「根拠をもって業務にあたる」自信につながる資格取得への取り組み

掲載日:2021年8月5日
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DTPエキスパートが2段階制となり、実技試験の評価基準としてデザイン・レイアウト力の比重が高まった。学科・実技の合格者であるマイスター取得者のスキルを幅広く知っていただきたく、試験の合格者提出物をWeb上で公開している。今回提出物公開にご協力くださった米子 美依子 氏に資格取得への取り組みについてお話を伺った。

第55期DTPエキスパート・マイスター取得者

米子 美依子 氏

瞬報社写真印刷株式会社 東京デザイン室

 

これまでの仕事の経歴や現在の業務について教えてください。

事務職として瞬報社写真印刷株式会社に入社し、総務部に10年勤務していました。

DTP部門のDTPオペレーターが産休に入ることになり、人員補充が必要となって業務未経験のままDTP部門へ異動になりました。もともと趣味で同人誌を発行していたので、趣味の範囲では漫画や印刷に関する知識はありました。そのため事務職の頃から社内で時々イラストを描く仕事を頼まれることがあり、異動につながったのかもしれません。

DTPオペレーターになった頃はMac OSがOS9からOSⅩになる過度期でもあり、関連ソフトウェアも古いものから最新のものまでさまざまなバージョンを駆使しなければならない時期でした。当時は自分にとっても制作環境としてもあまりに変化が大きく、訳も分からないまま多くのことを必死で覚えていました。ベテランのオペレーターの代替として素人が入ったので、現場の周りの方々は大変だったかもしれませんが、温かくサポートしていただきながら実務経験を積みました。

DTPオペレーターを数年勤めたのち、工場の閉鎖に伴って今勤務しているデザイン室に異動し、現在デザイン業務に携わって5年ほどになります。オペレーターをしていたときはDTP部門が印刷機の近くに配置されていたこともあり、直接印刷機や印刷物に触れる機会が多く、印刷トラブル事例なども見聞きしていました。デザイン業務に携わる前にそうした経験をしていたことが、現在の業務にも役立っていると思います。

最近の仕事としては、お客様と直接やりとりをしながら定期刊行物などの制作管理と実制作を行ったり、ポスター・カタログなどのデザイン案件やイラストを描く業務も行ったりしています。

日々の仕事で、あるいはこれからの仕事をするうえで課題を感じていることはありますか?

デザインは明確な答えがないというところに、毎回辛さを感じます。デザインは納期などのリミットに合わせて仕上がりの目処を立てるのが難しい業務です。お客様に気に入っていただける仕上がりにしたいのですが、必ずしもセオリー通りのものが選ばれるとは限らないので、毎回その点には迷いがありながらも業務にあたっています。デザイン業務に正解への近道はないので、経験と知識を積み重ねていかなければならないと思っています。

DTPオペレーターの頃から、「根拠をもって業務にあたる」ということをテーマ、信念としています。根拠があれば相手に説明はできる。その根拠を明確に持つために知識を積んでいく必要があると思っています。こうした迷いや直しを繰り返した結果提示したデザインを発注者の方に気に入っていただけると、苦労は報われますね。

DTPエキスパート取得に取り組まれた経緯・動機について教えてください。

弊社では社員にDTPエキスパート取得を推奨していまして、以前から取り組んでみたいとは思っていました。

とはいっても学科と実技両方に一度で合格するというのはハードルが高く、特に業務の繁忙期に取り組むのは難しいかなと思っていたところ、昨年から2段階制になり、とりあえず学科だけでも合格できればと受験に前向きになれました。

また昨年はコロナの影響で仕事以外のことが何もできない状態にあり、資格取得に向けた時間を確保できたことも理由の一つです。

DTPエキスパート資格への取り組みに際して、どのように学習を進められましたか?

資格取得者である上司から、資格者優待で入手できる模擬試験をいただき、できるだけ多くの試験問題に取り組むようにしました。その他関連の解説書籍も購入し、徹底的に読み込みました。実業務で関わってきたことはおおよそ理解できたのですが、そうでない分野については問題や解説を読んでも頭に入らず、一つ一つの用語を調べるところから始めて理解する、ということを繰り返しました。

DTPや印刷、カラーマネジメントなどは実業務に関連するのでなじみがありましたが、Web、特にシステムに関するところは普段の業務で用語に触れることもなかったので、一から学習しなければならない状態でした。

また所属しているデザイン室では朝礼の際、日替わりで一問ずつエキスパート試験の問題が出されて、あてられたメンバーが答える、という取り組みをしています。東京のデザイン室6名だけでなく下関本社のデザイン室2名ともオンラインでつなぎ一緒に行っています。やる気が出てくると朝礼でのちょっとした学習の場は頭に入りやすく、よい機会になりました。

実技試験に取り組まれての感想や、大変だったこと、工夫されたことなどありますか?

実技試験の内容は、日ごろの実業務と近いかたちで提示されていると思います。ただし実務では2~3日で形にしなければならないこともあるのですが、試験では学科試験日以降4週間後の提出なので、じっくり取り組むことができました。

試験対策としては、どこまでが求められる基準なのかということには気を遣いました。普段上司から指摘を受けている点を思い起こしながら、改善を重ねました。受験した3月は繁忙期なので、日中は会社で実務、帰宅後は自宅で試験課題というかたちで寝不足になりながら取り組みました。実務に近い試験なので、現実味があってやりがいがある内容だと思います。

優秀提出物

第55期実技試験での米子氏提出物

DTPエキスパート資格を取得して変わったことや、今後目指していることはありますか?

日ごろ後輩たちに指導する立場なので、面目が立ちましたし、自分自身としても達成感が得られ、自信につながりました。 デザイン室6名のうち3名が若手なので、会社からは彼らを引っ張っていく立場で仕事することを求められています。元来リーダー的ポジションは苦手で、ひたすら作業に没頭したいタイプなのですが、自身の担当業務を持ちながら、他のメンバーの制作スケジュールや業務にも気を配り、仕切っていかなければならない。それが今後の課題です。

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実は当初米子さんにインタビューのお願いをしたところ、人前でお話しするのが苦手、ということで迷われていたのだが、会社側からのリーダーとしての期待と後押しもいただき、お引き受けいただけることとなった。「今回のインタビューも慣れないことへの挑戦の一つです。」とひとつひとつ言葉を選びながら丁寧にお答えいただいた。

プロフェッショナルとして認証されたことが自信につながり、リーダーとしての立場が人を創る、そうした好循環が生まれているように感じたインタビューであった。

インタビュー・まとめ JAGAT資格制度事務局 丹羽 朋子