印刷業定点調査 各地の声(2021年9月度)

掲載日:2021年10月25日

7月の売上高は+2.7%と2015年8~11月以来の4ヵ月連続プラス。ただしコロナ禍前の2019年7月と比べた実質は売上高△14.8%、受注件数△20.7%。依然として10~20%減で推移している。2019年比で見ると売上高は4月をピークに3ヵ月連続で減速した。感染第5波による緊急事態宣言発出もあって、実質的な印刷の回復の足取りは次第に弱くなっている。

地域別では、首都圏(2020年比:+9.1%、2019年比△12.4%)は5ヵ月連続のプラス。名古屋圏(+3.9%、△16.9%)と大阪圏(+5.1%、△13.7%)は4ヵ月連続のプラス。現時点であまり顕著な地域差は見られない。

業種・業態別では、商業印刷(+7.0%、△16.0%)が4ヵ月ぶりに1桁成長に減速した。出版印刷(△5.4%、△12.9%)は4ヵ月ぶりのマイナスに後退。総合印刷(△0.9%、△18.0%)はコロナで落ち込んだ昨年を2ヵ月連続で下回った。紙器・事務印刷(△1.0%、△11.1%)は3ヵ月ぶりのマイナス。19年比で見ると落ち込みが比較的小さいのは紙器・事務印刷と出版印刷、大きいのは商業印刷と総合印刷になっている。

用紙(+8.5%、△9.2%)、インキ(+27.1%、+6.0%)、CTP/PS版(+14.8%、△5.9%)など材料仕入額は売上高・受注件数ほどの落ち込みほどではない。労働時間(+3.3%、△11.7%)は5ヵ月連続の増加とはいえ19年比は10%以上の減少が続く。

 

【印刷会社経営者の声】

茨城:商業
茨城県が緊急事態宣言の対象地域に追加され、またしても案件の延期・中止や印刷物廃棄の話が増えてしまっています。

 

東京:商業
4回目の緊急事態宣言発出以降、また動きが悪くなってきた。オリンピック関連の変則休日により稼働日が減ったことも悪影響。

 

東京:事務
横浜市長選に注目していました。山中氏が当選し、日本の政治・官僚・大企業の無謬性の原則に少しでも風穴が開くとよい。IRだけでなく10年後・20年後のグランドデザインや行政サービスのモデルになることを期待します。選択が消去法以上の世の中にしていかねばとつくづく思います。

 

神奈川:商業
緊急事態宣言の拡大・延長で首都圏や都市部だけでなく地方にも多大な影響が出始めた。飲食関係のみならず、あらゆる産業に打撃となっている。秋口から年末にかけ、受注環境の悪化による業界内の廃業や倒産の急増が心配される。

 

長野:出版
7月の売上高はコロナ以前の例年水準を上回った。でも受注件数は下回ったので手放しには喜べない。コロナ禍以降、ずーっとモヤモヤしている。

 

岐阜:その他
オリンピック開催とコロナ感染拡大は関係ないかもしれないが、日本政府の感染防止対策のあまりの甘さに失望。

 

岐阜:その他
オリンピックによる印刷特需はあったのか、あったとすればどのくらいなのか。afterコロナと合わせてafterオリンピックも懸念されるところだ。

 

岐阜:総合
7月の売上高は前年より大幅増だったものの、一昨年にはほど遠い。ニューノーマル時代の印刷需要はどれくらいで推移していくのか。減少していくスピードに自社の事業再構築のスピードがついていけるかどうか。覚悟して注視しなければ。

 

愛知:出版
顧客情報の質と量、そして営業生産性向上に向けてSFAを導入し、さらに売り方の変革を進める。

 

愛知:出版
いよいよ「デジタル庁」が動き出します。個人情報をはじめとした様々な情報管理は大丈夫なのか? 紙媒体はどうなっていくのか?不安は尽きません。

 

大阪:商業
コロナ関係のパンフレット受注は多少の売り上げにはなるが、通常の仕事はご多分に漏れず低調。大胆な目標は作るが結果はスカスカ。体質の問題と考え、人材の採用と教育に力を入れる。また改めて社内の効率を見直していく。

 

和歌山:商業
印刷総合通販トップ3社の業績が堅調だという。もしその理由が、中小印刷会社が休業支援金を得るためだとすれば悲しい気持ちになる。

 

山口:事務
東京オリンピックは日本勢の金メダルラッシュで少しばかり盛り上がりましたが、終了と同時にコロナ、コロナの日々に逆戻り。いつになったらアフターコロナが見えてくるのでしょうか。早くマスクとおさらばして、年末には忘年会を皆でしたいものです。無理ですかね。

 

山口:事務
4~6月は昨年より回復したが、7月以降の受注が昨年以上に厳しくなっている。

 

沖縄:商業
各部署のデジタル化は出来るものから進めていきたい。しかし各個人のITリテラシーが異なるため、理解してもらうことが難しいことも多々ある。早くコロナが落ち着き、観光とその関連業界が回復することを願わずにいられない。

 

(『JAGAT info』 2021年9月号,印刷経営ウォッチング,p56-57より抜粋して要約)