印刷業定点調査 各地の声(2021年6月度)

掲載日:2021年7月29日

4月の売上高は+14.3%。15ヵ月ぶりのプラスでコロナ禍以降の最高になった。
ただしもちろん昨年4月は同基準対比の対象としてふさわしくない面もあり、2019年4月と比べた実質は△7.1%とやはり厳しい。

地域別では、首都圏(+17.7%)は2ヵ月連続のプラス。名古屋圏(+16.5%)は14ヵ月ぶりのプラス。一方、一時期感染拡大が全国最悪レベルになった大阪圏(+7.2%)は首都圏・名古屋圏と比べて回復度合いが約10ポイントも低くなっている。

業種・業態別では、商業印刷(+23.7%)が3ヵ月連続でマイナス幅を縮め、急回復して2020年1月以来のプラス。他の業種と比べても需要が抑制されていただけに、期末の駆け込み予算消化が活発で4月へのズレ込みも観測された。出版印刷(+7.5%)は6ヵ月ぶりのプラス。
総合印刷(△0.9%)は2021年1月から2月にかけて商業印刷に比べて回復度合いは10ポイント近く先行していたが、全体が大きく回復し始めた3月以降はむしろ商業印刷に水をあけられた。地方より都市部の回復が目覚ましいともいえるが、都市部の方がコロナ禍の影響が深かったので回復の差というより単に表面的な反動増の差と見た方がいい。たとえば紙器・事務印刷(△2.8%)はマイナスだが、昨年4月(+1.4%)はコロナ禍の影響がまだなくプラスだったことによる見かけ上の低さである。

規模別では、29人以下(+17.0%)、30~49人(+19.8%)、50~99人(+11.8%)、100~299人(+9.6%)、300人以上(+4.3%)と、従業員規模が小さくなるほど回復度合いが大きかっ た。受注件数(+14.0%)は19ヵ月ぶりのプラスを回復した。しかし2019年と比べれば△12.7%と厳しい結果であり、これを実質と捉えて経営に臨むべきであろう。
用紙(+6.1%)、インキ(+1.4%)、CTP/PS版(+5.7%)など材料仕入額も伸びた。とは言っても売上高ほど伸びていないため、4月は印刷以外の商材が伸びた可能性もある。労働時間(+2.8%)は16ヵ月ぶりに伸びた。

 

【印刷会社経営者の声】

茨城:商業
Pマーク更新審査が控えています。コロナ禍により対面作業の減少や在宅ワークが進み、今期はセキュリティにおいても新たなルール作りや管理体制の見直しなどがありました。

 

東京:事務
朝礼は毎日部門毎に、昼礼は全社員で情報共有をしていますが、最近1割以下も伝わっていない事に気付いてきた…。日頃の課題意識や行動力など、流れ作業で仕事をさせている事の毎日の積み重ね方を工夫しないと、いよいよ不味いぞと!

 

神奈川:商業
相変わらずコロナの影響が続きますが、4月は年度末だった3月のスライド分もあり、昨年と比べて仕事量はありました。一転5月は低調で厳しい状況。印刷以外のWeb、動画の案件が増えてきています。

 

長野:出版
コロナの影響からか繁忙の集中が以前より激しい。

 

岐阜:総合
宝くじに当たるよりは確率は高いと思い「事業再構築補助金」を申請した。新分野展開や事業展開など、チャレンジする中小企業に補助いただけるのは嬉しいが、裏を返せば中小企業の淘汰を促し生産性向上を図ろうとする政府の思惑が見え隠れする。

 

岐阜:その他
うまくいかないからと試合中にラケットを壊す選手もいるが、うまく刷れないからと機械を壊して欲しくない。日頃から機械をいたわり、労いの声でも掛ければ機械は必ず応えてくれる。科学的に証明できないかもしれないが、私はそう信じている。

 

愛知:出版
緊急事態宣言が発出され、変異株による感染拡大も心配される中、お客様もコロナ禍の環境に慣れ仕事は動いています。でも先行きは不透明!

 

大阪:商業
4月は企画・デザイン・Webの外注費が紙の仕入れを上回る。印刷は5年間で確実に下がっているが、Web、AR、動画、ICTは5年間で確実に増えた。Web、AR、動画、ICTはコロナ禍でさらに伸びた。

 

和歌山:商業
当地においても新聞離れが顕著である。これから県版が廃止され、支局も閉鎖されよう。折込チラシ印刷の事業構造転換を真剣に考察するべき時機が来た。

 

岡山:商業
ようやく持ち直してきたかなと思っていたら、第4波の緊急事態宣言でまた冷え込む。受注がピタリと止まりました。苦しい。しかし上を向いて歩こう。

 

山口:事務
せっかくの地元での聖火リレー、コロナ感染拡大のために開催4日前に中止が決まってガッカリです。2020東京オリンピックは無事に開催できるのでしょうか。

 

熊本:商業
前年同月は1回目の緊急事態宣言の影響を大きく受けたため、あまり参考にはできない。一昨年の数字と比べて良くないと捉えている。減った仕事もあれば増えた仕事もあるが、特定の商品に特化し過ぎていなかったことが奏功した面もある。

 

(『JAGAT info』 2021年6月号,印刷経営ウォッチング,p60-61より抜粋して要約)