が悪い悪いとずうっと言い続けられてきた出版印刷が比較的好調である。比較的と言っているのは「鬼滅の刃」が出版の数字を押し上げているのが事実だからだ。「鬼滅の刃(無限列車編)」を私もガラガラの映画館で観て、確かにテレビ版と比べるとまとまった話ではあるが(TV放送は見ていないが、プライムビデオで観た)、正直そこまでヒットした要因は理解出来ず、やはり「鬼滅」もコロナ特需の一つに入るというのが私の見解だ(コロナが無ければ、そこそこのヒットで終わっていたのでは?というイメージ)。コロナで交流範囲が狭くなり、特定のものが注目を集めたりすることをエコーチェンバー現象というのだが(グローバルの逆、まさしくwithコロナの世界)、鬼滅もこの現象の結果では?というのが私の見方だ。同様にWebも世界が広まると言う見方もあるが、プルメディアとしてみると、インターネットと言えどもやはり狭い世界だろう。

第1次緊急事態宣言が解除された反動で商業印刷需要も少し増えたが、Webだけで売上げがキープ出来ることが発注者側に体験出来てしまうと「商業印刷の未来は?」と気が重くなってしまう。
「本当に効果のある印刷物」で無ければ、印刷物離れが加速するというのはJAGATが言い続けてきていることだが、その方向性は加速するだろう。「良い印刷物なら大丈夫」と印刷会社の人は言うのだが、レストランのメニューだって前なら豪華で写真が美しいものが良かったが、今は注文を書き込めて会話しないとか、顧客が変わったら捨ててしまう形式の方が喜ばれている。価値観が変わっているのだ。

「2月はまるまるpage月間」を締めくくるオンラインカンファレンスは、印刷物の価値を高めることにフォーカスしているのだが、特にクロージングセッション【C9】「コロナ後の印刷業界をうらない、未来をどのようにリセットするか?」では、印刷物の効果や価値に早くから注目して、ダイレクトマーケティングを印刷物に持ち込んだフュージョンの花井会長を招いて、徹底的に議論したいと思っている。フュージョンはコロナ期における人の移動にまで注目して、どのように印刷物をばらまくか?印刷物を販売に活かすか?まで、印刷発注者にサジェスチョン出来るマーケティング力を有している。単なるマーケティング会社と異なるのは、実際の目を引く紙の印刷物を作って実戦でも成功しているのだ。今年の年賀状は封書で届いたのだが、「ビリビリに破いてください」という但し書きがあり、その通りにすると中からしっかりした厚紙の年賀状が出てくるという代物だ。「これで少しはコロナで溜まったストレスを発散してください」というものなのだが、そんなアイディア満載のDMを得意にしていて、学習院大学をはじめとした学生集めにも効果を残している。 このようなカンファレンス満載のオンラインpage2021もリアルが中止になってしまった今回は、家で会社でゆっくりコーヒーでも飲みながら活用していただきたいと切に願っております。

(JAGAT専務理事 郡司秀明)


関係カンファレンス
【C1】オープニングセッション
コロナで変化した世の中の新常識について語り、対策を考える

【C9】クローズドセッション
コロナ後の印刷業界をうらない、未来をどのようにリセットするか?