最近の私は「とにかく若い人を育てなくてはいけない」と強く願っている。「どういうふうに若い人を育てたら良いのか?」ばかり考えているのだ。
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「協会情報」カテゴリーアーカイブ
オンライン工場見学、印刷工場のファンづくり
~顧客に価値を伝える工場のマネジメント~
工場の価値を伝える、ユーザー視点
印刷会社における工場見学は、有効なPRの手段だ。勿論、魅力ある工場を顧客に見せれば、大きなエビデンスとしてのPR効果が期待でき、見られる工場も5S活動が活発化し、社員のコミュニケーション力の向上も見込まれる。
コロナ禍においては、バーチャルやオンラインによる工場見学会も活発化している。日本経済新聞電子版のトラベルクローズアップ(2021/4/19)では、ものづくりの専門家が選んだ「オンラインで見学できる工場10選」を紹介している。
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO70985240U1A410C2W01001/
記事中の土屋鞄(かばん)製造所では、「匠の技、わかりやすく」をテーマに、コロナ禍で中止なっていた見学会を動画で開催している。「クイズ」「ランドセルの作り方」「職人の想い」の3つで構成され、各3~4分。リアルの工場見学では公開されていない革を裁断する場面も動画だと見られるようになっている。職人の想い編では、現場の社員が登場し、ランドセルづくりにおいての肝やエピソードを語っている。クオリティーも高く見ごたえのあるコンテンツになっている。サイトにアクセスされればブランド価値は高まりそうだ。
https://tsuchiya-randoseru.jp/pages/kengaku
映像で自社の強みを伝えるファンづくり
売れる印刷工場のマネジメントは、売れるための物語が重要になる。ここで言う物語とは、架空のものではなく製品を作る過程での拘りや想いを表現することだ。印刷工場では、品質を保証するしくみや設備と社員の創意工夫、想いを語ることなどが一例になる。それがファンづくりでは、視聴者へのエビデンスとなりブランディングに繋がっていく。魅せるものづくりでコミュニケーションを取ることが肝心だ。
工場における製造工程や製品の特長は、文章では感性には伝わりづらい。エビデンスとしては、現場を見て伝えることが必要な場面がある。リアルが不可能であれば映像やオンラインを活用するというも選択肢も浮かんでくる。コロナ禍では、映像や配信方法を駆使してオンライン配信する企業の増加が加速している。如何にアクセスさせるかも大きな課題となる。
<オンラインのメリット>
- 視聴する時間と場所を選ばない
- リアルでは不可能な工場現場も見学できる
- 申し込み制限、受け入れ人数限度がない
- 見たい場面、見たいペースで見学できる
「リアル以上に負担が大きい」という課題
一方、実際の工場見学とは違い、リモートでは参加者の反応や状況が把握しづらい。スタッフの数も、現場の映像、撮影担当に加え、スイッチング等のスタジオ担当を用意するなどの手間と時間がかかる。一見、オンラインの方が手軽のようにも思えるが、実際はその逆だ。リアルでの工場見学にはない労力や気苦労が発生することも想定しておく必要がある。デメリットもあるが様々なオンライン化の波は、コロナ終息後も変わらないであろう。リアルも有り、オンラインも有りとなるだろう。重要なことは、手段に振り回されず目的を忘れないことだ。マーケティング視点で伝えたいメッセージを映像表現やオンラインの特徴を生かして活用すればこれからますます可能性が広がる。ただし、みんながやり始めていることを忘れてはいけない。
(CS部 古谷芸文)
印刷業定点調査 各地の声(2021年4月度)
2月の売上高は△10.3%。12月から3カ月連続のマイナス10%前後で横ばい。 続きを読む
多方式のテキスタイルプリンティングを武器にデジタル展開を図るパイオニア
JAGAT info 2月号ではテキスタイル印刷でデジタル展開を進める堀江織物株式会社の事例を紹介した。 今回はその一部を抜粋して紹介する。
堀江織物の成り立ち
堀江織物は愛知県北西部の一宮市に位置している。染色業は水の豊かな土地に集積してきた歴史があり、一宮市にも木曽川・長良川・揖斐川の木曽三川が流れている。これら尾州エリアの河川は尾張工業用水として整備されており、かつては染色業専用の排水設備も作られるなど、地域の繊維業を支えていた。
堀江織物は元々撚糸業を営んでいたが、1950 年には合繊維物製造業に進出。しかし、アパレル関係の売り場に中国製品が進出してきたことで一度は廃業を経験することになった。
しかし、廃業の翌年、1975 年のぼり旗や紅白幕の印刷に参入。1988 年にいち早くオートスクリーン捺染機の4色機を導入し、機械化・効率化に力を入れていくことになった。捺染業の世界では、どのような技術が使われているのか。今後の課題や展開をどのように考えているのか。堀江織物株式会社の取締役マーケティング部部長であり、家業に入る前は広告代理店に勤め、伝統的な染物に留まらない発想を持つ堀江賢司氏にお話を伺った。
複数の印刷方式が生んだ機動力
紙と同じようにテキスタイルにおいても、印刷する対象や用途によって印刷方式を使い分けていく必要がある。では、堀江織物は、どのようにさまざまな印刷方式を使いこなしてきたのだろうか。のぼり旗製造業に参入した同社が最初に導入したのが、紙の印刷で言うところのオフセット印刷にあたるオートスクリーン捺染機であった。インクは主力製品がのぼりであるため、顔料インクを使用している。
現在の堀江織物では、オートスクリーン捺染機は6色機と8 色機が置かれている。機械のスケール感は、輪転機をイメージするとかなり近い。実際に機械を見るとイメージしやすいが、ロールに巻かれた布をセットし、巻き取りながら染色していく。印刷が終わった布はそのまま乾燥部へと移動していく。なお、堀江織物では特色を自社で作成している。グラデーションなどは苦手だが、コーポレートカラーの再現などは得意としており、発色の良さも手伝って現在も主力印刷システムとして活躍している。
堀江織物がインクジェットプリンターを初めて導入したのは2000 年である。当時の主要な取引先にはパチンコ関係が多かった。曜日ごとに催し物が変わり、それに合わせてのぼりも切り替えるため、多種類の注文が入ったという。2010 年にはインクジェット工場を増築。その2 年後には工場を移転し、設備増強を行った。現在ではダイレクト印刷機が10 台と、昇華転写印刷機が15 台稼働している。近年では、昇華転写印刷の品質を生かして、アニメや芸能人のグッズなども作成している。
ラテックスインクプリンターを導入したのは2014年と、比較的最近である。堀江織物ではシルクスクリーンやインクジェットプリントはポリエステルに絞っていたが、塩ビ系のターポリンのニーズもあり、当初は溶剤プリンターを導入していた。だが、ラテックスインクプリンターを導入したことで、塩ビ系以外のさまざまな素材への印刷が可能になった。アイデア次第で気の利いた商品を作れるのが利点である。
また、堀江織物では、比較的小型の機械を使い、DTG(Direct-To-Garment)も行っている。これは、無地のT シャツなどすでに縫製が済んでいるものに印刷を施すというものだ。今後、世界的にデザインの細分化や在庫レスなどの動きが進むことでデジタル印刷の割合は増えると考えられており、堀江織物でも投資を続けてきた分野である。そういった準備のかいもあり、コロナ禍においてはオンデマンドのオリジナルT シャツプリントが一気に伸びた。インクジェット印刷でも、急きょ製作した布マスクが大きな売り上げを生んだそうだ。自由に印刷方式を選べることが、商品展開の機動力を生んでいる。堀江織物では昇華転写印刷やダイレクト印刷を含め、売り上げの約50%をデジタル印刷で作っている。同社はこの動きをさらに加速させ、T シャツをはじめとしたさまざまな製品をオンデマンドで製造する新工場を、本社前に建築中である。
印刷会社のテキスタイル導入
堀江氏いわく、最近、紙の印刷会社がテキスタイル印刷に興味を持ち、相談を持ち掛けてくることが増えているという。その際には、ラテックスやUV であれば可能ではないかと勧めるそうだ。求められる設備投資や技術が比較的少なく、印刷対象も自由度が利く分、ノベルティ的な小物やDTG にも適したラテックスやUV が、投資としては成功しやすいのではないかとのことだ。
ビジネスモデルとして考えられるのは、販促企画を一括して受注した際の+ αとしてテキスタイルを導入するというパターンである。テキスタイルの業者からすると、印刷会社の多くが校正刷りのやり取りや納品でラストワンマイルを握っている点はうらやましく見えるそうである。
もう一つ考えられるのが、テキスタイルの印刷会社とアライアンスを組むという方法である。発注時に紙の販促物と布の販促物を同時に頼めれば、顧客としても利便性が高い。実際、堀江織物では、直接間接をまとめると、印刷会社からの外注は売り上げの大きな割合を占めるそうだ。
印刷媒体を超えたウェブ連携へ
紙と布の印刷会社の境界線は、デジタル印刷によるスキルレス化やIT の連携により、これまでより薄くなっている。堀江織物も変化を体現している会社の一つである。
堀江氏は2013年に株式会社OpenFactoryを設立した。OpenFactoryは現在、製造工場1社だけではまかないにくい個別製造の発注プラットフォームを作るべく紙の印刷会社とも協力してデジタルプリントのプラットフォーム「Printio」というサービスを立ち上げている。これは、ユーザーと工場とを仲介する小ロット印刷のBtoB サービスである。ユーザーがウェブサイトやバックオフィスなどでPrintio に発注すると、内容に合わせてPrintio が適切な工場に注文を行い、必要な個数が生産、納品されるという仕組みを目指している。
Printio が構築しようとしているビジネスモデルについては、「page2021」のオンラインカンファレンスにて2 月22 日開催のセッション「デジタル印刷で切り開く新規ビジネス」で詳細に語られる予定だ。
テキスタイルの印刷では、紙とはまた違った技術が使われているが、適切な印刷方式を選ぶことが事業の幅を持たせ、会社を強くしていく点では同じである。堀江織物も積極的に新しい方式や技術に挑戦し、経営を前進させてきた。デジタル印刷機の活用にも先進的に取り組んでおり、デジタルの強みを生かす事業を構築するため、紙の印刷会社とも協力しながらオンデマンドのWeb to Printを強化しようとしている。
(研究調査部 松永 寛和)
5/18 基本から理解するカラーマネジメント
印刷製品、イメージで伝える鳥瞰図
正確さを極めた伊能図と鳥瞰図の違い
印刷メディアにおける情報は、正確さが求められる一方でイメージを伝えることも重要だ。毎年4月19日は、地図の日となっている。同日に放送されたTBSラジオ番組「檀れい、今日の1ページ」でも話題になっていた。地図の日は、寛政12(1800)年の旧暦4月19日、日本全土の実測地図を作製した江戸時代後期の測量家・伊能忠敬が蝦夷地(北海道)の測量に出発した日によるとされる。足かけ17年にも及び、完成した「大日本沿海輿地全図」(通称「伊能図」)は、その正確・緻密さが特徴であった。国防上の観点からも流出を恐れられ長らく秘蔵されていたほどだという。
一方、正確・緻密さとは性格が異なるのが鳥瞰図(ちょうかんず)だ。一般的には意外と知られていないようだが、鳥瞰図とは、高い視点位置からの透視図だ。例えれば、鳥が高いところから地上を見おろすように、人が高い視点から見おろしたように描いた図をいう。(出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)。鳥瞰図のポイントはイメージだ。見て楽しく、感情にも訴え、特徴を表したものが鳥瞰図になる。京都府ホームページで文化・スポーツ・教育「京都府立京都学・歴彩館 Kyoto Institute, Library and Archives」では、デジタル展覧会「京の鳥瞰図絵師 吉田初三郎」が公開されている。鳥瞰図は、大正時代から昭和時代のはじめ、鉄道網の発達に伴い空前の行楽ブームが到来すると、鳥の目で見下ろしたように描いた案内図として各地の宣伝と集客のために多数作成されていた。中でも有名なのが大正から昭和にかけて活躍した吉田初三郎が描いた鳥瞰図ということだ。大胆な構図や鮮やかな色彩で人気を博したとされている。

イメージによって伝える情報
鳥瞰図の肝は、印象的な場所や情景、ランドマークなどをデフォルメして高い技術で描写されているところにある。メッセージをイメージによって、情報を人の心や感情に訴えかけることによって効果的に伝えている。イメージとは、心に思い浮かべる像や情景。ある物事についていだく全体的な感じ。心像。形象。印象。また、心の中に思い描くこととある(デジタル大辞泉より引用)。大正時代から昭和初期の行楽ブームで広まった観光案内としての鳥瞰図の表現技法は、現在でも広く受け継がれている。コロナ禍でなければゴールデンウイークは旅行シーズンでもある。今年は、巣籠もりで大正ロマンを感じられる鳥瞰図を眺め、印刷製品のイメージ価値を感じるには良い機会かもしれない。
(CS部 古谷芸文)
印刷営業20日間集中ゼミ(2021/5/10~6/4)https://www.jagat.or.jp/archives/81764
オンライン印刷ビジネス開発実践講座 https://www.jagat.or.jp/archives/85259
【オンライン】情報の活かし方とアイデア発想法https://www.jagat.or.jp/archives/85395
【マスター郡司のキーワード解説2021】エコーチェンバー
今回は「エコーチェンバー」について考える。 続きを読む
オンラインイベントをビジネスに活用する鍵とは?
page2021オンラインの会期中に実施していた「来場者アンケート」には306件の回答をいただいた。これだけの回答数をいただいたことで、一つの方向性が見えてきた。
オンラインイベントのビジネス活用の鍵を握るのは?
「page2021オンラインの来場目的は?」の質問に対し、「製品・サービスの情報収集」の回答が最も多く、「本展で実際に利用した機能/必要な情報を得やすかった機能は?」に対して、最も多かった回答が「動画コンテンツ」であった。一方で、出展社ブースにはオンライン面談機能が付いていないこともあり、「出展社と具体的な商談がすすみましたか?」の問いにYesの回答をしたのは6%以下にとどまった。
オンライン展示会において、製品に直接触れることは出来ないことは明白であり、来場者もある程度それは認識している。pageイベントはスタート当初から一貫して機材展とは謳っておらず、製品購入の最終決定の場とするケースは多くない。つまり、オンラインイベントのビジネス活用においては動画コンテンツを充実させ、来場者を情報収集のフェーズから商談テーブルに乗せるフェーズに引き上げることが重要と考える。
リアル展示会とは異なる来場者の動き
出展社ページの総ページビューは207,325pvであったが、そのうち動画の視聴数が18,968pvであった。1社平均460回以上であり、リアル展示会であれば1日150人以上の来場者に動画を視聴してもらわなければいけない計算になる。オンライン展示会は初日最終日を除けば、24時間閲覧可能であり、オンラインならではの結果と言える。また視聴者は業務終了後の17時以降に増加する傾向にあり、このあたりもリアル展示会と異なる指標と言える。
リアル展示会では、ブースに何人来場者を集め、そこから何枚の名刺を集めるかが、出展の成否のカギであった。page2021オンラインの出展社ブースの名刺交換数と動画視聴数は概ね比例していたが、来場者にとって動画視聴のたびに属性情報の開示を求められることは満足度の低下につながる。したがって今後は来場者からアプローチをしてもらうコンテンツマーケティングの要素を加味することが必須になってくるであろう。
(CS部 堀雄亮)
印刷業定点調査 各地の声(2021年3月度)
1月の売上高は△8.8%。再度の緊急事態宣言が発出されてマイナス幅は12月(△9.5%)よりやや縮小した。5月に未曾有の落ち込みを記録して以降、回復傾向にはあるものの、この3カ月間は△8%前後で推移している。
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