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出版・広告・小売業界と印刷産業~2025年

紙の出版物と印刷メディア広告はマイナスが続くが、通販市場は26年連続増で、コンビニは過去最高を更新、スーパー・百貨店は横ばいとなった。(数字で読み解く印刷産業2026その3)

紙の出版市場は1兆円割れ、印刷メディア広告費は4年連続マイナス

印刷産業の得意先産業の市場動向を見てみると、2025年の紙の出版物(書籍・雑誌)は9647億円(前年比4.1%減)となり、1975年以来50年ぶりに1兆円を割り込みました。電子出版は伸び率は鈍化したものの5815億円(同2.7%増)で、紙と電子を合わせた出版市場規模は1兆5462億円(同1.6%減)となりました(全国出版協会・出版科学研究所推定)。

2025年の印刷メディア広告費は1兆1929億円(前年比6.0%減)で4年連続のマイナスとなりました(電通「2025年日本の広告費」)。内訳は、フリーペーパー1056億円(同19.1%減)が6年連続のマイナス、新聞3136億円(同8.2%減)とDM(ダイレクト・メール)2708億円(同5.4%減)が4年連続のマイナス、折込2354億円(同3.6%減)が3年連続のマイナスとなり、雑誌1135億円(同3.7%減)は2年連続の増加からマイナスに転じ、POPだけが1540億円(同3.8%増)で2年連続の増加となりました。

26年連続増の通販、横ばいのスーパー、コンビニは過去最高を更新

印刷産業全体の市場規模を見るには、「経済構造実態調査 製造業事業所調査」が利用されていて、2024年調査(2023年実績)が最新データです。2024年実績は2026年7月29日に公表予定です。

2023年の印刷産業出荷額は5兆934億円、コロナ禍を脱して3年連続の増加で、2年連続の5兆円台となりました。

2025年の小売業界については、大手小売業の販売概況を見てみましょう。

最も売上規模の大きいスーパーの全店売上高は12兆8675億円(前年比1.3%減)、2年連続で前年を下回りました(日本チェーンストア協会)。全体の7割を占める食料品は、節約志向による購買点数の減少を店頭価格の上昇が補いました。

コンビニの全店売上高は12兆583億円(前年比2.2%増)で、5年連続で前年を上回り、過去最高を更新しました(日本フランチャイズチェーン協会)。高付加価値商品や販促施策により平均客単価が伸び、過去最多の訪日外国人や大阪・関西万博の開催も寄与したと考えられます。

全国百貨店売上高は5兆6755億円(前年比1.7%減)で5年ぶりに減少しました(日本百貨店協会)。免税売上高が12.7%減の5667億円と大きく落ち込んだことによるものです。インバウンド(訪日購買客数)は621万人超で過去最高を更新したものの、高額消費の一巡で客単価が伸び悩んだからです。

印刷産業出荷額と百貨店売上高は規模が近く、印刷産業が2011年に6兆円を割り込んだのに対して、百貨店はインバウンド需要の拡大もあって2019年まで堅調でした。しかし、百貨店業界はコロナ禍の影響を強く受けた業界の一つで、2020年には前年比26.7%の大幅減で5兆円割れとなり、印刷産業出荷額を初めて下回りました。

また、2024年度(2024年4月~2025年3月)の通信販売(EC含む)市場の売上高は、前年度比7.3%増の14兆5500億円となり、金額ベースでは9900億円の増加となりました(日本通信販売協会)。伸び率は前年度を0.6ポイント上回り、直近10年の平均成長率は9.1%で、26年連続のプラスを達成しています。業界全体の動向としては、AI活用による業務効率化や、M&Aを通じた事業多角化の動きが目立っています。

JAGAT刊『印刷白書』では、印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT研究・教育部 吉村マチ子)

関連情報
【4/21開催】AI時代の印刷メディア分析 2026
-広告・通販・印刷メディアの最新データをもとに-

2024年の印刷産業売上高は7兆6213億円(「2025年経済構造実態調査」一次集計)

「2025年経済構造実態調査(産業横断調査)」によれば、印刷産業は1万4117企業、売上高は7兆6213億円となった。(数字で読み解く印刷産業2026その2)

「2025年経済構造実態調査」の速報値公表

総務省・経済産業省は、「2025年経済構造実態調査(産業横断調査)」の一次集計結果(企業等に関する集計)を3月27日に公表しました。

2024年の売上高(全産業計)は1968兆2776億円で、産業大分類別に見ると、「卸売業、小売業」が542兆3153億円(全産業の27.6%)と最も多く、次いで「製造業」が475兆5531億円(同24.2%)、「金融業、保険業」が162兆7186億円(同8.3%)などとなっています。

産業大分類別売上高の内訳を産業中分類別にみると、「卸売業、小売業」では「機械器具卸売業」が99兆9085億円と最も多く、「製造業」では「輸送用機械器具製造業」が96兆6277億円、「金融業、保険業」では「保険業(保険媒介代理業、保険サービス業を含む)」が86兆8091億円と最も多くなっています。

「印刷・同関連業」を見ると、売上高は7兆6213億円(前年比8.9%増)、2025年6月1日現在の企業数は1万4117企業(同15.3%減)となっています。売上高の内訳を産業小分類別にみると、「印刷業」6兆9875億円(同9.8%増)、「製版業」4337億円(同2.1%減)、「製本業、印刷物加工業」1884億円(同4.6%増)、「印刷関連サービス業」118億円(同2.5%増)で、「製版業」のみが減少しています。

一次集計(産業横断調査)は法人企業を集計対象とした速報値で、確報値は2026年7月29日公表予定の二次集計(産業横断調査)になります。また、2022年調査から「経済構造実態調査」の一部として実施されている「製造業事業所調査」も同日に公表予定です。

『印刷白書2025』では印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。 また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

2020年基準の「延長産業連関表」で印刷産業の調達先と販売先の変化を見る

印刷物の生産にどれだけのモノ、サービスが投入されているか。印刷物はどの産業にどのくらい購入されているか。「延長産業連関表」で2020年と2021年の変化を見てみよう。(数字で読み解く印刷産業2026その1)

5年に1回公表の「産業連関表」と毎年公表の「延長産業連関表」

「産業連関表」は国内で1年間に行われたすべての産業の取引を一つの表にまとめたもので、各産業間のモノやサービスの取引状況を金額で把握できます。総務省をはじめとする10府省庁の共同事業により5年ごとに作成される加工統計で、精度に優れ各種資料のベンチマークとなっています。ただし、公表時期は対象年次から4年後となり、「2020年産業連関表(基本表)」(2024年6月公表)が最新のものです。

経済産業省は、この政府全体で作成する基本表の作成にも携わっていますが、それとは別に5年間隔の中間年を補間するために、毎年この基本表から各年の産業連関表を延長推計しています。

JAGAT『印刷白書2025』では、「2021年延長産業連関表」の公表が例年より遅れたことから、「2020年産業連関表(基本表)」と「平成23-27-令和2年接続産業連関表」を使って、印刷産業とその取引先産業やクライアント産業の動きを見ています。

例えば、「印刷・製版・製本」を列方向(タテ)に見ると、印刷産業がどの産業から1年間にどれだけの金額の生産物やサービスを購入しているか、行方向(ヨコ)に見ると、印刷産業の商品・サービスの販売先がわかります。

延長産業連関表で2020年から2021年の変化を見る

『印刷白書2025』の第2章関連資料「印刷産業(8)調達先と販売先」では、産業連関表の統合中分類「印刷・製版・製本」の行列を金額の大きい順に並び替えて、取引額の上位10産業を掲載しています。

「平成23-27-令和2年接続産業連関表」により、2011年から2020年にかけての変化を比較していますが、最新の「2021年延長産業連関表(2020年基準)」が2025年12月19日に公表されたので、以下では2020年と2021年の変化を見てみましょう。

「原材料等の調達先上位10産業」を実質値で見ると、材料費、商業(卸売マージン額など)、同業者間取引が上位を占めています。取引額は7産業で増加し、化学最終製品(印刷インキなど)は減少が大きいが、全産業では3.3%増となりました。

「販売先上位10産業」から印刷産業の得意先を見ると、映像・音声・文字情報制作(出版、新聞など)、金融・保険、研究、商業の4産業の構成比は10%を超えています。取引額は広告以外の9産業で増加し、全産業では5.9%増となりました。

『印刷白書』では、産業連関表を使って、印刷産業の取引の流れを細かく見ています。限られた誌面で伝えきれないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

生成AI活用のリスク管理と価値創造を両立させる「ガイドライン」

印刷会社は情報漏洩・著作権・品質の3大リスクを理解し、入稿データを正しく扱い、安全な環境下で生成AIを活用することで、営業効率化と付加価値創造につなげることができる。

中小企業の半数が生成AIの活用方針を定めていない

総務省の2024年度調査によると、日本企業における生成AIの利用状況は、「積極的に活用する方針」と「活用する領域を限定して利用する方針」が49.7%(大企業55.7%、中小企業34.3%)となった。ただし、中小企業では「方針を明確に定めていない」47.6%が最も多い。また、生成AIの活用が想定される業務に関しては、55.2%が「業務で使用中」である。

JAGAT会員企業を対象とした「印刷産業経営動向調査」の2024年度調査では、18項目の新技術・サービスの導入状況・満足度などを調査した。生成AIの導入率は、テキスト系が33.7%で8位(前年22.1%)、画像系が32.7%で9位(同24.2%)と導入は進んでいるが、満足度は画像系が14位、テキスト系は15位と低い。

生成AI導入の懸念事項としては、総務省調査では「効果的な活用方法がわからない」が最も多く、次いで「社内情報の漏洩などのセキュリティリスク」「ランニングコスト」「初期コスト」が挙げられている。

生成AIのリスクを減らし活用するために必要なガイドライン

中小印刷会社にとって、生成AI導入の懸念事項としては、①情報漏洩リスク、②著作権・知財リスク、③品質・信頼性リスクの3点が大きな不安要素となる。顧客の情報を預かる印刷会社にとって、これらのリスクに対応することは、以前から当然のこととして行われてきた。ただし、生成AIによって新たな脅威が生まれてきていることに留意する必要がある。

例えば、無料版や個人アカウントのAIサービスに入力したデータは、AIの学習データとして再利用され、競合他社への回答として流出する可能性がある。インターネット上の画像を無断で学習しているツールは、生成物が既存の著作権を侵害する可能性がある。また、事実とは異なる情報をさも真実であるかのように生成する「ハルシネーション」にも注意する必要がある。

page2026セミナー「リスクを価値に変えるAI戦略」では、情報漏洩・著作権・品質の3大リスクを正しく理解し、入稿データの正しい扱い方を学び、安全な環境下で生成AIを活用することで価値創造につなげる具体策を提案する。「データの安全管理代行」を構築するための第一歩として、自社用の「生成AI利用ガイドライン」の策定を勧めている。

セミナー参加者特典として、印刷会社の業務特性に合った「生成AI利用ガイドライン」のひな形をWordデータで提供する。利用可能な生成AIの範囲、入力データに関する禁止事項、生成物の取扱いなどを明確にすることで、実務で使える明文化ルールを構築できる。自社の生成AI利用ルールを整備したい経営者・担当者に役立つものとなるだろう。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

★page2026オンラインカンファレンス・セミナー
2月12日(木) 14:30~16:00
【S14】リスクを価値に変えるAI戦略 ~3年後に企業を救う「印刷データの真正性」

★参加者特典
自社の「生成AI利用ガイドライン」策定に向けた参考資料として、ガイドライン(案)をWordデータで提供します。

サプライチェーンを含めたセキュリティ強化が重要課題

サプライチェーン上の弱点を狙ったサイバー攻撃が頻発していることから、経済産業省は「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」を2026年度末に開始する。評価結果は新規取引先の選定や既存取引の見直しなどの判断材料となり、企業は自社の対策状況を把握し改善につなげられる。

ランサムウェア攻撃が大きな被害をもたらした2025年

2025年は、アサヒグループホールディングスやアスクルのような大手有名企業がランサムウェア(身代金ウイルス)攻撃の被害に遭い、事業停止が長期化する事態となった。ビールが店頭から消えて、事務用品や生活雑貨のネット注文ができなくなって、改めてセキュリティ対策の重要性を感じさせられたのではないか。

警察庁によると、2025年上半期におけるランサムウェアの被害報告件数は116件に上り、被害企業は大企業35件、中小企業77件、業種では製造業が52件と最も多い。

生産や出荷など幅広い業務でデジタル化が進んでいる中で、サプライチェーン全体でのセキュリティ強化が、業種を問わず最重要の経営課題となってきている。

ランサムウェアの被害企業・団体等の規模別/業種別内訳(2025年上半期)

出典:警視庁ウェブサイト
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/cyber/joho/ransomware_threat.html

2026年度末スタートの経済産業省「セキュリティ対策評価制度」

経済産業省「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」は、セキュリティ対策を可視化する仕組みで、サプライチェーン全体でのセキュリティ対策水準の向上を目的とする。具体的には、2社間の取引契約等において、発注元企業が、委託先企業側に適切な段階(★)を提示し、示された対策を促すとともに実施状況を確認することを想定している。

★3は一般的なサイバー攻撃に対して最低限実装すべき対策レベル、★4は内外に大きな影響をもたらす攻撃に対して標準的に目指すべき対策レベルで、どちらも2026年度末の制度開始を目指している。★5は未知の攻撃も含めた高度なサイバー攻撃に対して到達点として目指すべき対策として、2026年度以降、対策基準や評価スキームの具体化の検討を進めていく。★1・★2はIPA「SECURITY ACTION」による情報セキュリティ対策の自己宣言になる。

段階別評価の概要

出典:経済産業省ウェブサイト
https://www.meti.go.jp/press/2025/12/20251226001/20251226001.html

複数の取引先からさまざまな対策を要求されている委託先企業にとっては、「セキュリティ対策評価制度」によって、限られたリソースの中で自社に本当に必要なセキュリティ対策を決定できるようになることが期待される。

page2026セミナー「2026年の“セキュリティ格付け”が始まる前に」では、「セキュリティ対策評価制度」の要点を整理した上で、中小印刷会社がどのような準備を進めるべきかを解説する。限られたリソースでも現実的に回せる進め方とは何か。顧客の信頼を勝ち取るためにも早めの準備を進めてほしい。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

★page2026オンラインカンファレンス・セミナー
2月5日(木) 16:30~18:00
【S3】2026年の“セキュリティ格付け”が始まる前に ~印刷会社がいまやるべき対策

「東京都産業連関表」で東京都経済の実態を把握する

「令和2年(2020年)東京都産業連関表」によれば、東京都の印刷産業生産額は6293億円、全国の印刷産業生産額に占める割合は15.4%。(数字で読み解く印刷産業2025その10)

全国産業連関表と東京都産業連関表

JAGAT『印刷白書2025』では、日本全国を対象とした全国産業連関表の最新版「令和2年(2020年)産業連関表」を使って、印刷産業の取引を見ています。

国内全体の経済構造を表す「全国産業連関表」に対して、都道府県や一部の市が作成している産業連関表は、その地域内の財・サービスの取引を明示し、地域経済の構造を可視化するものです。

「東京都産業連関表」は、こうした都道府県産業連関表の持つ特徴に加えて、東京都の経済の実態をより的確に表すため、①地域間表の作成、②本社部門の設定、③移動消費部門の設定が行われています。東京都の経済は、他道府県との相互依存、本社機能の集積、通勤・通学・観光など都外からの昼間流入という影響が大きいからです。

東京都の生産額は全国の約5分の1

「令和2年(2020年)東京都産業連関表」が11月27日に公表されました。都内の産業が1年間に行ったモノやサービスの取引を示した統計表で、5年ごとに作成されています。

東京都における2020年の財・サービスおよび本社の生産額は209兆8080億円で、全国の生産額(1097兆5247億円)に占める都の割合は19.1%を占めています。

東京都の印刷産業(印刷・製版・製本)生産額は6293億円で、全国の印刷産業生産額(4兆875億円)に占める都の割合は15.4%です。

なお、東京都産業連関表の全国の生産額(1097兆5247億円)は、全国産業連関表の生産額(1026兆1540億円)および東京都産業連関表(地域間表)の本社部門の生産額(71兆3707億円)の合計を指すものです。

東京都の生産額とその構成比を見ると、サービス(対事業所サービス、医療・福祉、教育・研究など)56兆4730億円(26.9%)、情報通信34兆1912億円(16.3%)、本社32兆4273億円(15.5%)、不動産21兆9094億円(10.4%)、商業21兆8531億円(10.4%)となり、これら5部門で都内生産額の79.5%を占めます。印刷産業(印刷・製版・製本)は6293億円(0.3%)です。

東京都に集積している産業は、産業別特化係数(=東京都の産業別構成比÷全国の産業別構成比)が高い産業で、1を超えればその産業のウェイトが全国水準を上回ることになります。特化係数が高い部門は、情報通信2.75、本社2.38、金融・保険1.60、不動産1.27、商業1.23となっています。逆に低い部門は、農林漁業0.02、鉱業0.02、製造業0.14、電気・ガス・水道0.37、建設0.64となっています。印刷産業(印刷・製版・製本)は0.81となりました。

東京都と他道府県との取引を見ると、東京都は本社、情報通信、サービス、商業などで他道府県へサービスを提供(移出)し、他道府県の経済を下支えしています。一方、東京都は製造業で他道府県から多くの製品を購入(移入)し、他道府県の産業の顧客や消費者となっています。

東京都の移出計73兆5539億円に対し、移入計は33兆1871億円と、差し引き40兆3668億円の移出超過となっています。この移出超過のうちの50.0%(20兆1805億円)は本社部門の移出超過です。印刷産業(印刷・製版・製本)の移出は2590億円、移入は9644億円で、7054億円の移入超過となっています。

『印刷白書2025』(2025年10月31日発刊)の第2章 印刷産業の動向「産業連関表」では、「令和2年(2020年)産業連関表」(2025年7月再推計)と「平成23-27-令和2年接続産業連関表」を使って、印刷産業と取引先やクライアント産業の動きを見ています。

また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

デジタル化で変化するニュースの読まれ方~2025年

SNSによる「無意識のニュース接触」によって、ニュースと消費者の関係は変化していくのか。(数字で読み解く印刷産業2025その9)

「ソーシャルメディアや動画ネットワーク」への加速度的なシフト

ロイタージャーナリズム研究所は、2012年以来、デジタル化がメディア環境やニュースの利用にもたらす影響を世界各地で調査しています。「ロイター・デジタルニュースリポート2025」では、2025年1月中旬から2月末に、日本を含む48の国と地域で実施された調査結果から、定点調査している「ニュースへの信頼」などのほか、AIの利用拡大がニュースの利用に与える影響など幅広いテーマを紹介しています。

エビデンスに基づく分析的なジャーナリズムが求められる世界情勢にもかかわらず、テレビ、新聞、ニュースサイトなどの「組織的ジャーナリズム」の影響力はむしろ低下しています。その一方で、ソーシャルメディアや動画プラットフォーム、(複数の情報源のニュースを集めて提供する)アグリゲーターへの依存度は増しています。

アメリカでは「ソーシャルメディアや動画ネットワーク」を主なニュース源とする割合(54%)が急増し、テレビ(50%)やニュースサイトまたはアプリ(48%)を初めて上回りました。
48の国と地域で「ソーシャルメディアや動画ネットワーク」を利用する割合は、18~24歳の44%、25~34歳の38%に上ります。
一方、日本では依然としてテレビ(2015年73%→2025年50%)が最も多くの人に利用されており、SNS経由のニュース接触は緩やかな上昇(2015年21%→2025年24%)にとどまります。ただし、SNSによる「無意識のニュース接触」によって、信頼や課金意欲につながらないという構造的問題もあります。

ニュースへの信頼度は安定しているか

毎年調査している「ニュースへの信頼」は、10年前と比べると明らかに低下していますが、全体平均はこの3年間、40%程度で安定しています。フィンランドが67%と最も高く、ギリシャとハンガリーが22%で最も低くなりました。

日本は2024年は15位、43%で平均をわずかに上回っていましたが、2025年は23位、39%となりました。「ソーシャルメディアの影響力の高まりと、伝統的メディアのスキャンダルによって、若年層を中心に信頼の低下がうかがえる」と分析されています。

オンラインニュースの何が本物で何が偽物かという不安は、回答者の半数以上(58%)で去年と同水準ですが、2022年と比べると4ポイント上昇しました。

また、ジャーナリズムにおけるAIの使用法では、十分な監督なしにAIで作成されたコンテンツについて不安という回答が大部分を占めました。これに対して、文字起こしや翻訳などのジャーナリストの仕事を補助する目的での使用は容認されています。

『印刷白書2025』(2025年10月末発刊)では、 「デジタル時代に進化する新聞~信頼を強みに新たな役割へ」において、新聞の存在意義やジャーナリズムについて考察しています。

限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)

『印刷白書2025』発刊のご挨拶

2025年10月31日発刊の『印刷白書2025』について、会長網野勝彦よりご挨拶させていただきます。

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2025年を振り返り、そして2026年を見据える今、私たちは事業構造を根底から見直すことを迫る2つの「非連続的な変化」に直面しています。
1つ目は、「AIとデータによる生産性の革新」です。この1年間で、情報伝達手段のデジタルシフトは不可逆的に加速し、特に生成AIの劇的な進化は、クリエーティブ領域だけでなく、生産性やワークフローのあり方そのものを変えようとしています。人手不足が深刻化する中で、このAIという革新的なツールをいかに事業基盤に組み込み、人間の創造性や戦略立案能力を最大限に引き出すかが、競争優位を確立する絶対的な条件となります。
2つ目は、「グリーン・トランスフォーメーション(GX)の経営課題化」です。環境問題への対応は、企業の社会的責任を超え、事業継続そのものに直結する要素となりました。カーボンフットプリントの算定や環境配慮型素材の採用といったGXへの取り組みは、もはやコストではなく投資と捉え、顧客や社会への新しい付加価値として提供し、未来の成長エンジンへとする必要があります。

このような変革期だからこそ、私たちは印刷産業がもつ核となる力を再認識しなければなりません。私たちは、単なる「紙への印刷」を行う製造業という狭い定義にとどまらず、「多様な素材と技術を通じて、情報を最も効果的に、そして情緒豊かに人々の心に届ける情報価値創造業」であると自信をもって宣言すべきです。デジタル情報があふれる社会において、その情報に「信頼性」「手触り」「体験」という確かな付加価値を与え、「人」と「情報」を深くつなぐチカラは、一層その重要性を増しています。

今年の『印刷白書』は、「AIによる生産性の革新」と「GXの経営課題化」を強く意識しながら、印刷業界の喫緊の課題と未来への方向性を幅広く分析しています。皆様にとって本書が、力強い成長と経営の持続可能性の確立の指針となりますよう切に願います。

変化を恐れることなく大胆に挑戦する企業が、次の時代を牽引していくことは間違いありません。

JAGATは今後も、技術革新、AI時代に対応した人材育成、そして業界全体の連携強化を通じて、皆様の発展をしっかりとサポートしていく所存です。皆様の力強いご活躍を心よりお祈り申し上げるとともに、巻頭のご挨拶とさせていただきます。

2025年10月
公益社団法人日本印刷技術協会
会長 網野勝彦

書籍発刊のお知らせ

『印刷白書2025』2025年10月31日発刊

印刷白書2025

印刷白書2025

印刷産業の現在とこれからを知るために必携の白書『印刷白書2025』
第1章 Keynote Re : Connect
第2章 印刷産業の動向
第3章 印刷トレンド
第4章 関連産業の動向
第5章 印刷産業の経営課題

 

発行日:2025年10月31日
ページ数:112ページ
判型:A4判オールカラー
発行:公益社団法人日本印刷技術協会
定価:15,400円(14,000円+税)
JAGAT会員特別定価:9,900円(9,000円+税)

解説

印刷産業のこれからを知るために必携の白書『印刷白書2025』

あらゆる産業を顧客とする印刷産業は、さまざまな産業と密接に関わりを持っています。「印刷白書」では、印刷産業の現状分析から印刷ビジネスの今後まで幅広く取り上げています。

印刷・同関連業界だけでなく広く産業界全体に役立つ年鑑とするために、社会、技術、産業全体、周辺産業というさまざまな観点から、ビジョンを描き込み、今後の印刷メディア産業の方向性を探りました。

印刷業界で唯一の白書として1993年以来毎年発行してきましたが、2025年版では組織変革などの項目を追加しました。

印刷関連ならびに情報・メディア産業の経営者、経営企画・戦略、新規事業、営業・マーケティングの方、調査、研究に携わる方、産業・企業支援に携わる方、大学図書館・研究室・公共図書館などの蔵書として、幅広い用途にご利用いただけます。

「第1章 Keynote」では印刷会社の「Re : Connect」をテーマに、商業印刷の価値を再定義しています。「第2章 印刷産業の動向」では印刷産業の現状と課題を俯瞰的に捉え、「第3章 印刷トレンド」では技術課題を整理しました。「第4章 関連産業の動向」ではクライアント産業の動向を探りました。「第5章 印刷産業の経営課題」ではサステナビリティから人材まで印刷産業が取り組むべき課題を整理しました。
印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、UD書体を使った見やすくわかりやすい図版を多数掲載し、他誌には見られないオリジナルの図版も充実させました。

CONTENTS

第1章 Keynote Re : Connect
商業印刷の価値は再定義できるか 未来に向けて「Re : Connect」するために

第2章 印刷産業の動向
[産業構造]印刷がつなぐ社会~広がり続ける印刷の可能性
[産業連関表]多様な産業の需要に応える印刷製品と関連サービス
[市場動向]自律成長に向けた拡印刷による多角化 課題解決型とサービス型へのシフト
[上場企業]サステナビリティとDXで未来を切り拓く上場印刷企業
*関連資料 産業構造/産業分類・商品分類/規模(1)/規模(2)/規模(3)/産出事業所数(上位品目)/産出事業所数・出荷額/調達先と販売先/産業全体への影響力と感応度/最終需要と生産誘発/印刷物の輸出入額と差引額/印刷製品別輸出入額/印刷物の地域別輸出入額/印刷物の輸出入相手国/経営動向/上場企業/生産金額(製品別)/生産金額(印刷方式別)/売上高前期比・景況DI/設備投資・研究開発/生産能力/紙・プラスチック/印刷インキ/M&A

第3章 印刷トレンド
[デザイン]デザインの力で印刷の価値を高める
[ワークフロー]印刷業界の新たなエコシステム構築に向けて
[デジタル印刷]加速するデジタル印刷シフトと未来展望
[後加工]製本業界の課題と技術革新 構造改革で目指す持続的成長
*関連資料 設備投資の動向/フォーム印刷業界

第4章 関連産業の動向
[出版業界]大手出版も取次もデジタル印刷に本腰 返品率改善の切り札として期待のDSR
[新聞業界]デジタル時代に進化する新聞~信頼を強みに新たな役割へ
[広告業界]広告費は過去最高の7.7兆円、インターネット広告は3.7兆円に
[地域メディア]地域メディアを起点にした課題解決と価値創出
[通信販売業界]通販・EC市場売上高初の14兆円台に突入 伸び率もやや前年上回る
*関連資料 出版市場/新聞市場/広告市場/通販市場 

第5章 印刷産業の経営課題
[サステナビリティ]サプライチェーンで求められる環境対応
[地域活性化]高まる民間企業の地域活性化参画への期待 共助領域の課題解決をビジネスの手法で
[経営管理]活学で部下と「コミュニケーション上手」になるには?
[デジタルマーケティング]SNSは「対話」と「体験」を重視するマーケティングツールへ
[AI活用]2030年に向けた印刷業界のAI活用戦略
[組織変革]拡印刷を成功させる組織変革の進め方 変革理論を指針としたプロセスづくりの要諦
[労務管理]変化する中小企業施策と経営力による成長戦略の道
[人材]印刷産業の持続可能性を人材から考える 中核人材育成の論点
*関連資料 AI活用/人材

●巻末資料
DTP・デジタル年表/年表

 

上場印刷企業の女性管理職比率は平均10.3%

2024年度の上場印刷企業36社のうち、女性管理職比率を開示している27社の平均は10.3%。厚生労働省「雇用均等基本調査」によれば、女性管理職比率は13.1%と微増で、製造業は7.6%と低い水準となっている。(数字で読み解く印刷産業2025その8)

上場印刷企業の2024年度業績は堅調

JAGAT『印刷白書』では、社名もしくは特色などに「印刷」とある企業を、上場印刷企業としています。各社の業績は決算短信と有価証券報告書で見ていますが、提出時期の関係で2024年6月期決算から2025年5月期決算までを2024年度としています。

上場印刷企業の社数は、親会社による完全子会社化による上場廃止がある一方、新規上場もあって、33~34社で推移してきました。『印刷白書2025』では、2024年12月25日上場のMICを加えた36社の企業力などを見ています。

上場印刷企業の2024年度業績を見ると、36社の売上高合計は4.2兆円(前期比3.4%増)で、増収24社、増益17社と堅調です。

上場印刷企業27社の管理職に占める女性の割合は10.3%

2023年3月期決算以降の有価証券報告書から、人的資本の情報開示が義務化され、管理職に占める女性労働者の割合(女性管理職比率)が開示項目の選択肢の一つとなりました。上場印刷企業36社のうち、女性管理職比率を開示している27社の平均は10.3%(前期は9.8%)です。

女性管理職比率24.7%のラスクルは、一定グレード(等級)以上の女性従業員の割合を2025年7月末までに20%以上にすることを目指しています(2024年7月末時点18.2%)。

次いで24.0%のクレステックは、中途採用者や女性が活躍できる社内環境の整備に取り組んでいて、2025年6月末時点の女性管理職比率は26.0%となっています。

23.7%のMICは、人的資本に関する目標として、女性正社員比率50%(2024年度実績43%)、男性正社員の育児休業取得率50%(同40%)を掲げています。

日本の女性管理職比率は13.1%、諸外国は30%以上

厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」によれば、女性管理職比率は13.1%で、前年(12.7%)より0.4ポイント上昇しました。産業別にみると、「医療、福祉」50.4%が突出して高く、「生活関連サービス業、娯楽業」26.0%、「宿泊業、飲食サービス業」21.0%、「教育、学習支援業」21.0%と続いています。「製造業」は7.6%で、前年(8.5%)より0.9ポイント下降しました。

また、労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2025」によると、女性管理職比率はアメリカ42.6%、シンガポール39.6%、フランス38.9%、ドイツ28.7%など、諸外国がおおむね30%以上となっているのに対して、日本は大幅に低くなっています。

『印刷白書2025』(2025年10月末発刊予定)の上場印刷企業36社の分析では、事業展開の特色と売上高構成比、個別業績による規模・収益性・生産性・安全性・成長性、連結業績による設備投資総額・研究開発費、キャッシュフローバランスなどを比較しています。

限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)